行動経済学

固着性(係留と調整)ヒューリスティックの例を紹介!最初の情報で変わる行動!

2019年6月7日

固着性ヒューリスティック(係留と調整ヒューリスティック)ってどんな例があるの?

行動経済学でも重要となる固着性(係留と調整)ヒューリスティックについて、身近な例を紹介&解説していきます!

 

固着性ヒューリスティックとは?

初めての経験・始めの情報に影響を受けて物事を判断する現象のこと。途中の経験や情報は、最初の判断を修正するために使われることが多くなる。

初恋の人を引きずる

 

学生時代に恋したあの人、大人になった今でも引きづっている・・。

あなたもそんな一人ではありませんか?

 

北国宗太郎
初恋の人って、その後の恋愛観とかに影響を与えるよね
昔好きだった子に、尾を振ってたのが懐かしい
牛さん

 

例えば初恋の人と結ばれたけど、最終的に分かれてしまった経験がある人は、その後に付き合う相手の特徴に影響を及ぼすかもしれません

  • いい思い出だった人は、初恋の人の雰囲気を追い求める
  • 悪い思い出だった人は、初恋の人と違う雰囲気の人を好きになる

いい思い出なら、その後の恋愛は初恋が基準になり、それと近いものを求めます

初恋が悪い思い出なら、初恋の時とは全然違う恋愛をしていこうと考えるかもしれません。

 

ポイント

このように、初めての経験が、後の行動に影響を与えるのが固着性ヒューリスティック(係留と調整)の特徴の1つです。

 

初めての経験で嫌な思いをする

例えば、初めてのスキーで、雪山から転げ落ちてケガをしました。それ以来、スキーは危ないモノ、苦手なモノという印象を持ってしまいます

ここで重要なのは「初めてスキーをしたときに」という点です。

 

北国宗太郎
気持ちはわかるけど、初めての経験ってそんなに重要なの?
最初の情報が、その後の行動や判断に大きな影響を与えるのは間違いないよ。
牛さん

 

この話に関連した、有名な実験があるので紹介します。

 

国連に参加しているアフリカの国

 

ヒューリスティックの理論をまとめたトベルスキーとカーネマンは、次の実験を行いました。

 

有名な実験

100名ほどの人々を2つのグループに分けて質問をします。

国連に参加している国で、アフリカ諸国が占める割合は何%ですか?

 

片方のグループには「45%より多いか少ないか」と聞きます。

もう片方には「65%よりも多いか少ないか」と聞きます。

 

実験の結果

45%という数字を出されたグループの方が、65%の数字を出されたグループよりも割合を少なく見積もる傾向があったのです。

 

北国宗太郎
これが固着性ヒューリスティックというわけだね
うん。最初に提示された45%という基準につられて回答をしたんだ
牛さん

 

ポイント

最初に提示された情報が基準となり、その後の回答に影響を与える心理現象を「アンカリング」と言います。

固着性ヒューリスティック(係留と調整)は、アンカリング効果の影響から発生するヒューリスティックだと言えます

 

値引きの表現

ショッピングをすると、30%OFFといった表現をよく見かけるかと思います。

10,000円が今なら30%OFF!

 

ちなみに10,000円の30%OFFは7,000円です。

 

もしも

最初から7,000円と紹介されていたら、あなたはどう感じますか?

 

北国宗太郎
お得感がない気がする
最初の10,000円がキーになっているよ
牛さん

 

  • 10,000円が30%OFFで7,000円!
  • 7,000円

「10,000円が30%OFFで7,000円」の方がお得感があるのは、最初の10,000円という情報がアンカリングの役割を果たしているからです。

 

ポイント

最初に与えられた金額が基準になり、割引後の金額にお得感を感じる。

どのような情報を最初に与えるかで、消費者の購買意欲が変わったりするので、固着性ヒューリスティック(係留と調整)は、ビジネス・マーケティングの世界では重要な役割を果たします。

 

ココに注意

ただし、値引き前の金額で販売した期間が2週間未満で「10,000円が今なら7,000円!」という割引表現を使うのは景品表示法に違反します。割引表現が法律に反していないか確認しましょう。

 

旅行で無駄遣いを減らす

お金にまつわる話で面白い話があります。

あなたはフランスに旅行へ行こうと考えています。

 

予算をどのように決めるか

  1. 予算は20万円からスタートして、必要なお金を足していく
  2. 予算の上限を60万円として、要らないものを引き算していく

じつは、②で予算を決めるほうが、お金をたくさん使う傾向にあります。

 

さらに詳しく

②の場合、上限を60万円と先に決めると、予算を少しでも削れば上限を下回るので、すぐに満足してしまいがちです。しかし、①の場合、必要なものを足すたびに、予算の上限がどんどん膨れていくので、むやみに予算を増やさないように調整する心理が働きます。

 

北国宗太郎
予算の上限を決めてからプランを立てるって良くないんだね
上限を決めなくても、予算が高すぎれば自然と自制が利くから安心して大丈夫だよ
牛さん

 

先入観や思い込み

 

マーケティングの話以外でも、固着性(係留と調整)ヒューリスティックは、私たちの思考回路に影響を与えています。

 

例えば

 

初対面で、とても素敵な異性があなたに優しくしてくれました

普段の生活で、異性から優しくされた経験のないあなたは、すぐに心を惹かれていきます。

 

どうして優しくしてくれるんだろうか?

 

普通に考えれば、そういう人は誰にでも優しいとか、人当たりが良いからです。

しかし、毎朝チェックしている占いで「今日は運命の出会いがあるかも!」という運勢だったことを思い出しました

そして、その運勢と結びつけて「あの人は私のことが好きなんだ!」と勘違いします。

 

ポイント

人は、簡単に利用できる情報を基準(アンカー)として物事を判断する。そして、アンカーとなる情報は、客観的に正確な情報ではないことが多い

その後の情報は判断を調整してくためのものになるが、おおよそ客観的な答えになる前に考えることを止めてしまう。

 

もしも

占いではなく、朝のニュースで「結婚詐欺」が話題になっていたら状況は変わっていたでしょう。

相手の心をだまして詐欺をする、というニュースだったら「あの人は何だか怪しい」と判断していたかもしれません。

 

北国宗太郎
人って、いい加減な生き物だよね。
おまけに厄介な性質もあるんだ。
牛さん

 

確証バイアス

恋は盲目ではないですが、相手は自分のことが好きなんだ!と勘違いすると、根拠のない自信が湧いてきます。

そんな状態になると「相手が自分のことを本当に好きなのか?」という反対の情報を吟味できなくなります。これを確証バイアスと言います。

 

確証バイアス

人は、自分に有利な情報は積極的に探すが、反証となる情報は受け入れない性質がある。

固着性(係留と調整)ヒューリスティックで、最初の情報がアンカーとなってしまうと、確証バイアスによって、ますます最初の情報に影響を受けてしまう。

 

例えば

1個 1万円のメロンがあったとします。

メロンが1万円であると聞くと、自分から理由を考えるようになります

最初に1個1万円と聞いたことで「そのメロンは1万円する」という基準が出来てしまったのです。後はそのメロンが本当に1万円であるかは疑わずに、1万円するという前提で理由を考えだします。

 

北国宗太郎
確かにこの状況に遭遇しても、1万円が正しいか疑わないかも
1万円が正しいか分からないのに、意外とみんな疑わないんだよね
牛さん

 

おまけに

このメロンの金額を問題形式で聞いたとします。

このメロンはいくらだと思いますか?結構高いですよ。

 

男性

1万円とかですか・・?

 

もし、これで1万円だと当ててしまうと、後知恵バイアスに陥ります。

 

後知恵バイアス

自分の予想が的中すると、自分の予想に自信を持つようになります

その状態で別の問題を予想すると、強い確証バイアスが働きます。

 

さきほどの話に戻る

初対面で優しくされて「次に会う時も優しくされるに違いない」と予想しました。

そして、次に会ったときも優しくされました。

すると「自分の予想が当たった。これは間違いなく自分のことが好きなんだ!」と一層勘違いをする事になります。

 

北国宗太郎
思い込みって怖いね・・
固着性ヒューリスティックについて知ったんだから注意しようね!
牛さん

ここに注意

最初の情報で、人の判断は大きく変ります。

他のヒューリスティックとは違い、固着性(係留と調整)ヒューリスティックはかなり強力に作用します。

ベタな言い方ですが、重要なことを決断する時は、色々な人の話を聞いて、たくさんの情報を吟味してください

特に自分が固着性(係留と調整)ヒューリスティックの影響を受けていないかを意識することが大切です!

 

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