「みんなやってるよ、やってないの?」
私たちは、何故この魔法の言葉に反応してしまうのか?
誰もが経験した事があるこの現象を行動経済学で解説!
ハーディング現象(効果)とは?
周りの人(集団)と同じ行動を取ることで、安心を得ようとする群集心理のこと。結果的に多くの人が同じ行動を取ってしまう。行動経済学の理論として有名。
「ハーディング(Herding)」は「(動物の)群れ」を意味する英語。
ハーディング現象(効果)は「有名な飲食店にどうして行列が出来るのか?」を説明する時によく使われる行動経済学の理論です!
私たちが群集心理にどう影響を受けるのか?を説明している。
ココがポイント
周りと同じように行動して安心感を得ることは、自分一人で行動するよりも重要 (たとえ周りが間違っていたとしても・・)。
牛の中には仲間が襲われているとみんな一斉に逃げ出す種類がいます。周りと全く同じように逃げ回るのでハーディング現象の一種と言われています。
どうして周りに同調しちゃうのか?
ハーディング現象(効果)についてはイメージしやすいですが、どうして引き起るのでしょうか?
ポイントは大きく分けて2つあります。
- 周りの人をマネてしまう人の性質
- 社会の一員でありたい気持ち
2つのポイントを順番に見ていきます
①人は他人の行動をまねてしまう性質がある
よく、道端で反対側から歩いてきた人とお見合いしてしまうなんて事はありませんか?
それに近いのですが、人には他人の行動に反応してしまう脳の仕組みがあります。
その代表例が「ミラーニューロン」という神経細胞です。
ポイント
この「ミラーニューロン」は、他人の行動を見るだけで、自分が同じ体験をしているような感覚(脳内の活動)をもたらしてくれます。
ミラーニューロンがあるおかげで、相手に共感したり、相手の行動を自分の脳内で再生したりすることが出来ます。
さらに詳しく
他人の行動を脳内で再現する機能(ミラーニューロン)があるので、私たちは他人の行動に反応しやすい生き物なのです。
②人は社会的な生き物である
ハーディング現象(効果)を説明する上でもう一つ重要なポイントが人の社会性です。
例えば・・
世の中の流行りのモノを買ったりするのは「社会の流れに乗り遅れたくない」などの気持ちが働いていたりします。
また、「周りから認められて、社会の一員でありたい気持ち」も備わっています。
余談ですが、興味深い話があります。
日本では、子どもが悪いことをすると「家から追い出すぞ(集団からの排除)」と怒られます。海外では「家から出さないぞ(自由を奪う)」と怒られます。
こうした幼少期の教育の影響もあり、日本人は「社会(集団)から排除されることを凄く苦痛に感じます」
つまり、日本人は社会(集団)と違う行動をすることに対して恐怖心を抱きやすい?かもしれません。
ココがポイント
他人と同じ行動をしていれば、社会(集団)の一員として認められているような安心感を得られます。こうして周りの人へ同調するというハーディング現象(効果)へ繋がっていきます。
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同調圧力ってそんなに強いの?
1951年、アメリカの心理学者 ソロモン・アッシュがある実験を行いました。
同調実験
カードに描かれた線の長さを当てる実験です。
選択肢はA・B・Cと3つあり、それぞれの長さはハッキリと違っているので、間違いようがないような選択肢が並んでいます。
実験では、サクラを入れていない状態では99%が正解しました。
ここにサクラを入れると・・
しかし、ここに7人のサクラを入れて、わざと間違った選択肢を選ばせます。
被験者に周りのサクラの動きを見せると、一気に正答率が下がりました。
このクイズを12回やると、75%が1回以上間違った選択肢を選びます。
改めて言いますが、当初の正解率は99%です。
ポイント
明らかに正解と分かるクイズが出されても、周りに同調して間違った選択肢を選んでしまうことがあるわけです。
ハーディング現象(効果)の弊害「アビリーンのパラドックス」
ハーディング現象(効果)は非常に強く現れますが、そのせいで悪い影響を与えることもあります。
それが「アビリーンのパラドックス」です。
ある8月の暑い日、アメリカ合衆国テキサス州のある町で、ある家族が団欒していた。
そのうち1人が53マイル離れたアビリーンへの旅行を提案した。
誰もがその旅行を望んでいなかったにもかかわらず、皆他の家族は旅行をしたがっていると思い込み、誰もその提案に反対しなかった。
道中は暑く、埃っぽく、とても快適なものではなかった。
提案者を含めて誰もアビリーンへ行きたくなかったという事を皆が知ったのは、旅行が終わった後だった。
(Wikipediaより)
自分の考えを抑えて周りに同調した結果、実は誰も得をしていなかったという話です。
集団でコミュニケーションが取れていないと発生しやすいため、組織や経営の話でたびたび登場してきます。
ココに注意
自分の考えを抑えて周りに同調すると、集団として間違った方向性にいってしまうことがある。(実はみんなその選択肢が悪いと思っているにも関わらず・・)
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日常生活に潜むハーディング現象(効果)
ここまでハーディング現象(効果)をかなり詳しく説明してきましたが、日常生活ではどんなところでハーディング現象(効果)が見られるのでしょうか?
簡単に紹介!
- 投資家が一斉に株の買いや売りに走る
- バブル相場でみんなが買い始める
- バラエティー番組の笑い声の効果音
- 行列ができてる店に並ぶ
ハーディング現象(効果)は、もともと株式市場などでバブル相場が発生する理由として取り上げられていました。
最近だと・・
2008年のリーマンショックの原因である「サブプライムローン関連商品の購入が過熱化」なども一種のハーディング現象(効果)と言われています。
2017年の仮想通貨バブルでみんなが仮想通貨を買い漁っていたのもハーディング現象(効果)かもしれません。
また、ハーディング現象(効果)の凄いところは、やらせと分かっていても反応してしまう事です。
バラエティー番組で、音声の編集で笑い声などがバックから聞こえることがあると思います。
これはハーディング現象(効果)を狙っているためです。
そうした笑い声は編集で追加されたものと理解しているはずですが、それでも笑い声がない時よりは、面白く感じます。
さらに詳しく
さきほど紹介したミラーニューロンの影響で、他人の笑い声に反応して、自分が笑っているような脳の動きをしてしまうからです。
他には・・?
食べログなどで、お店の評価を上げることで、店が繁盛するかに影響が出ます。
皆さんも普段の生活でやると思いますが、行くお店の評価の星が高いほうが安心感があります。
つまり、評価を上げて星を増やすことで、お店側に有利なハーディング現象(効果)を誘発しやすくなるのです。
商品や映画のレビューで、最初の方に高い評価が並んでいると、全体的に高い評価になりやすい。
逆に最初に低い評価が並ぶと、全体的に低い評価になりやすいという話があります。
これは一種のハーディング現象(効果)で、周りの人の評価に自分の評価が影響を受けている可能性があります。(アンカリング効果との相乗効果とも言えそうです。)
なので、最初に高い評価を自分で並べてしまうという若干グレーな戦法もあったりします。
このようにハーディング現象(効果)を極めて、群集心理を理解するとマーケティング戦略などで応用できます。
今の時代はSNSなどで情報が直ぐに伝播するので、ハーディング現象(効果)が引き起りやすいと言えます。
ネット時代だからこそ、ハーディング現象(効果)は行動経済学の必須科目だといえるかもしれませんね!