「神経経済学(Neuroeconomics)」という分野をご存知でしょうか?
経済学と脳科学を融合した新しい分野です。
神経経済学が「次世代の経済学」と言われる理由はどうしてなのか?
行動経済学との違いは?簡単解説!
神経経済学とは?経済学と脳科学がどうして注目される?
神経経済学とは
経済学の理論を「脳科学」や「人の生理的な側面」から分析する分野。
英語では「ニューロエコノミクス」という。
もともと「神経経済学」という分野が発展し始めたのは1990年代に入ってからです。
脳を観察する機械の性能が上がったりしたことを背景に、経済学と脳科学が徐々に融合を始めました。
セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことで有名になった「行動経済学」は、経済学と心理学の融合した分野です。
一方で「神経経済学」は「脳みそ」から人の行動を分析しようという分野。
ポイント
- 行動経済学 ⇒ 心理面から人の行動を考える
- 神経経済学 ⇒ 脳の様子から人の行動を考える
「神経経済学」は、いままでの経済理論が本当に正しいのか?を脳科学の視点で確かめてくれるため、近年に入りとっても注目されています。
行動経済学で登場する理論を、更に脳科学から確かめるという動きも神経経済学にはあります。「従来の経済学・行動経済学」を脳やホルモンの話から捉えなおそうとしているのが神経経済学です。
神経経済学って具体的にはどんな感じなの?
神経経済学の分かりやすい代表例が「最後通牒ゲーム」です。
こちらはゲーム理論に登場する話なのですが、この中で発生する「人の不合理な行動」を神経経済学で説明ができます。最初に最後通牒ゲームについて簡単に説明!
最後通牒ゲーム
1万円を2人で分け合うゲームをします。
条件
- 相手は赤の他人・誰かは分からない。
- コイン投げで「提案者」「回答者」を決める。
- 「提案者」は、1万円をどう分けるかを1回だけ提案する権利が与えられる。
- 「回答者」はその提案を受け入れるかを判断する。
「回答者」が提案を受け入れるとゲーム成立、提案された金額で1万円を分配します。
仮に「回答者」が「提案者」の提案を拒否すれば、1万円は没収され2人とも0円です。
※ゲームは一度限り。
このゲームのもっとも合理的な回答は次の通りです。
「提案者は自分の獲得金額を9,999円にして、相手の取り分を1円にする」
どうして?
この回答がもっとも合理的な理由は
人は合理的な生き物だから「相手の取り分が1円以上なら、相手は拒否しない」
と経済学は考えているからです。
経済学の考え
つまり「相手が1円以上のお金を得られれば拒否されない」ので「相手の報酬額を1円以上にして、自分の報酬値を最大にする」のが良い。
こうして「自分 9,999円・相手1円」という提案が最適!という風になりました。
このゲームでこの提案をされた人の多くが「提案を拒否」しました。
そりゃそうだろう・・。と思った人も多いと思いますが、この拒否する理由を経済学っぽく説明が出来ませんでした。
経済学者
少しでもお金を得られるのに拒否するなんて!どうして非合理的な行動をするんだ?
上手く理由が説明できなかったのですが、神経経済学が科学的な説明をしてくれました。
ポイント
このゲームで問題になるのが「公平性や平等感」です。
「自分 9,999円・相手1円」という提案をされた人は「むかつく・・・(´Д`)」と思うことでしょう。この「むかつく」という感じは、不公平感からきています。
神経経済学はその時の人の脳の活動の様子から面白い答えを導き出します。
実際に「自分の取り分が1円」と聞かされて、むかついた回答者が「提案を拒否する」ときの脳の動きを観察すると、こんなことが分かりました。
重要!
なんと「提案を拒否する」ときに、脳の報酬系が活発に・・・。つまり、提案を拒否してお金を得られないのに脳が喜んでいることが分かったのです。
「どうして脳が喜んでいるのか」を考察すると、この「自分 9,999円・相手1円」という提案が受け入れられない理由が判明します。
ポイント
人は、集団で生活するようになり、集団の秩序を守るように「ルールを守らないやつ(むかつく奴)を罰する」という性質があり「ルールを守らないやつを罰すると快楽を得る」ように脳が設計されています。
つまり
「自分 9,999円・相手1円」という提案では、相手に一方的に不利を敷いているようで「ルールを守らないやつ(むかつく奴)を罰する」という人の性質を発動させてしまいます。
この性質が発動した結果、提案を拒否した人の脳が喜んでいたのです。
ポイント
「最後通牒ゲーム」で「自分 9,999円・相手1円」という提案が受け入れられないのは「(社会的な)ルールを守らないやつ (むかつく奴) を罰する」という人の性質と「人は相手を罰すると快楽を得る」という脳の性質からなのです。
「ルールを守らないやつを罰すると快楽を得る」という人の性質は「最後通牒ゲーム」以外でも問題になります。この話が少し登場する話もありますので読んでみてください。
こちらも読んでおくと良い
神経経済学のこれから
神経経済学(ニューロエコノミクス)では、これまでの経済学では説明ができなかった人々の活動を解明する力があります。
行動経済学が有名になるなど、従来の経済学が変革期を迎えています。今後10年単位で見れば、神経経済学は、さらに経済学を変革する 力(ちから) があるでしょう。
ただし
「脳科学と経済学が融合する」という神経経済学が、今のところ認知度が低すぎるのも問題点です。普通に考えれば「脳科学と経済学?一緒にする意味が分からない」ことでしょうから・・・。
神経経済学が活躍するのは、まだまだ先の話かもしれません。
神経経済学に興味がわいた人向けに、読んでおくといい本を紹介です。
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↑この中で紹介している「経済は競争では繁栄しない」の著者は神経経済学の開拓者です。
このブログでは神経経済学の内容を扱った記事もあるので、ぜひ読んでね!
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