行動経済学

【理由付け行動と正則条件の破れとは?】人はどうして不合理な行動をするのか?

2018年9月2日

ここまで、行動経済学では「プロスペクト理論」・「メンタルアカウンティング(心の会計簿)」などの有名な話がありますが、今回はそうした理論を総括したお話です!

普段生活していると、「〇〇だから〇〇」「今日は晴れているから洗濯する」みたいなものってありませんか?

実は、行動経済学はこうした人の行動原理を考えて理論が作られています。でわ見ていきましょう!

行動経済学が確立した「理由に基づく選択モデル」とは?

人の行動は、効用最大化とは異なって「視点」と「理由づけ」で決まる (=理由に基づく選択モデル)。

効用最大化とは「人は自分の得になることしかしない」という考え方のこと。

 

北国宗太郎
今までの経済学は「効用最大化」という考え方が主流だったんだよね?
そうだよ。行動経済学はこれに異議を唱えたんだ。
牛さん

 

人の行動 (意思決定) はどのように決まるのか?

行動経済学の主張

人は「自分が選択した理由を、簡単に説明できるもの」を選んで行動する。

「理由が簡単に説明できること(理由づけ)」が重要!

 

具体的な例を挙げると・・?

何かを選ぶ時は「長所に注目する傾向」
何かを拒否する時「短所に注目する傾向」

といった事が言えます!

 

北国宗太郎
何かを買う時に「これ良い!」って思ったものを買うね
ピーマンを残す時は「苦い」からって短所に注目しているよ
牛さん

 

ポイント

つまり、こうした感じで「良いところがあるから受け入れる」「ダメな部分があるから拒否する」という感じで行動したほうが、人の脳への負荷が少ないわけです。

 

ちなみに「フレーミング効果」は上記の理由づけに基づいて生じていると言えます。

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理由付け行動の具体例① 正則条件の破れ

首尾一貫しないこと。後から加わった理由付けにより意思決定が変化すること。

 

例えば

お肉が半額だったのでスーパーに行きましたが、売り切れていました。しかし、せっかくスーパーまで来たので魚を買いました

⇒ 肉が無くなっていたという後から加わった理由で意思決定が変化した言えます。

重要!

「肉を買えないのにスーパーに来た」では、筋が通ってない事になるので「肉はないけど、魚を買いにスーパーに来た」と筋を通そうとして(理由づけしようとして)意思決定が変化しました。

 

こうした、当初の目的とは関係なく「せっかくスーパーに買い物に来たんだから何かを買わなきゃ(理由づけ)」的な行動は「正則条件の破れ」の代表例です。

 

「肉を買いにスーパーに行ったのに、何も買わなかった」となると脳への負荷が大きくなってしまいます。

自分の行動の理由を説明するのに、エネルギーを要するので、魚を買ってロジックをすり替えた。というわけです。

 

ポイント!

最初に述べたように「人は自分が選択した理由を簡単に説明できる」ほうが好きなので、スーパーに行った理由を簡単に説明できるように行動が矯正されました

 

こんな感じで効用最大化 (損得勘定)という考え方では、上手く説明がつきなかったのが正則条件の破れです。

効用最大化に沿って意思決定が決まらない例をもう1つ紹介!

 

理由付け行動の具体例② 公正の経済学(公正概念)

多くの人の意思決定を調整する役割がある「理由付け」として「公正概念」があります

「公正概念」~ 悪いことはしない。ポイ捨てしない。ルールは守るなど。

 

北国宗太郎
公正概念と理由づけって何が関係あるの?

 

ここで公正概念が関係する理由は、人のある特徴に影響します。

 

とても重要!

大昔の話です。人は個人で動くよりも、団体(組織)で動いたほうが効率が良く、ある程度の群れで過ごしてきました

しかし、群れで過ごすと問題が発生します。

それはズルをするやつがいると群れが効率よく機能しないことです。

 

例えば

誰かが他の人のものを盗むとか、誰かを殺してしまったりすると、

普段の生活よりも、集団の中で自分が盗まれないか?殺されないか?などを気にしなければならず、効率性が失われていきます。

そこで、私たちの脳には「ズルをするやつを罰することで快楽を得る」という特徴が生まれました。

ズルをする人をみんなが罰するようになれば、自然とズルする人は減りますよね?

「人を罰することで快楽を得る」というのは脳科学の実験からも分かっている事実です。

 

この特徴は、私たちの祖先が集団で過ごしていく中で重要な役割を果たしてきました。そして、私たちにも引き継がれています。

ポイント

人は、他人のアンフェアな行動(ずる)に対しては、自分が損しても(費用を払っても)罰を与えるという強い心理がある

 

北国宗太郎
話が壮大になってきたね!
ここから理由づけの話に繋がるよ
牛さん

 

誰かがズルをしたと感じたときに「人は損得抜きに相手を罰するような行動をする」

この特徴は「人が必ずしも合理的な行動をしない」原因の一つです。

ここからは「独占企業の価格つりあげ問題」を見ていきましょう!

 

独占企業の価格つり上げ問題

独占状態の企業が商品の価格を上げる時に、反発が起きる時とそうではない時があるがその違いは何か?

例えば材料費が値上がりしたなどの場合は、価格を上げても受け入れられる事が多い。

しかし、そうではない時は反発がよく起こる。大雪の日にしゃべるの値段を上げるなど。

⇒ここで分かることは、価格上昇が受け入れられるかは「経済的な文脈(その時の理由)」によって変わる!

社会的に認められないことをしてはいけない = 損得勘定より理由づけ(どうして値段を上げるのか)が重要という感じ。

 

まとめ!

公正概念と理由付けの話をまとめるとこうなります。

企業と消費者は「社会的に認められているのか?」を常に考えながら行動するので、必ずしも経済的に合理的な行動は取らない

一見すると非効率的に見えるが、みんなが公正概念に従って行動したほうが社会的な便益は大きい。

もし。ズルをするやつがいた場合、みんなが損をしてでも罰してくる。

このような話から、人は「公正かどうか」を理由にして意思決定している場合が多い。

 

北国宗太郎
たしかにズルをすると怒られることが多い
こうした経済社会がうまく回るためにも理由付け行動は大切なんだよ
牛さん

 

特に、今までの経済学では「公正概念」のせいで経済が不効率になっていると考えられていました

しかし「理由付け行動」の代表例である公正概念があるからこそ、私たちの社会は上手く回っているのです。

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アダム・スミスのお言葉

Adam Smith (16 June 1723 - 17 July 1790 ) was a Scottish economist, philosopher and author as well as a moral philosopher, a pioneer of political economy.
Original edition from my own archives
Source : Illustriertes Konversations Lexikon 1878

 

公正概念などは、独占市場(そのサービスを提供している会社が一つしかない状況)では、簡単に用いることが出来ます。(ずるをしているのかを判断しやすい)

 

注意ポイント

しかし、競争市場(私たちが普段暮らしている社会)では、何が良くて悪いのか(フェア・アンフェア)を判断しづらいです。

 

そんな社会で何が必要なのかを、経済学の祖であるアダム・スミスはこう言っています。

(そうした社会では) 公正概念の多層的機能が必要になる。

公正概念の多層的機能=共感

 

北国宗太郎
共感ってアバウトだね・・。
アバウトだけど ”相手に共感できるか・出来ないか” で人の行動が変わるのも事実だよ。
牛さん

 

  • 相手に共感できるから「手伝う・許す」
  • 相手に共感できないから「批判する」

などの行動は立派な理由付け行動の代表例と言っていいでしょう!

 

ここまで理由付け行動の例を見てきました!

人の行動は損得だけではないことが分かったかと思います。

 

最後は、共感できるかで行動が変わるという理由付け行動の例も紹介しました!

すこしアバウトな世界だけど、人の行動って結構アバウトに決まっているんだってことが分かってもらえれば嬉しい限りです!

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