1990年代後半から、脳科学の分野で話題に上がっていた「ミラーニューロン」
何故そんなに話題になっていたのか?
行動経済学・神経経済学に興味があるなら是非知っておきましょう!
「ミラーニューロン」とは?
ミラーニューロンとは?
ミラーニューロンというのは、脳の神経細胞の1つです。
相手の動きを見て、自分も同じ動きをしているかのように反応する脳の神経細胞。
まるで、鏡のように相手の動きに反応することから「ミラーニューロン」と言われています。
相手の気持ちを想像したり共感したりするなど、人間ならではの特徴がどんな仕組みで働くのかが分かっていませんでした。
そこに
「ミラーニューロン」という、相手の行動に反応して、物まねする脳細胞が見つかります。
1996年の夏
イタリア・パルマ大学のリゾラッティ教授らが「サルが手で餌をつかみ取るときの脳の様子」を調べていました。
(←ジョコモ・リゾラッティ教授「https://1000ya.isis.ne.jp/1469.html」より)
実験の休憩時間、研究者たちがシャーベットを食べていたところ、実験対象のサルの脳が反応していることに気づきます。
調べていくと、サルが運動するときに活動する脳神経細胞なのに、自分以外のサル・人の行動を見た時にも同様の活動を見せたのです。
こうして「ミラーニューロン」の存在が発見されました。
研究者
今まで説明できなかった、脳の仕組みを解明できるかもしれない・・!
人間の脳の謎を解明するかもしれないと期待された「ミラーニューロン」は、脳科学の世界だけではなく、色々なところで話題になったわけです。
ちなみに、行動経済学で登場する「ハーディング現象」なども関係しているかもしれませんね!
人間の「ミラーニューロン」は、まだ見つかっていない?
「ミラーニューロン」がここまで話題になったものの、人間の脳のどの部分に「ミラーニューロン」があるかは分かっていません。
先ほどの「ミラーニューロン」は、あくまでサルの話です。
サルの脳を使っての研究は進んでおり、細胞単位で研究されていて脳の下前頭回と下頭頂葉に存在することが分かっています。
ここが難しい
人間の脳となると、さまざまな脳細胞が互いに連携しあって機能します。
(Wikipediaより・ニューロン細胞)
互いに連携しあっている脳細胞を「ニューロン・ネットワーク」「神経細胞群」などと言います。
そのため、具体的に「ここがこの機能を担っている」と断言しづらく、検証も難しいのです。
しかし
人間も、他人の行動を観察しているときは、自分の脳(運動野)が活動しやすくなる事が分かっています。
下前頭回と上頭頂葉が活動している。なので、その脳のあたりに「ミラーニューロン」が存在しているのでは?というのが現状です。
「ミラーニューロン」=「共感」ではない
「ミラーニューロン」は「物まね細胞」と言われています。
そうした機能から、ミラーニューロンは他人の気持ちを理解して共感する力がある脳細胞だ、と言われる事もあります。
例えば・・
相手の動きを見た時に、自分の脳も反応して自分の体験として感じれば、相手に共感することができます。
実際にそれが正しいかは全然分からないのですが、最近の研究では「ミラーニューロン=共感」は拡大解釈しすぎ?という意見が広がっています。
ネットなどでミラーニューロンを調べると、共感する力があるみたいな書かれ方をしますが、最近の研究をもとに話を進めます。
ミラーニューロンは、簡単な動きを反復しているだけ?
ミラーニューロン自体に共感する力があるわけではない、という反論には根拠があります。
ポイント
ミラーニューロンが、相手の動きを真似して脳内で再生しているのは事実です。しかし、これは皆さんが想像している意味とは少し違います。
あくまで「ミラーニューロン」が真似しているのは「何をしているか・どうやっているのか」だけ。
例えば
- サッカーの練習をしている子どもがいます
その様子を他の人に見せて、あの子どもは何をしていますか?と質問をします。
質問されれば「サッカーです」と答えるでしょう。その時には「ミラーニューロン」がばっちり反応しています。
しかし
質問を変えると話が変わります。
あの子どもは、どうしてサッカーの練習していると思いますか?
「試合でレギュラーに入るため」などと答えるでしょう。この回答をしている時に「ミラーニューロン」は働きません。
※別の脳細胞(メンタライジング系)が動いています。
ココに注意
ミラーニューロンは、何故?どうして?といったことを考える際には機能しない。つまり、深い意味を読み解く力はないわけです。
ミラーニューロンは、動きの真似をすることがメインです。
簡単にどんなことをしているか?を考える際には活発に活動しますが、何故そんなことをしているのか?みたいな難しいことを考えると、活動しなくなります (代わりに他の脳細胞が動き出します)。
ちなみに
人が共感したりするのは、脳のたくさんのネットワークが機能していると言われています。ミラーニューロンもその1つなのは確かです。
step
1「相手の行動」や「心の状況」を理解する。
この第1ステップでは、ミラーニューロンで簡単な動きを理解、難しい意図を考えたりする場合は違う箇所が働きます。
step
2「相手が感じている感情」を自分のものとして感じる
相手の感情を自分のものとして感じる時には、ミラーニューロンではなく、これまた違う脳細胞が活発になります。
ちなみに喜び・苦痛などによって活動する脳の個所が変わります。
ココがポイント
つまり、相手のことを理解する(第1ステップ)・相手の感情を自分のモノのように感じる(第2ステップ)ことで、初めて「相手に共感する」という心情に繋がるのです。
なので「ミラーニューロン=相手に共感する!」みたいな話ではありません。
「ミラーニューロン」はまだまだこれから
「ミラーニューロンは、DNAに匹敵する発見」と言われることもあります。
それくらい「ミラーニューロン」の発見は脳科学のホットな話題になったわけですから注目していきたいです。
- 自閉症と関係している?
- 性別さがある?
など、さまざまな検証が続いています。
あの性格、あの病気はミラーニューロンに関係していた、なんてことも、いずれ解明されていくでしょう。
ちなみに
「相手の気持ちを読み取る」という脳の働きは、かなり高度で、ミラーニューロンだけでは話が終わりません。
この本は、最近の研究を中心に、脳の仕組みを紐解く本です。
脳がどうやって、相手の気持ちを理解するのか?そんな人類の謎に踏み込んだ内容で、ミラーニューロンや、他の脳内ネットワークについても紹介されており、興味深い話がたくさん載っています。