バフェットの師匠として有名な「ベンジャミン・グレアム」
バリュー投資の父はどのような人物なのか
グレアムの経歴や投資哲学を解説!
ベンジャミン・グレアムの経歴
(ベンジャミン・グレアム Wikipediaより)
過去57年間を振り返れば、世界を揺るがすような時代の浮き沈みや悲惨な出来事にもかかわらず、堅実な投資原則に従えば、手堅い結果を得られるという事実は、常に変わることがなかった。
1894年 イギリス ロンドンに生まれる。
グレアムが1歳の頃にニューヨークへ移住しました。
若い時から優秀
9歳の頃に父親が亡くなってから生活が苦しくなるも奨学金を獲得、16歳でアメリカのコロンビア大学に入学、20歳で卒業しています。
元々は15歳で入学するはずでしたが、事務的なミスがあり16歳での入学になりました。
大学卒業時には、グレアムに対して大学の教職員のポジションが提案されました。
英語・哲学(ギリシャ語・ラテン語)・数学の3つのどれかで教鞭をとらないかという話でした。
もちろん
1914年、グレアムは大学では働かず、卒業後は金融業界の聖地ウォール街で働き始めます。
グレアムは、単純に勉強が出来るだけではありません。
金融市場・株式市場を分析して、一般的に言われている通説みたいなものに懐疑的でした。投資方法には優劣があって、堅実に投資をすれば大きな利益に繋がることを信じていました。
駆け出しの頃
グレアムは金融市場でいきなり投資・運用で成績を出したわけではありません。
当初は証券会社で「チョーク・ボーイ」として株式価格の変動を黒板に書き写していました。
チョークボーイとは株価を黒板に書き写す人のこと。この時代の投資家・投機家は「チョークボーイ」を経験している人が多い (例えば ジェシーリバモア など)。
次第に企業の債権・株式等の調査レポートを書くようになり、頭角を現していきます。
1926年
自身の投資会社「グレアム・ニューマン」を設立。1956年にグレアムが引退するまでに平均17%の年間収益を生み出しています。
1954年、この会社に若きウォーレン・バフェットが働くことになる。
会社設立と同時期には、コロンビア大学で財務問題について講演を始めて、引退する1956年まで講義を続けました。
そんな中、グレアムに転機となる出来事が起こります。
1929年 世界恐慌
(ウォール街の群集 Wikipediaより)
10月24日木曜日 ニューヨーク証券取引所での株価暴落から、グレアムは追い込まれていきます。大学の夜間コースで教鞭を取りつつ生活を切り盛りしていました。
そんな中、大学教授のデビッド・ドッドと投資についての議論を深めて、1934年に歴史的な名著『証券分析 (Security Analysis)』を書きあげます。
この著書こそ、グレアムを一気に有名にしたものです。
本の内容自体は古いものですが、「証券」というものを科学的に分析した初めての本と言っていいでしょう。
1929年の世界恐慌から5年、悲劇的な記憶が残る中で登場した本ということもあり、注目を浴びました。
その後、1949年に『賢明なる投資家』を書きあげます。
この本は、ウォーレン・バフェットが最高の投資本と称した有名な書籍です。
ウォーレン・バフェットとの出会い
「賢明なる投資家」を読んだバフェットが、グレアムがいるコロンビア大学へ進学します。
1951年、バフェットは大学卒業後にウォール街で働くことを希望していましたが、グレアムは反対しました。その後、1954年にバフェットを自分の会社に誘ったことで、グレアムのもとでバフェットが働くことになるのです。
グレアムの投資手法
グレアムは「バリュー投資の父」と言われています。
「バリュー投資」とは、企業の業績・財務状態と比べて、割安な株式に投資する方法。
グレアムの投資手法の特徴は「安全余裕率(安全マージン)を意識したバリュー投資」ですこの特徴と、最後にグレアムの投資哲学を順番に見ていきましょう!
安全余裕率(安全マージン)・バリュー投資
安全余裕率
計算された企業価値よりも、どれくらい割安な株価を購入しているかを表す指標。
たとえば、10円の価値がある会社を7円で購入します。このときの安全余裕率は3円分です。
グレアムは「損するリスクを極力減らして投資をする」という前提条件があります。
というのも、グレアムの父が亡くなり経済的に苦しくなった時、母親が株式の信用取引に手を出して大損した、という経験があります。
さらに1929年の世界恐慌などを経て、欲望のままにお金を投じても駄目だということを再確認していました。
この経験から、グレアムは「元本を安全に守りつつ利益を目指す」ことを重点に置ています。
具体的な方法
元本を安全に守るためには、割安株を買うことが重要です。
肝心の割安株を探す方法ですが、グレアムは正味流動資産価値で企業価値を測ります。
※ 正味流動資産価値とは、現金を含めた1年以内に現金にすることが出来る資産から負債を差し引いた金額のこと (固定資産は考えない(0円)とする)。
「1株当たりの正味流動資産価値」よりも株価が安ければ、割安な株と言えます。
ポイント
おおよそ「1株当たりの正味流動資産価値」よりも、3分の2から半分くらいの株価だと安全だと言われています。
さらに安全にするために
グレアムは、安全余裕率(安全マージン)を意識した投資を推奨しつつ、さらにリスクを低減するために「ポートフォリオの分散」の重要性も説いています。
同じ株式を1点買いするのではなく、何種類にも分けて投資をするというものです。
グレアムは5銘柄以上に分けて投資することを勧めています。彼自身は100銘柄以上も分散していたと言われています。
ここにも注目
グレアムが気にしているのは、企業の財務諸表のうち「貸借対照表(BS)」です。
「貸借対照表(BS)」は、企業の資産状況がどのようになっているかを表している。
グレアムは安全マージンを重視していたため、資産価値などを重視していることが分かります。しかし、1960年代以降(特に現代も?)は、状況が変わって来ています。
というのもグレアムの考えで銘柄を探すのが困難だからです。
株価はそれなりに高騰しており、安全マージンが良い株式もさほどありません。あったとしても将来性・成長性に期待が持てないようなものもあります。
この問題はバフェットも苦しんだようで、バフェットは一時的に株式市場から距離を置くことを考えたりします。
ミスターマーケット
グレアムは、株式市場を『ミスターマーケット』という架空の人物で説明しています。
ミスターマーケットの寓話
(以下 Wikipediaより引用)
『ミスターマーケット』という毎日株主の家のドアの前に現れては、毎日違う価格で株の売買を持ちかけてくる親切な人物の話である。
ミスターマーケットによって提示される価格は、しばしば妥当なように思えるが、それはしばしば馬鹿らしい価格のときもある。
投資家は、彼の提示した価格に同意し取引してもよいし、彼を完全に無視してもよい。いずれにしろミスターマーケットは、翌日も他の株式の価格を引き合いに投資を持ちかけてくるのだ。
問題は、ミスターマーケットが気まぐれで提示してくる価格に振り回されてはいけないということである。
投資家は、市場に参加することではなく市場の愚かさから利益を得るべきである。
投資家は、ミスターマーケットがしばしば行う不快な言動に対して、過度に気をとらわれるよりも、むしろ現実世界の会社のパフォーマンスに注目し、割安な株式を取得することに集中する方がよい。
ここに注目
グレアムは株式を「ビジネスを受領できる所有権」として考えるべきであると薦めていました。
ポイント
ビジネスなのだから、1日2日の変動で一喜一憂せずに、長期てな視点で見守ることが大切だ、と彼は考えています。
短期的には株価はブレますが、つまり長い目で見れば、株式の価格とその本来の価値は等しくなる、というのが彼の考えです。
グレアムの投資の格言
満足のいく投資結果を達成することは、ほとんどの人が理解するよりも簡単だ。優れた結果を達成することは、見かけよりも困難だ。
ほとんどの場合、株式投資では投機・賭博をする傾向があるので、不合理に過度な価格変動が起きる。
インテリジェントな投資家でさえ、群衆に流されないように強い意志力を必要とするものである。
自分の持ち株が説明のつかない状況で下げたときに、慌てふためいたり、過度に心配したりする人は、基本的に有利な状況を、わざわざ自分の不利になるように変えてしまっている。
一般大衆が市場の予測から利益を得ることができると考えるのは馬鹿げている。
他人が自分に同意するかどうかで、投資家の正しさは決まらない。
事実と自分の分析が正しいければ、自分は正しい。
投資家とは、自分の持ち株を高値のときに愚かで哀れな投機家に売り、株価が下がったところで彼らから買い戻すという、経験豊かで機敏な人々だと定義できる。
基本的に真の投資家にとって株価変動の持つ重大な意味は1つしかない。
相場が急落すれば抜け目なく株を買い付けて、急騰すれば売り抜けるチャンスなのだ。
成功した投資家は、多くの場合、冷静で忍耐強く、合理的な人間である。
感情をコントロールできなければ、投資を積み重ねて利益を得ることには適していない。
ウォールストリートで成功する要件は2つある。
1つ目は、正しいものの考え方をすること。
2つ目は、自分の頭で考えることだ。