自分の記憶がどんな風に作られているのか知っていますか?
あなたも普段の生活で記憶をコントロールされているかもしれませんね。
有名企業や、できる大人が使う行動経済学の心理現象。
使いこなせば、相手の記憶もコントロール出来る?
日常生活やビジネスでも使える話を紹介。
「ピーク・エンドの法則」は終わりよければすべてよし?
ピークエンドの法則とは?
ひとが過去の経験を思い出すときは、途中の一番盛り上がった瞬間(ピーク)と、終わり方がどんな感じだったか(エンド)で、過去の経験(記憶)を評価してしまう法則のこと。
ピーク・エンドの法則を見つけたのは、ノーベル経済学賞を受賞したことで有名な行動経済学者 ダニエル・カーネマン先生です。
(TED.comより)
1999年に発表した論文※で提唱したことで有名ですが、それまでに2回ほど検証のための実験が行われています。
※Kahneman, Daniel. (1999). Objective Happiness. In Kahneman, Daniel., Diener, Ed. and Schwarz, Norbert. (eds.). Well-Being: The Foundations of Hedonic Psychology. New York: Russel Sage. pp. 3-25. ISBN 978-0871544247.
1993年の研究
2つの方法で水に手を浸します。
- 14℃の水に60秒間
- 14℃の水に60秒間、さらに+30秒手を浸す(その30秒で水温が15℃上がる)
その後「どちらをもう一度繰り返しますか?」と被験者に尋ねると、8割超が2番目を選びました。
普通に考えると、冷たい水に手を浸していた時間は60秒間なので、2番目に偏るのはおかしいと言えます。
この結果に対して、ダニエル・カーネマンは「2番目の方が選ばれたのは、良い記憶として残っているから (時間は関係ない)」と考えました。
ポイント
つまり、経験した時間の長さよりも、良い記憶として残るかどうかが記憶(思い出)の評価につながる。
1996年の実験
有名な大腸の内視鏡検査の実験です。
検査中に60秒ごとにどれくらい痛みがあるかを患者から聞きます。
グループA
患者が痛がっている時に検査を終える。
グループB
グループAよりも検査が長いが痛みが小さかったときに検査を終える。また、ピーク時の痛みの強さはグループAとさほど変わらない。
検査について聞くとグループAの患者の方が「大変だった」と答えるのです。
ココがポイント
このような実験を何度も繰り返した結果、患者が検査の内容をどう評価するかは、「痛みのピーク」と「検査が終わる時の痛みの強さ」と関係していることが分かったのです。
スポンサーリンク
ビジネスに潜むピーク・エンドの法則
ピーク・エンドの法則が良く現れているのが、ディズニーランドです。
ディズニーランドと言えば、たくさんの人がいて、一つのアトラクションに乗るためには1時間や2時間待ちなんてことは良くあること。
それでも、みんなディズニーランドが好きで、何度も通っている人も大勢います。
それは何故か?
ココがポイント
先ほどまでの実験でも登場しましたが、人が記憶を思い出す時は”時間の長さ”よりも、ピークとエンド(終わり方)に影響されます。
1時間以上も並んでいると疲れてきますが、記憶を思い出すときに一番影響を受けるのが、最後にアトラクションに乗った5分~10程度の記憶なのです。
いくら並んでも、アトラクションの楽しさが抜群のディズニーランドは、いい思い出としてみんなの記憶として定着するわけです。
ちなみに、途中から行列の進み具合が速くなったりすることも良い評価に繋がるとも言われています。
他にも・・
お店のサービスに不満を持っていたけど、最後の方で店員さんが気を利かせてくれたって経験ありませんか?
この時もピークエンドの法則が働きます。
お客さんは「気を利かせてくれた」という印象が強く残るので常連となってくれたりする、みたいな話です。
ただし、その時の店員さんの対応が良ければですが・・。
さらに詳しく
ちなみにピークエンドの法則は、価格が低いものほど働きやすくなります。安い割にピークとエンドでいい経験が出来れば、その商品・サービスを高く評価する傾向が強まります。逆に高価格なものはピークエンドの法則の影響を受けづらいです。なんと、最初の経験が一番重要になるそう。そこで期待外れなことが起こると悪い評価に繋がります。
普段の生活でも登場するピークエンドの法則
1990年代のアニメや漫画で面白かったモノは?
この質問をするとその時代で一番面白かったりする作品が思い出されます。
ポイント
さらに、その作品が面白かった=その年代の作品はみんな面白かったみたいな評価に繋がることもあります。
なので昔は良かった論は結構間違っているかも。どの時代も同じくらい面白いものもつまらないものもあります。
そうなんです、昔の懐かしい記憶を思い出すときは強くピークエンドの法則に影響を受けます。
その時のピークで面白かったりするものが評価の基準になり、その時代の全てがそれと同じように面白いものばかりだったみたいな錯覚を覚えるのです。
スポンサーリンク
ピーク・エンドの法則への批判
ここまでピークエンドの法則について紹介してきましたが、何もすべてのことがらで同じことが言えるわけではありません。
先ほど紹介したように、高価格帯の商品やサービスでは、ピークエンドの法則は働きづらいです。
もともとの期待が高いため、商品やサービスの第一印象が期待を下回るか上回るかが重要になってしまいます。
こんな話も
休暇中に経験したことが、幸福感にどう影響を与えているのかを確認する実験です。
ニュージーランドのカンタベリー大学で行われた実験です。
ポイント
最初は、ピークエンドの法則などに近い結果になるかと思われたのですが、じっさいは「休暇中に珍しい体験した1日」みたいに、もうちょっと長いスパンで幸福感に影響を与えていることが分かりました。
時間が経つと・・
- 実は時間が経つとピーク時の記憶がそれほど思い出されなくなるとも言われています。
さきほどの懐かしい記憶の場合は例外的にピークエンドの法則が強く働く?と言えるかもしれません。
さらに終わりの方の記憶も薄れていくため、長いスパンで見るとピークエンドの法則が弱くなると言えます。
注意ポイント
ビジネスなどでも、お客さんに良い記憶を作ってもらってから、あまりに時間が空きすぎると忘れられてしまいます。
なので、一定の期間でリピートしてもらえるように工夫が必要だと言えますね。
さらにこんな事も
ポテトチップスを頻繁に食べていると、以前に食べたポテトチップスの味を思い出すのが難しくなるという話があります。
というのも、長期にわたる娯楽や快楽に繋がる体験は、直近のモノよりも最後の方が記憶に残ってしまうため、連続して同じような経験をしていると本当に最後の方しか記憶に残らなくなります。
ポテチを何度も差し出すようなサービスや作品を作るのではなく、メリハリが重要ってことです。
ビジネスや日常生活でも、ピークエンドの法則がどうとかよりも、メリハリが重要って事かもしれませんね!