有名な投資手法で知られる「ナンピン(難平)」
しかし、多くの人がナンピン(難平)で失敗をして損をします。
なぜ有名な投資手法なのにみんな失敗するのでしょうか・・?その理由を行動経済学のプロスペクト理論で説明!
ナンピン(難平)が失敗する理由を行動経済学で解説!
まずは、行動経済学で登場する「プロスペクト理論」について、簡単に解説します!
プロスペクト理論の概要!
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる(損失回避)。
- 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
ここから重要なポイントを簡単にまとめてみます。
要約!
- 人は損が嫌い
- 損を避けたがる性質(損失回避)
- 人の感情は相対評価で決まる(参照点依存)
- 人は慣れる生き物(感応度逓減性)
プロスペクト理論の詳細はこちら⇒ プロスペクト理論とは?
早速
どうして「ナンピン(難平)」が失敗するのか理由を解説していきます。
ナンピン(難平)が難しい理由とは?
まずは「ナンピン(難平)」について簡単におさらいです。
ナンピン(難平)とは?
自分が持っている株などが下落した時に、買い増していく手法。
たとえば?
- 1株100円で購入していた株式が90円になった場合
90円で1株買い増せば平均取得単価は (100+90) ÷2=95円 となります。
100円で買っていたけど、95円で買ったようになるわけです。
ナンピン(難平)を成功させるためには、1つだけ重要なポイントがあります。
それが「将来、必ず価格があがること」です。
ココに注意
将来上がらない株をいくら買い増しても意味がないのは直ぐに分かるかと思います。
ここがナンピン(難平)の罠です。
価格が下がるたびに買い増していくのは良いのですが、ず~っと価格が下落して資金が底をつく。資金負けです。
行動経済学的に「ナンピン(難平)」が失敗する理由
ここから具体的にプロスペクト理論を使って「ナンピン(難平)」が失敗する理由を解説していきます!
一応先ほどのプロスペクト理論の要約を載せておきますね!
要約!
- 人は損が嫌い
- 損を避けたがる性質(損失回避)
- 人の感情は相対評価で決まる(参照点依存)
- 人は慣れる生き物(感応度逓減性)
① 損を先送りする心理が働く(損失回避)
-
【損失回避性とは?】絶対に知るべき行動経済学で登場する心理学
あなたが「失う」ことを嫌うのは何故か。 行動経済学の理論の多くが「損失回避の法則」と関係しています。 必ず知るべき「人の ...
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プロスペクト理論では「人は損が嫌い(損失回避)」という性質があると指摘しています。
さらに詳しく
人は利益を得る喜びよりも、損する苦痛を2倍以上も感じることがプロスペクト理論で指摘されています。
人は損することに敏感に反応するため、損を避けたがる行動に繋がります (損失回避)。
例えば
株価が下落する時に諦めて損失を受け入れること(損切り)が出来ない、ことってありませんか?そうした心理状態のことを言っています。
そうこうしている内に価格が下落していきます。
最終的に、何もせずに見ているだけ!
ココに注意
多くの人は、このあたりで「ナンピン(難平)」で買い増しをしていくことを決断していきます。
損失回避の詳細はこちら
⇒【損失回避性とは?】絶対に知るべき行動経済学で登場する心理学
② 損している状態に慣れ始める(感応度逓減性)
-
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プロスペクト理論では「人は感情や環境に慣れる(感応度逓減性)」という性質があると指摘しています。
慣れていくというのは直感的に分かるかと思います。
例えば
恋人ができた時を考えてみましょう!
- 人生で初めて恋人ができた時
- 人生で2回目で恋人ができた時
- 人生で3回目で恋人ができた時
「恋人ができた」という事実は同じですが、同じ経験をすると徐々に慣れてきて喜びや苦痛が減少していきます。
株価が下落して・・
- 最初、損して苦痛を感じますが、だんだんと慣れてきます。
この「慣れていく感覚」はナンピン(難平)を繰り返す原因になります。
最初は、色々と考えてナンピン(難平)を決意したことでしょう。しかし、段々と何も感じずに、下落すればナンピン(難平)、下落すればナンピン(難平)となっていきます。
ココに注意
このようにナンピン(難平)を続けると、目先の損失を避けつつ、現在の状態に慣れていくという悪循環に陥ります。
感応度逓減性の詳細はこちら
③ 人の評価は相対評価(参照点依存)
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プロスペクト理論では「人の評価は相対評価(参照点依存)になる」という性質があると指摘しています。
次に注目したい性質が「相対評価(参照点依存)」です。
ナンピン(難平)でひとまず損を先送り。段々とその状態に慣れていきます。そして最後に「相対評価」が襲います。
相対評価と言われると分かりづらいので、具体的な例をもとに考えてみましょう!
例えば
- あなたは最初100万円を持っていました
しかし、投資に失敗してマイナス30万円!
その後
何とか10万円を取り戻して満足しました。
この時、トータルで見ると20万円のマイナス(絶対評価)ですが、マイナス30万円よりはましだった(相対評価)と考え満足するような心理状態です。
相対評価だと
ナンピン(難平)をすれば平均取得価格が下がるので、表面上は損はしていません。
ココに注意
しかし、ナンピン(難平)をすればするほど多くのお金を費やし、最初にナンピン(難平)を始めた時に比べれば、状況が悪くなっているのは言うまでもありません。
状態が悪くなっているにもかかわらず、ナンピン(難平)をすれば、少しだけ状況が改善したような感じがします。その安心感に私たちは満足しているのです。
つまり
全体で見た場合は、明らかに良くない状況に追い込まれているにも関わらず、ナンピン(難平)した方がしないよりはいい(相対評価)という感情に襲われて、抜け出せなくなるのです。
具体的に
最初は100円で買ったのに、95円、90円とナンピン(難平)で買い増していくと評価の基準が下がっていきます。
平均取得価格が95円だった時に、90円まで下がれば、ナンピン(難平)して平均価格を下げていく方が良いように見えます。(相対評価=さっきよりは良い)
しかし、最初の100円から考えてみれば分かるのですが、100円⇒90円に下落した時点で読みが外れています。(絶対評価=そもそも読みが当たっていない)
ナンピン(難平)とプロスペクト理論のまとめ!
ナンピン(難平)をして失敗する原因について書いてきました。
そもそも、多くの人は「ナンピン(難平)をその場しのぎの手段」として使っています。
ナンピン(難平)は、投資初心者がやるような手法ではなく、先々を見通して行わなければならない難しい技なんです。
そして
その場しのぎで「ナンピン(難平)」をすると、必ず失敗します。
投資の基本は「損切り」です。ナンピン(難平)ではありません。
いかに損を認められるのか?それが重要です。
ここまでプロスペクト理論について紹介してきましたが、重要なポイントがあります。
投資の基本と人の性質は真逆
有名な投資家ジェシー・リバモアもこう言っています。
損が明らかな時には損切り、利益が見込める時には利喰わないのが鉄則だ。
By ジェシー・リバモア
つまり
人が本能的に嫌がること(損失回避)をするのが投資の基本なのです。投資をするならプロスペクト理論は必須の内容なので、是非知ってくださいね!
⇒【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!