ゲーム理論

【囚人のジレンマとは?】日常生活に潜むゲーム理論を具体例を使って解説!

2019年5月4日

ゲーム理論でもっとも有名な「囚人のジレンマ」

囚人のジレンマについて分かりやすく解説!

現実の世界で「囚人のジレンマ」に陥った例も紹介します。

囚人のジレンマとは?

 

囚人のジレンマとは

お互いに協力する方がメリットがあると分かっていても、協力できなくなるジレンマ。

「相手を信用できない」「相手が裏切ると自分だけ損をする」などの状況では、裏切る方が安全で得をします

このように1人1人が合理的に行動すると、全体で見ればもっと得をする結果があったはずなのに実現できなくなります

囚人というのは、このジレンマを説明するのに登場するのが”囚人の自白”に関する話だからです。

 

北国宗太郎
囚人のジレンマ聞いたことがあります。
具体的な説明をしてから、実例も紹介します!
牛さん

囚人のジレンマ

  • 囚人A
  • 囚人B

いま2人の囚人がいます (おそらく共犯)。
担当の検事が2人の囚人へ司法取引を持ち掛けました

 

検事

普通なら懲役5年になる。2人とも黙秘したら、証拠不十分で、2人とも懲役2年だ。でも君だけが自白してくれたら懲役0年で釈放してあげよう

 

ただし

1人だけが自白したら釈放(懲役0年)するが、黙秘してた方は懲役10年

2人とも自白したら2人とも懲役5年

 

北国宗太郎
頑張って2人とも黙秘を目指したいね
でもそれは出来ないんだ
牛さん

ココがポイント

仮に2人とも黙秘できれば懲役2年です。しかし、別室で相手と連絡が取れない状況で、裏切らないことが出来るでしょうか?もし自分だけ黙秘して相手が自白したら懲役10年になってしまいます。

 

この司法取引では囚人A・囚人Bも自白せざるを得ないのです。

これまでの条件を表でまとめてみます。(ゲーム理論では利得表と呼びます。)

囚人B (自白) 囚人B (黙秘)
囚人A (自白) (懲役5年, 懲役5年) (懲役0年,懲役10年)
囚人A (黙秘) (懲役10年,懲役0年) (懲役2年,懲役2年)

(懲役〇年,懲役〇年)左側が囚人A右側が囚人Bの懲役

 

利得表の見方

囚人Aの立場で考えてみましょう!

囚人Aは「自白」「黙秘」のどちらかで迷っています。

 

step
1
「囚人Bが自白」した場合

囚人B (自白) 囚人B (黙秘)
囚人A (自白) (懲役5年, 懲役5年) (懲役0年,懲役10年)
囚人A (黙秘) (懲役10年,懲役0年) (懲役2年,懲役2年)

囚人Bが自白した場合、囚人Aは自白した方が懲役5年で済みます。

 

step
2
「囚人Bが黙秘」した場合

囚人B (自白) 囚人B (黙秘)
囚人A (自白) (懲役5年, 懲役5年) (懲役0年,懲役10年)
囚人A (黙秘) (懲役10年,懲役0年) (懲役2年,懲役2年)

囚人Bが黙秘した場合、囚人Aは自白すれば懲役0年です。

 

step
3
最終的な囚人Aの行動は?

囚人B (自白) 囚人B (黙秘)
囚人A (自白) (懲役5年, 懲役5年) (懲役0年,懲役10年)
囚人A (黙秘) (懲役10年,懲役0年) (懲役2年,懲役2年)

囚人Aは、囚人Bが自白しようが黙秘しようが「自白する」ほうが得をします。

 

囚人Aは自白するわけですが、囚人Bも同じ行動をとります。その結果、2人とも黙秘をするというベストな結果を得られなくなりました。これが囚人のジレンマです。

 

さらに詳しく

囚人A・囚人Bは自分の中の最適な選択肢を選びました。この各個人が最適な選択肢を選んだときに得られる結果を「ナッシュ均衡と言います。一方で、2人とも黙秘したほうが全体としては良い結果になります。全体でみた時に最適な状況を「パレート最適と言います。囚人のジレンマは「ナッシュ均衡」と「パレート最適」が一致しない状況で発生します。

囚人のジレンマで登場する論点

 

「囚人のジレンマ」の1番オーソドックスな話をまとめましたが、少しだけ深堀します。

 

1回だけか、無限に繰り返すか

囚人のジレンマは「1回限りの場面」を想定しています。1回限りの場面では、基本的に裏切ったほうが得をします。

しかし、この問題を永遠と繰り返すとしたらどうでしょうか?

 

ココがポイント

ゲームが無期限で続くと分かると、人は協調的な行動を取る可能性が出てくる。

 

例えば

囚人の「自白するか」「黙秘するか」を100回程度繰り返します。

途中まで2人とも自白していましたが、途中で協力したほうがお互いに得をすることが分かってきます。

お互いに黙秘をするメリットを確認できれば協調的な行動を取れるのです。

 

共有地(コモンズ)の悲劇

囚人のジレンマは「1対1」のようなケースを想定していますが、もっと大人数が関わることで発生する「共有地の悲劇(コモンズの悲劇)」というものがあります。

経済学で登場する「コモンプール財(準公共財)」で引き起る現象。詳しくはこちら⇒公共財とは?

 

例えば

  • 海などのみんなが使える資源を考えてみます

漁獲量をみんなで守れば、資源が枯渇することなく永続的に漁ができます

しかし、誰かがルールを破ったりすると、みんながルールを破ったほうが得をする状況になっていきます。こうして漁獲量が守られず、資源が枯渇してみんなが損をするという話です。

※家畜に食べさせる牧草地でも同じ話があります。

 

このような「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」に当てはまる例として有名なのがフリーライダー問題です。(詳しくは公共財ゲームを参照してね!)

【公共財ゲームとは?】人を罰する快感が社会を守る理由

漫画などで登場する「公共財ゲーム」 最近では「ライアーゲーム」「賭ケグルイ」などでも公共財ゲームと称したゲームが登場して ...

続きを見る

 

みんなが税金を支払っている時はいいけれど、ズルをして税金を支払わない人ばかりになると社会が混乱していきます。

 

北国宗太郎
「囚人のジレンマ」って奥が深いんだね
そうだね。それじゃあ、次からは現実にあった話を紹介するよ!
牛さん

囚人のジレンマに関わる話・具体例

 

現実の世界で見られる「囚人のジレンマ」を見ていきましょう!

まずは、皆さんの記憶に残っている牛丼の話からです。

 

step
1
牛丼の値下げ競争

  • 吉野家
  • 松屋
  • すき家

と牛丼の3大チェーンがあります。

牛丼業界では、激しい値下げ競争が繰り広げられました。

 

牛丼の値下げ推移

2010年前後から、牛丼価格は200円台に突入するのが当たり前になっていました。

  • 2009年 すき家:330円→280円
  • 2012年 松屋:320円→280円
  • 2013年 吉野家:380円→280円

2013年には3大チェーンで、牛丼一杯が280円になります。

 

さらに詳しく

もともと牛丼は400円くらいが相場でしたが、2000年代に入り値下げ競争へ突入します。

一時期200円台に突入してから、アメリカのBSE問題(牛の感染病が広がった)で牛丼価格が300円台後半に戻っていました。そして2009年あたりから再度競争が激化し始めたのです。

 

この価格競争は「囚人のジレンマ」です。

 

注意ポイント

消費者は安い牛丼屋さんに集まっていきます。

なので、周りが値下げをしたら歩調を合わせます。しかし、安くなりすぎると企業側の収益が悪化して消耗戦となります。

消耗戦と分かっていても、価格を下げないとお客さんが周りに取られるジレンマに陥ったのです。

 

この牛丼業界の価格競争は、牛丼大手3社が疲弊するだけの結果を招いて収束しました。今では300円台後半が通常の値段となっています。

 

step
2
国家間の軍備競争

 

アメリカ・ロシアが軍備競争をしているなか、どちらかが軍備縮小をするのは難しいのが現実です。

アメリカが軍備を縮小しても、ロシアが拡大していけば安全保障上のリスクになります。

これも「囚人のジレンマ」です。

 

この問題は国の存亡にかかわるため、絶対に裏をかかれてはいけません。そうなると、もう軍備縮小は出来ないのです。

 

ポイント

2018年10月にはトランプ米大統領が、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱すると表明しました。

冷戦時代から、アメリカ・ロシア間では軍備競争の折り合いがつかずに、こうした問題を繰り返しています。

 

step
2
CO2削減の国際的な動き

(Wikipediaより・スモッグに覆われる台湾)

 

地球温暖化の流れから、温室効果ガス(CO2)の削減が話題になっています。

これも一種の囚人のジレンマがあります。

 

企業や国は、経済発展とCO2削減のバランスを取らないといけません。しかし、どこかがズルをしてCO2削減に協力しなければ意味が無くなってしまいます

 

実際に

2017年 トランプ米大統領は、地球温暖化対策の推進を目指したパリ協定からの離脱を表明しました。

 

北国宗太郎
これだとみんなが追随しちゃうね・・
そうでもなかったんだよ。
牛さん

 

これまでとは違って他国(中国・インドなど)は協定から離脱しませんでした。

更に、同じアメリカ国内でも、カリフォルニア州・ワシントン州・ニューヨーク州や、アップル・グーグル・マイクロソフトなどの民間企業も協定を支持しました。

 

囚人のジレンマに陥らなかった理由

行動経済学の分野などでは登場する話ですが、人は「社会的なルールを守らない人・組織を罰するように脳が設計」されています。

 

これは「神経経済学(ニューロエコノミクス)」という分野で証明された話です。

【神経経済学とは?】行動経済学との違い、なぜ脳科学を応用するのか

「神経経済学(Neuroeconomics)」という分野をご存知でしょうか? 経済学と脳科学を融合した新しい分野です。 ...

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他にも

「公共財ゲーム」から分かる通り、ルールを守らない人に対して、人は自分が損をしても罰するようになります

 

このCO2削減の話は、まさにそうした人の仕組みが働いた結果だと言えます。

 

囚人のジレンマに陥らないために

囚人のジレンマに陥ると、最終的にみんなで協力したほうが良かった・・。という結末を迎えてしまいます。

  • ビジネス
  • 共有の財産
  • 税金
  • 軍備競争
  • 環境問題

このような話では「囚人のジレンマ」が良く登場します。私たちはどのように対処するのが良いでしょうか?

 

囚人のジレンマに陥らないためには、重要なことが2つあります

  1. ゲームが1回限りではないことを強調する
  2. 人の社会性(感情)に訴えて、みんなで監視し合う

 

途中で紹介しましたが、「1回限りの場面」だと裏切る方が得をすることが多いため、囚人のジレンマに陥ります。

 

ポイント①

ビジネス・環境問題は1回限りの話ではありません。人が生き続ける限り存在します。

そうした永続的な側面を強調して、みんなで協力したほうが社会全体の得になることを訴えることが重要です。

 

それでも・・

抜け駆けをして自分だけ得をしようとする人もいるでしょう。そうした人が出ると、追随する人が出てきます

 

ポイント②

社会的に協力する必要があるような場合は、周りの監視が重要です。罰則の仕組みを作り、抜け駆けする人への抑止力を高めましょう

私たちの脳は、ルールを守らない人へ厳しくなるように作られています。囚人のジレンマに陥らないためには、本能的な部分への訴えかけも重要になるでしょう。

 

「囚人のジレンマ」を克服することで得られる利益もあります。囚人のジレンマに陥りそうになったら参考にしてみてくださいね!

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