行動経済学

【双曲割引とは?】目先の誘惑に負ける理由を行動経済学で解説!

2018年9月9日

目先の誘惑に負けてしまう原因を説明した「双曲割引」

  • 貯金に失敗した
  • ダイエットに失敗した
  • 勉強できずに遊んでしまった

その秘密を行動経済学で登場する「双曲割引」で解説!

「双曲割引」とは?

 

双曲割引とは

人は「今」という時間を強く重視する傾向にある。

そのため、同じ金額ならば「今もらえる報酬」より「将来もらえる報酬の価値」の方が低くなる

その価値の減り方が反比例(双曲)のグラフになるため双曲割引と言われている。

 

北国宗太郎
う~ん、よく分からないです・・。
まずは「割引」って言葉の意味から解説するね!
牛さん

例えば

  1. いま10万円がもらえます
  2. 来年10万円がもらえます

(1)(2)なら、どちらがいいでしょうか?

何もなければ、(1) 今10万円を貰ってしまいたいですよね?

 

ココがポイント

このように「今もらえる報酬」>「将来もらえる報酬」となります。

 

さらに、選択肢を追加します。

  1. いま10万円がもらえます
  2. 来年10万円がもらえます
  3. 再来年10万円がもらえます

これなら (1) > (2) > (3) の順番になります。

 

ポイント

同じ金額なら、遠い将来になればなるほど、利益の価値が小さく感じることを 時間割引 と言います。

 

グラフで描くと・・

 

北国宗太郎
将来にいくほど、価値が右下がりで下がってる。
うん、これが「割引」って意味なんだ。
牛さん

 

ここで問題が

  • 人の時間の感じ方は、歪んでいる

今度はこんな質問を考えてみましょう。

  1. 今日10万円もらえます
  2. 来週10万円もらえます

これなら、(1) 今日10万円を貰ってしまいたいですよね?

 

次です (ここが重要)

  1. 1年後10万円もらえます
  2. 1年1週間後10万円もらえます

この2つの選択肢ならどっちでも良い気がしませんか?

 

北国宗太郎
まあ、確かにどっちでも良いや。
これこそが「双曲割引」なんだ
牛さん

 

まとめ

人の「時間と価値」の感じ方には、こんな特徴があります。

  • 「今」⇒「来週」は価値が一気に減ります。
  • 「1年」⇒「1年1週間」はあまり価値が減らないです。

 

同じ1週間でも重みが変わってくる

 

グラフにすると

グラフで描くとピンクの曲線になります。

この曲線が、反比例(双曲)になるので「双曲割引」と呼ばれています

 

このように、人はとにかく”今”が重要。また、未来になればなるほど時間の感じ方がアバウトになる

 

北国宗太郎
双曲割引、なんとなく分かった。
ここから誘惑に負ける理由を説明できるよ。
牛さん

何故あなたは目先の誘惑に負けるのか

 

双曲割引で「ダイエットに失敗」「貯金に失敗」の理由が分かってきます。

 

ココがポイント

人は”今”を重視して生きているので、ダイエットや貯金などの将来のために行動するのが苦手な生き物。

 

北国宗太郎
でもコレって個人差がありそうな気がする
その通り、人によって双曲割引の強さが違うんだ
牛さん

 

  • 今がとても大切な人・大事なことを後回しにする傾向

「ダイエットしなきゃ!」「貯金しなきゃ!」と考えても失敗するのは双曲割引が強いからと言えます。

 

例えば

ダイエットを例に、双曲割引がどのように働くのかを見ていきましょう!

 

ダイエットを決意した女性

将来はやせて水着を着るぞ~

 

この女性は、好きな水着を着るため(将来のため)にダイエットを始めます。

しかし、そこに「ケーキ」が現れます。

 

ダイエットを決意した女性

とりあえず今日だけは・・

 

ダイエット中なのに、ケーキ(目前の快楽)を我慢できずに食べてしまいました。これは「今ケーキを食べる喜び > 将来痩せる喜び」となってしまっているからです。

このように将来のために我慢することが出来ずに、今の快楽に走ってしまう行動を「自滅選択(自滅行動)」と言います。

 

ポイント

多くの実験の結果で「双曲割引が強い人」は自滅行動 (貯金やダイエットの失敗) を引き起こしやすいことがわかっています。

 

ちなみに、双曲割引が強い人(我慢できない人)の傾向もあるので参考にしてください。

 

双曲割引が強い人の特徴

  • 男性の方が強い
  • 年齢が高いほど強い
  • 失業など生活が不安定な人の方が強い

逆に、双曲割引が弱い人には「所得が多い人」「理系出身者」「競争心が旺盛」「国の政策を当てにしていない」などがいます(=将来の利益のために我慢できる人)。

⇒ 自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学 より

 

さらに詳しく

少し専門的な話をします (難しく感じた人は飛ばして大丈夫です)。

ダイエットや貯金などを失敗(自滅選択)してしまう現象を「時間的非整合性 (選考の逆転現象)」と呼びます

将来的(長期)に大切な利益になることを計画をしても、今(短期)の利益のために将来の計画と相反する行動(自滅選択)をとってしまい、整合性が取れなくなること (時間的不整合)。

「双曲割引」は脳のせい?

ダイエットや貯金などは「今の自分」と「将来の自分」が葛藤している状態です。

「将来のために行動する自分」と「今ケーキを食べたい自分」が対立している状態を「エージェンシー問題」と言います。

 

この原因を私たちの脳の仕組みから説明ができます。

私たちは、人に進化する前はサルでした。

おサルの時代は「エサがあれば食べる」という当たり前の考え方が脳には備わっています(大脳辺縁系など)。

しかし、人へ進化するにつれて、昔からあった脳みそに、将来を考えて行動するという脳の仕組みが外づけされました(大脳新皮質)。

 

わたしたちも生物なので、昔からある本能的な機能がある脳の影響力が強く残っています。特に、将来のために行動するというのは、後から進化してきた部分なので負けてしまいます

多くの人は自滅選択を取ってしまいダイエットや貯金に失敗します。これは脳の進化の影響なので、ダイエットや貯金ができなくても不必要に悲観しなくてもOKです。

 

ちなみに

双曲割引(自滅選択)は、ネズミでも確認されています。

つまり、人以外の動物でも「目の前の快楽」には負けてしまうというわけです。

 

ポイント

双曲割引が強く、自滅選択してしまうのは脳の仕組みから見れば当たり前の結果

どうすれば自滅選択しないで済む?

 

  • どうすればダイエットに失敗しない?
  • どうしたら貯金に失敗しない?

双曲割引が強い人は、自滅選択しやすいと話しました。

それでは、どうすれば良いでしょうか?ここでは解決策を簡単に紹介~!

 

step
1
「コミットメント」

コメットメント

自分が将来する行動を表明(宣言)することで、その行動を確実にとることを約束すること。自分をしばる。

 

ダイエットをすることを決めたら、周りの人に伝えてみましょう。

ダイエットする男性

7キロやせるためにジムに通うぞ!

 

人は一貫性のある行動を好みます。一度ダイエットすることを宣言してジムなどに加入すると、ダイエットしようとする動きが強まります。

 

あとは

自分にトレーナーなどを付けてみましょう。

 

さぼったらその人に悪いとか、一度トレーニングが始まれば必ず一定の運動量を課されるので、自分が選択するような余地がなくなります。

こんな感じで、自分以外の第三者に手伝ってもらうことだってできます。

※ あまり強く自分を縛るのは逆効果です。ほどほどに。

 

step
2
「自己シグナリング」

自己シグナリング

自分の行動を振り返って、目先の利益にとらわれていないのかを確認すること。

 

例えば

一日の終わりに、今日食べたものをノートに書きだしてみましょう。

 

ダイエットしている女性

今日はコレくらい食べて・・・

 

すると、ケーキを食べたり、カロリーを高いものばかり食べていたりすると「う・・。」と思うはずです。

そうした振り返りの時間を持つことで、長期的な視点を取り戻すことが出来るので将来の抑制につながります。(昨日食べ過ぎたから今日は抑えようなど)

 

step
3
生活習慣を心がける

 

双曲割引が高くなって自滅選択しやすい人には、生活習慣も大きくかかわっています

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上の記事は脳科学の知見を使った話になります。

なんと双曲割引が低くして、自滅しないような方法があるのです。ポイントは脳内の〇〇〇〇〇というホルモンです。興味があれば読んでね!

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