行動経済学

利用可能性ヒューリスティックの日常例を紹介!行動経済学を知る

2019年6月2日

日常生活にはどんな利用可能性ヒューリスティックがあるのか?

具体的な事例と、なぜ利用可能性ヒューリスティックが起こるのかを紹介していきます!

 

利用可能性ヒューリスティックとは

イメージしやすい・思い出しやすい情報を中心に物事を判断してしまう現象のこと。

重大な事故が起こると危険を感じる

 

例えば、飛行機テロのニュースを見ると、飛行機に乗ると事故が起こるのではないか?と考えてしまいがちです。

その結果、飛行機に乗るのを辞めて、電車や車を使うなんて行動を取る人もいます。

 

さらに詳しく

2011年のアメリカで発生した9.11テロの際には、飛行機テロに巻き込まれると恐怖した一般の人々が自動車を使うようになりました。その結果、2011年の10月~12月に起こったアメリカでの自動車死亡事故は通常よりも1000人近く増加しました。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
実際はどうなのかな?
確率で見てみると分かりやすいよ
牛さん
牛さん

 

アメリカの国家運輸安全委員会 (NTSB) の行った調査によると、飛行機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%であるという。

アメリカ国内の航空会社だけを対象とした調査ではさらに低く0.000034%となる。

8200年間毎日飛行機に乗っても、1度だけ事故にあうかもしれないという低い確率。

(Wikipediaより)

 

つまり、飛行機に乗って死亡事故に巻き込まれる確率は10万分の1以下です。さらにアメリカの航空会社だけでは100万分の1を下回ります。

 

一方で、車の死亡事故はどうでしょうか?

年間の自動車事故での死者数は3000人以上・免許所有者数が約8000万人超です。

そのうち、男性の2割・女性の3割がペーパードライバーです。

ここでは2割として8000万人の2割=1600万人は車を運転していません。

3600人÷6400万人=0.005625%

 

免許単位で見れば、自動車の死亡事故は約1万8000分の1で発生します。

 

他にも

8200年間に自動車事故で3600人が死亡すると考えれば、その間に107億人が死亡することになります。自動車の方が死亡するリスクが高いことが分かるかと思います。

 

想起容易性バイアス

飛行機の方が事故に巻き込まれる確率が低いのに、自動車の方が安全だと錯覚した理由は「想起容易性バイアス」の影響です。

 

想起容易性バイアス

イメージしやすいもの・よく見たり聞いたりするものを「良い商品」「高い確率で発生する」などと錯覚していしまう現象のことです。

 

ニュースの悲惨な事件の発生確率を高く見積もる

これは想起容易性バイアスが原因で発生する「利用可能性ヒューリスティック」の代表例です。

 

飛行機事故以外にも、殺人事件などが該当します。

ニュースで殺人事件などの報道は後を絶ちません。しかし、こうした凶悪事件は年々減少しているのです。

「凶悪事件が減らずに、むしろ増えているのでは?」という錯覚が生まれる原因は、ニュースでよく見かける&印象に残るからです。

 

通り魔事件(犯人は捕まっている)

通り魔事件が起こると、事件が起こった地域で警備体制が強化されたりします。

同じ地域で模倣犯が出てこないように等、理由はたくさんあります。

しかし、通り魔事件が発生したあとに犯人が捕まったのにもかかわらず、同じ地域で同様の事件が発生する確率は本当に高くなっているのでしょうか?

 

具体的なデータはありませんが、模倣犯が出没するにしても、最初の事件があった地域ではなく、違う地域に出没する可能性も確率的には等しいはずです。

 

注意

模倣犯を心配するなら、日本全国で警備体制を強化しないとほぼ意味がないと言えます。

もちろん、こうした事件があった地域で警備強化されるのは、住民の人の不安を軽減させるなどのも目的もあるため、事件があった地域で警備体制を強化することに反対しているとかではありません

 

事件の印象が強くなったせいで、同じ地域で再び何かが起こるのではないか?と心配になるのも利用可能性ヒューリスティックの影響だと言えるでしょう。

事件とは関係ないと思っているあたなの町で、模倣犯が出現する可能性は等しく同じくらいあるのですよ?

 

同じCMがたくさん流れる

 

マーケティングの分野では?

利用可能性ヒューリスティックの特徴である「よく見かける&印象に残るものに影響を受ける」というポイントを利用して、TVCMなどは繰り返し同じCMが流れます

 

CMをすぐに思い出してもらえるように、何度も同じCMが流れます。

すぐに思い出せたり、印象に残っている方が「良い商品」だと錯覚してもらえるからです。

 

CM中に商品名を何度も連呼するのも同じ理由

実は、商品名を記憶に残してもらうことで、その商品を手に取ってもらう確率を高めることが出来るのです。

 

ポイント

私たちは、自分が知っている商品・ブランドを購入する傾向がある。

 

例えば

緑茶と言えば?

「綾鷹・伊右衛門・生茶・お~いお茶」などが有名です。

多くの人は、このブランド以外の緑茶を買いますか?

ほとんどの人は、有名なブランドの緑茶しか買わないかと思います。このように、特に日常生活で頻繁に使うような商品は、利用可能性ヒューリスティックが強く働きます

 

選挙で、ウグイス嬢が政治家の名前を連呼するのと同じ

実際に、名前を連呼するだけで得票数が上がると言われています。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
確かに、すぐに思い出せるものを買う事ってあるよね
これに関連して、もう1つ例があるよ。
牛さん
牛さん

 

商品を探す時にどこで買う?

 

欲しい漫画があったので買おうと思いました。

 

男性

あの漫画、少しマイナーだから、普通の本屋とかにおいてなさそう。Amazonで買おう!

 

この「Amazonで買おう」は、利用可能性ヒューリスティックの1つです。

 

検索容易性バイアス

Amazonで買おうと思った理由は「とりあえずAmazonなら何でもあるだろう」というイメージからです。

このように、簡単に情報を結び付ける癖を「検索容易性バイアス」と言います。ちなみに、さきほどの「緑茶と言えば?」の例は、検索容易性バイアスも含まれています。

 

検索容易性バイアス

すぐにイメージできるものに、情報を結び付けてしまう現象のことです。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
さっきと何が違うの?
簡単に比べてみると分かりやすいよ。
牛さん
牛さん

 

もっと簡単に

先ほどのテレビCMを例に簡単に説明します。

あの女優さんが出ている化粧品のCMは印象に残るな~。あの化粧品を買ってみよう 。(想起容易性バイアス)

TVCM・女優さん ⇒ 印象が良い ⇒ その商品を買ってみる (想起容易性バイアス)

 

次に、あなたがCMを作ろうと考えます。

この化粧品のCM、どの女優さんに頼もうかな~、とりあえずイメージが良いあの女優さんにしよう。(検索容易性バイアス)

CMを作る ⇒ 印象が良い人を起用したい ⇒ とりあえず、あの女優さん (検索容易性バイアス)

 

ココがポイント

利用可能性ヒューリスティックでは、テレビでたくさん見かける女優さんの印象が良く感じられる一方で、逆に「良い印象と言えば、あの女優さん」というパターンも生み出すことがあります

 

とりあえず○○

 

とりあえずコンビニ

通学通勤のときに、とりあえずコンビニで飲み物を買って・・。

こうした行動も利用可能性ヒューリスティックの影響を受けています。

 

どうして?

通勤時間帯などは時間がありません。

一般的に飲み物をどこで買おうか?などと考えている余裕はないのです。このように、時間的に余裕がないと、利用可能性ヒューリスティックが強くなる傾向があります。

 

ポイント

時間がないと「とりあえず○○」と直ぐにイメージできるものを選ぶ傾向にある。

 

とりあえずビール

 

飲み会などで「とりあえずビール」と注文するケースがあるかと思いますが、これも一種の利用可能性ヒューリスティックです。

 

たくさんの人の意見をまとめるのが面倒そこまで注文に時間をかけたくない等の理由から、「酒=ビール⇒ とりあえずビールを頼んでおけばいい」という利用可能性ヒューリスティックに繋がります。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
ビールが好きじゃない人には厄介な話だよね
そういう時は、先に他のお酒を言っちゃうのが良いよ
牛さん
牛さん

 

景気が良いか悪いか問題

 

よく年配の人に、日本の景気が良いか悪いかを聞くと「悪い」と答える人がいます。

ちなみに、2012年 安倍政権になってから日本経済は上向き基調なのは間違いありません

雇用率が上がり、株価も上昇しています。日本経済が縮小に向かうさ中で、ここまでの強さを見せている以上、2012年~2020年の日本経済が景気が悪いというのは逆に無理があると考えます。

 

このように答える人の中には、本当に景気上昇の恩恵を受けられていない人がいる一方で、「景気が良い=バブル経済」と考えている人がいます

 

これも利用可能性ヒューリスティックの例の1つです。

つまり、バブル経済の印象が強すぎて、景気が良いというのは「タクシーに乗るために、札束を掴んで運転手に見せつけるような状況」だと想起してしまっているのです。

 

また、経済にまつわる利用可能性ヒューリスティックの例をもう1つ紹介します。

 

上がり続ける株価

 

株価が6日連続で上がりました。7日目は上がるでしょうか?下がるでしょうか?

 

答えは50%で上がって、50%で下がるです

しかし、6日連続で上がるなら、7日目も上がりそうなどと考えた人は利用可能性ヒューリスティックの影響を受けています

  • 1日目:↑
  • 2日目:↑
  • 3日目:↑
  • 4日目:↑
  • 5日目:↑
  • 6日目:↑

こうなると、6日間で株価が上がっているという印象が強すぎて、それに引きづられて予想をしてしまいます。

ココに注意

株価が上がるか下がるかは、これまで何日上がり続けているか等の情報は関係ありません。その日のニュースであったり、結局ふたを開けてみれば分からないのです。確率論で言えば、過去の結果が良くても、7日目の株価が上がる確率は変わりません(50%)。

 

利用可能性ヒューリスティックは私たちの日常生活にたくさん潜んでいます。

 

ここに注意

脳のエネルギーを節約したり、情報が少ない場面では上手く機能します。

しかし、安易に考えてはいけないような物事まで利用可能性ヒューリスティックの影響を受けると、間違った選択をしてしまうこともあります

そんなリスクを減らすためにも、どんな場面で利用可能性ヒューリスティックが起こるのかを知っておくことは重要かもしれませんね!

 

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