人は極端なものを嫌う生き物。
そんな特性を利用した「松竹梅の法則」とは?
- 真ん中を選びたくなる心理
- 金額の設定はどうすれば良い?
商品を売り込む時にどうすれば良いのか?を行動経済学・心理学から解説!
松竹梅の法則・極端回避性とは?
松竹梅の法則・極端回避性
選択肢が3つある状態だと、真ん中の選択肢を選びやすくなる心理現象のこと。
商品が3つあると、一番安い商品ではなく、一番高い商品でもなく、真ん中の商品を選びたくなるのが「松竹梅の法則(極端回避性)」です。
有名な「ミノルタカメラの実験」
(Wikipediaより・ミノルタカメラ=Minolta X-700)
「ミノルタカメラ」は、かつて日本に存在したミノルタ㈱が発売していたカメラのこと。ミノルタは、2003年に写真フィルムメーカー㈱コニカと合併後、コニカミノルタ㈱として現在に至る。既にカメラ事業は廃止済。
- 2つの価格帯のカメラを販売する
低価格 (ミノルタX-370) |
中価格 (ミノルタ3000i) |
ー |
---|---|---|
価格 166.99 ドル | 価格 239.99 ドル | ー |
選択率 50% | 選択率 50% | ー |
2つだけで比べると、選択される割合に特徴は出ませんでした。
次に
- 3つの価格帯のカメラを販売する
低価格 (ミノルタX-370) |
中価格 (ミノルタ3000i) |
高価格 (ミノルタ7000i) |
---|---|---|
価格 166.99 ドル | 価格 239.99 ドル | 価格 466.99 ドル |
選択率 22% | 選択率 57% | 選択率 21% |
さきほどの選択肢に高価格帯のカメラを加えると、選択率が大きく変化しました。
ポイント
高価格帯のカメラを加えるだけで、真ん中のカメラが選ばれる割合が高くなった。
この実験は、Simonson & Tverskyが1992年に発表した「Choice and Context: Tradeoff Contrast and Extremeness Aversion(選択と文脈: 二律背反の対比と極端の回避)」という論文による。
真ん中を選びたくなる理由
- 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
- 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌
行動経済学に「損失回避性」という心理現象があります。
損失回避性=損を避けようとする心理現象のこと。
実験を行ったサイモンとトベルスキーは「3つ商品が並ぶと、この損失回避性が上手く働くため、真ん中の商品が選ばれる」と考えました。
ココがポイント
金額的に1番高いモノを選ぶと、お金を一番支払うので損した気持ちになる。しかし、1番安い商品を選ぶと、満足度が低く損した気分になる。どちらも嫌なので、真ん中を選びたくなる気持ちが強くなる。(極端回避性)
真ん中を選びたくなる松竹梅の法則・極端回避性は、単純に3つ選択肢を並べれば良いわけではありません。
松竹梅の価格の比率はどうすれば良い?
松竹梅の価格設定で1番いい比率はどれくらいなのか?
最適な価格比率
- 松(高価格)=10
- 竹(中価格)=3
- 梅(低価格)=1
- 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
- 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌
まず
高価格帯と中価格帯で価格差を大きめに出します。そうすることで、真ん中の方が金額的に安く感じやすくなります。
その価格帯でちょうど良いのが「松(高価格)=10」「竹(中価格)=3」です。
次に
中価格帯と低価格帯では価格差は大きく出さないようにします。
低価格と中価格は、品質やサービスの内容が重要になります。
「1番安い商品では満足度が低くなりそう」という感情を揺さぶることが重要になります。なので、価格差を出し過ぎるのではなく、適度な価格差が好ましいです。
- 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
- 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌
この2つを満たそうとすると、結局バランスが大事になります。
結局
- 松(高価格)=10 ≒3
- 竹(中価格)=3 ≒2
- 梅(低価格)=1 ≒1
くらいに落ち着いたというわけです。
例えば
- 誕生日ケーキで考えてみる
- 高いケーキ:5,000円
- 中のケーキ:1,500円
- 安いケーキ:500円
さきほどの「10:3:1」という価格比率を用いて、誕生日ケーキの松竹梅を考えてみます。
この並びなら、1,5000円の誕生日ケーキが圧倒的に選ばれる可能性が高いです。
さらに詳しく
この並び、まず誕生日ケーキに5,000円は高いです。すると、1,500円か500円のケーキになります。ここで、誕生日ケーキに500円の安いケーキを買うのか?という心理的な抵抗が生まれます。せっかくの誕生日に安いケーキを買うのに抵抗を覚えるので、少しだけ贅沢して、最終的に1,500円のケーキが選ばれます。
「松竹梅の法則」有名企業の例
実は、ネット大手企業の松竹梅の比率は、特徴的です。
先ほど「10:3:1」がベストな比率だと言いましたが、ネット大手の比率は違っています。
Amazonキンドルの価格比率
- Kindle:8,980円
- Kindle Paperwhite:13,980円
- Kindle Oasis:29,980円
Amazonには電子書籍を読むための専用の端末があります(Kindle)。
そのバージョンは3つあり、価格比率は「1:1.4:3」となっています。
次に
ネットフリックス(Netflix)です。
ネットフリックスの視聴プランは3つあります。
- ベーシック:800円
- スタンダード:1200円
- プレミアム:1800円
価格比率は「1:1.4:2.25」となっています。
最後に
アドビ(Adobe)です。
アドビ(Adobe)は皆さんがPDFファイルを開いたり、動画や写真を編集する時に活躍するソフトを開発しています。Youtuberとかならお世話になっている人も多いのでは?
- 一部単体プラン:980円
- 一部単体プラン:1580円
- その他単体プラン:2480円
- コンプリートプラン:5680円
価格比率は「1:1.6:2.5:5.8」となっています。
アドビ(Adobe)は製品数が多いのでホームページで載っている4つに絞ります。
ポイント
ネット企業の価格比率は「1:約1.5:2~3」程度に落ち着いている。
もちろん、IT系の企業が直感的に価格を決めているわけもないので、消費者の動向的に、この価格比率が最適だったと考えられます。
みなさんも、商品やサービスを売り出すなら、松竹梅の法則・極端回避性を意識してみては?
「松竹梅の法則」の他にも、消費者の選択行動を買える行動経済学の理論があります。よければこちらも読んでね!
-
フレーミング効果「表現で選択を変える」マーケティング・行政の事例
あなたの選択は操(あやつ)られていると言われたら? 表現だけで人の感じ方は変わります。 コップに水がもう半分しかない コ ...
続きを見る