行動経済学

【松竹梅の法則】極端回避の心理で選択を誘導する方法

2019年8月16日

人は極端なものを嫌う生き物。

そんな特性を利用した「松竹梅の法則」とは?

  • 真ん中を選びたくなる心理
  • 金額の設定はどうすれば良い?

商品を売り込む時にどうすれば良いのか?を行動経済学・心理学から解説!

松竹梅の法則・極端回避性とは?

 

松竹梅の法則・極端回避性

選択肢が3つある状態だと、真ん中の選択肢を選びやすくなる心理現象のこと。

 

商品が3つあると、一番安い商品ではなく、一番高い商品でもなく、真ん中の商品を選びたくなるのが「松竹梅の法則(極端回避性)」です。

 

北国宗太郎
「松竹梅の法則」も有名な実験があるんだよね
うん。ミノルタカメラの実験を紹介するよ!
牛さん

 

有名な「ミノルタカメラの実験」

(Wikipediaより・ミノルタカメラ=Minolta X-700)

「ミノルタカメラ」は、かつて日本に存在したミノルタ㈱が発売していたカメラのこと。ミノルタは、2003年に写真フィルムメーカー㈱コニカと合併後、コニカミノルタ㈱として現在に至る。既にカメラ事業は廃止済。

 

  • 2つの価格帯のカメラを販売する
低価格
(ミノルタX-370)
中価格
(ミノルタ3000i)
価格 166.99 ドル 価格 239.99 ドル
選択率 50% 選択率 50%

 

北国宗太郎
まずは、低価格帯と中価格帯のカメラで比べるんだね
うん。2つで比べると、選ばれる確率が50%ずつだったよ。
牛さん

 

2つだけで比べると、選択される割合に特徴は出ませんでした。

 

次に

  • 3つの価格帯のカメラを販売する
低価格
(ミノルタX-370)
中価格
(ミノルタ3000i)
高価格
(ミノルタ7000i)
価格 166.99 ドル 価格 239.99 ドル 価格 466.99 ドル
選択率 22% 選択率 57% 選択率 21%

 

さきほどの選択肢に高価格帯のカメラを加えると、選択率が大きく変化しました。

 

ポイント

高価格帯のカメラを加えるだけで、真ん中のカメラが選ばれる割合が高くなった

この実験は、Simonson & Tverskyが1992年に発表した「Choice and Context: Tradeoff Contrast and Extremeness Aversion(選択と文脈: 二律背反の対比と極端の回避)」という論文による。

 

北国宗太郎
どうして真ん中の価格帯が選ばれるのかな?
大きく2つの理由があるよ。
牛さん

 

真ん中を選びたくなる理由

  1. 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
  2. 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌

行動経済学に「損失回避性」という心理現象があります。

損失回避性=損を避けようとする心理現象のこと。

 

実験を行ったサイモンとトベルスキーは「3つ商品が並ぶと、この損失回避性が上手く働くため、真ん中の商品が選ばれる」と考えました。

 

ココがポイント

金額的に1番高いモノを選ぶと、お金を一番支払うので損した気持ちになる。しかし、1番安い商品を選ぶと、満足度が低く損した気分になる。どちらも嫌なので、真ん中を選びたくなる気持ちが強くなる。(極端回避性)

 

真ん中を選びたくなる松竹梅の法則・極端回避性は、単純に3つ選択肢を並べれば良いわけではありません

 

松竹梅の価格の比率はどうすれば良い?

 

松竹梅の価格設定で1番いい比率はどれくらいなのか?

 

最適な価格比率

  • 松(高価格)=10
  • 竹(中価格)=3
  • 梅(低価格)=1

 

北国宗太郎
どうして、この価格の比率が良いの?
さっきの損失回避の話が関係しているよ。
牛さん

 

  1. 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
  2. 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌

まず

高価格帯と中価格帯で価格差を大きめに出します。そうすることで、真ん中の方が金額的に安く感じやすくなります。

その価格帯でちょうど良いのが「松(高価格)=10」「竹(中価格)=3」です。

 

次に

中価格帯と低価格帯では価格差は大きく出さないようにします。

低価格と中価格は、品質やサービスの内容が重要になります。

「1番安い商品では満足度が低くなりそう」という感情を揺さぶることが重要になります。なので、価格差を出し過ぎるのではなく、適度な価格差が好ましいです。

 

北国宗太郎
牛さん、これって結局「1:2:3」だよね?
気づきましたね・・。
牛さん

 

  1. 高価格商品だと、高い金額を払うのは嫌
  2. 低価格商品だと、満足度が低くなりそうで嫌

この2つを満たそうとすると、結局バランスが大事になります。

結局

  • 松(高価格)=10 ≒3
  • 竹(中価格)=3 ≒2
  • 梅(低価格)=1 ≒1

くらいに落ち着いたというわけです。

 

例えば

  • 誕生日ケーキで考えてみる

  • 高いケーキ:5,000円
  • 中のケーキ:1,500円
  • 安いケーキ:500円

さきほどの「10:3:1」という価格比率を用いて、誕生日ケーキの松竹梅を考えてみます。

この並びなら、1,5000円の誕生日ケーキが圧倒的に選ばれる可能性が高いです。

 

さらに詳しく

この並び、まず誕生日ケーキに5,000円は高いです。すると、1,500円か500円のケーキになります。ここで、誕生日ケーキに500円の安いケーキを買うのか?という心理的な抵抗が生まれます。せっかくの誕生日に安いケーキを買うのに抵抗を覚えるので、少しだけ贅沢して、最終的に1,500円のケーキが選ばれます。

 

北国宗太郎
確かに、こうやってみると「10:3:1」って調度いい。
商品を3つ並べる時は、この価格比率を意識してみてね。
牛さん

 

「松竹梅の法則」有名企業の例

 

実は、ネット大手企業の松竹梅の比率は、特徴的です。

先ほど「10:3:1」がベストな比率だと言いましたが、ネット大手の比率は違っています。

 

Amazonキンドルの価格比率

  • Kindle:8,980円
  • Kindle Paperwhite:13,980円
  • Kindle Oasis:29,980円

Amazonには電子書籍を読むための専用の端末があります(Kindle)。

そのバージョンは3つあり、価格比率は「1:1.4:3」となっています。

 

次に

ネットフリックス(Netflix)です。

 

ネットフリックスの視聴プランは3つあります。

  • ベーシック:800円
  • スタンダード:1200円
  • プレミアム:1800円

価格比率は「1:1.4:2.25」となっています。

 

最後に

アドビ(Adobe)です。

 

アドビ(Adobe)は皆さんがPDFファイルを開いたり、動画や写真を編集する時に活躍するソフトを開発しています。Youtuberとかならお世話になっている人も多いのでは?

  • 一部単体プラン:980円
  • 一部単体プラン:1580円
  • その他単体プラン:2480円
  • コンプリートプラン:5680円

価格比率は「1:1.6:2.5:5.8」となっています。

アドビ(Adobe)は製品数が多いのでホームページで載っている4つに絞ります。

 

北国宗太郎
牛さん、凄い法則を見つけそう・・!
うん。ネット企業の「松竹梅の比率」気づいたかな?
牛さん

 

ポイント

ネット企業の価格比率は「1:約1.5:2~3」程度に落ち着いている。

 

もちろん、IT系の企業が直感的に価格を決めているわけもないので、消費者の動向的に、この価格比率が最適だったと考えられます

みなさんも、商品やサービスを売り出すなら、松竹梅の法則・極端回避性を意識してみては?

 

「松竹梅の法則」の他にも、消費者の選択行動を買える行動経済学の理論があります。よければこちらも読んでね!

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