これから就職・転職しようとしている人にとっての悩みどころ。
仕事の「やりがい」と「給料(年収)」のどちらを取れば良いのか?
行動経済学で「答え」を解明!
仕事は「やりがい」「給料(年収)」どちらを取るべきか?
給与とやりがいのどっちが良いか?
注意
ここからは、「給料(年収)」「やりがい」のどちらを選んだ方がより満足感を得られるのか、という基準で考えていきます。
結局、周りがどうこうよりも本人が満足して仕事をする方が幸せです。
行動経済学とは、経済学と心理学を合わせた分野。近年はノーベル経済学賞を受賞するなど、ビジネスにも応用されている。
年収と幸せの関係
この問題を考えるときに重要な話があります。
それが、給料(年収)と幸せの関係です。行動経済学の権威であるダニエル・カーネマン教授がある研究をしました。
年収が上がると幸せなになるのか?
(https://www.pnas.org/content/107/38/16489 より)
2009年、アメリカの45万人を対象に電話インタビューが行われました。その回答を分析して分かったことは次の通りです。
ポイント
年収が800万円くらいまでは、年収と比例して幸福感が増していきます。
しかし、日本円なら年収800万円以上になると、幸福度がほぼ変わらないのです。
この研究結果は、2010年に発表された「High income improves evaluation of life but not emotional well-being (高収入は人生の評価は上げるが幸福感は向上させない)」という論文に載っています。
分岐点は年収約800万円
この研究結果は、日本でも話題になりました。
その影響もあって、日本では800万円~1000万円程度以上あれば幸福感は変わらないという解釈で広まっています。
ちなみに
グラフをよく見ると、「ストレスを感じていない」という項目は4万ドル(約400万円)を超えると、横ばいになっています。
更に、4万ドル(約400万円)を超えると「幸福さ」の伸び具合が鈍くなります。
つまり
- 年収100万円~年収400万円程度 ⇒ 幸福感の伸びが高い
- 年収400万円~年収800万円程度⇒ 幸福感はそれなりに伸びる
- 年収800万円超 ⇒ 幸福感は基本的に変わらない
年収によって「満足感」は変わります。「やりがい」と迷った時は、まず自分の年収と、就職先・転職先の年収を考えてみましょう。
仕事の「やりがい」の重要性
行動経済学の火付け役であるダン・アリエリー教授が行った実験です。
この実験は「不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」」に掲載されています。
レゴブロック実験
- レゴブロックをどれだけ組み立てるか?
レゴブロックでキャラクター(バイオニクル)を1体組み立てるごとに、報酬がもらえるという実験です。
1体につき200円(2ドル)貰えます。1体作るごとに報酬の金額が11セント(10円程度)下がっていきます。
レゴでキャラクターを何体作ることが出来るのか?を調べました。
2つのグループ
- 普通に組み立てるグループ
- 組み立てたキャラクターが解体されるグループ
さらに詳しく
2の組み立てたものが解体されるというのは「意味のない仕事」を表しています。普通に考えて、どうせ解体されるなら組み立てる必要なんてないですよね?この実験から、お金のために気持ちを割り切ってどれくらい組み立てられるか?を調べることが出来ます。
実験の結果
普通のグループの平均は10.6体のキャラクターを組み立てました。貰った報酬は平均で14ドル40セント(約1500円くらい)です。
しかし、作ったキャラクターが解体される(意味のない仕事をしている)グループは、平均して7.2体のキャラクターを組み立てました。受け取った報酬の平均は、11ドル52セント(約1200円くらい)です。
まとめると・・
- 1 普通のグループ ⇒ 10.4体
- 2 意味のない仕事をしているグループ ⇒ 7.2体
ポイント
仕事の意味(やりがい)は、とても重要。
意味がないと感じると、お金のために割り切ることも出来ない傾向がある。
ちなみに
この実験では、レゴブロックがどれくらい好きか?という観点でも分析をしています。
2の「組み立てたキャラクターが解体されるグループ」では、レゴブロックが好きとかは全く関係ないことも分かりました。
1の「通常のグループ」では、レゴが好きな人の方が作るキャラクターの数が多かったです。しかし、2の「意味のない仕事をしているグループ」では全く相関関係がありませんでした。
「給料(年収)orやりがい問題」は自分の年収で答えが変わる
「給料(年収)」「やりがい」のどちらが良いのか?を考えるうえで、重要となる話を2つ紹介してきました。
さて「給料(年収)」「やりがい」どちらも大切というオチはあまりにも雑なので、ある程度のパターンを考えてみましょう。
step
1年収が400万円以下くらいまで
年収が400万円に満たない人は、仕事のやりがいを求めるよりも、給与の額を意識するのが良いと思います。(あくまで重視するのが良いのであって、絶対視ではありません。)
でも「やりがい」も重要ではないの?
確かに「やりがい」も重要です。しかし、年収が400万円に満たない人が給料を意識する方が良い理由が3つあります。
1つ目
最初にお話したこちらのグラフの通りだからです。
年収が400万円までは、収入が上がれば上がるほど、幸福感も増していきます。
2つ目
あなたのが想像している「やりがい」は永遠と続くものではないからです。
これも行動経済学の分野で有名な話があります。
-
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人は同じ刺激を受け続けると、反応が鈍くなっていきます (感応度逓減性)。
それは感情も同じです。あなたが想像している「やりがい」は、間違いなく薄れていきます。
つまり、同じ「やりがい」を感じ続けたければ、常に新しい刺激を求め続ける必要があるのです。
あなたは、そのやりがいを、常に求め続けることが出来ますか?
やりがいが薄れてくると、次第に給料(年収)に目が行きます。
そして、3つめ
次第に「給料(年収)」が低いことを嘆(なげ)くようになる。
若い人は、最初に「やりがい」を求めて、自分がやりたいと思う仕事を目指します。
しかし、その仕事では給料が低かったのです。最初はやりがいを持って仕事をしていましたが、次第に忙殺されていきやりがいも感じなくなりました。
そして・・。
嘆く男性
給料(年収)がもっと上がればな・・・。
最初に「やりがい」を重視していたはずなのに、給料(年収)が低いことを嘆くようになります。
ポイント
若い時は「やりがい」とかを重要視しがちです。でも、年収200万円とか年収300万円の生活は、今の時代とても苦しいです。
もし、それくらいの年収だったなら、多少は給料の大きさを意識してみてください。
step
2年収が400万円~年収800万円くらいまで
多少は生活にもゆとりがある?人かと思います。ただし、子どもがいるとかだと相変わらず苦しいかもしれませんが。
ポイント
年収400万円~年収800万円の人たちは、年収が上がっても幸福感の伸びは鈍くなります。
なので、多少なりとも「やりがい」を求めるのも悪くありません。
ただし、やりがいを求めて転職した結果、年収が数百万円も下がるとかだと危険です。
ココに注意
人は、生活水準を一気に下げるのが苦手な生き物なので、収入が一気に減ると痛い目を見ることもあるので注意していください。
なので年収が数十万円下がるけど、やりがいがある仕事を目指すとかでしたら、無難で失敗しずらいかと思います。
高給取りの人が「やりがい」を求めて転職した結果、年収が800万円⇒500万円になった、という話があります。
これまでの生活水準が高くなければ問題ありませんが、それなりに出費が多い生活をしていたなら注意してください。
生活が破綻しない程度に、冒険したり、挑戦するのが良い
step
3年収800万円以上の人
それ以上、お金を求めても幸福感は上がりません。
そこまでたどり着いたら、仕事のやりがいとか、他の事に目を向けてみるのが良いかと思います。
付け加えると年収1000万円以上になれば、所得税でがっつり持っていかれるので可処分所得(自由に使えるお金)は全然増えません。
もちろん、年収が一気に下がり過ぎると、さっきと同じ問題が発生するのでそこだけ注意してください。
筆者余談
本当なら「給料(年収)」「やりがい」のどちらも欲しいところですが、世の中そうはいきませんよね。
さて、行動経済学の話を持ち出してどっちがいいのか?を考えましたが、注意してほしいことがあります。
あなたの人生です、後悔しないように、自分で考えて決断してください。
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