自分よりも下の人を見て”ほっとした”こと、あなたも少しはあるんじゃないですか?
どうして他人と比較してしまうんでしょうか?
その答えが「参照点依存性」です。
参照点依存性とは?
参照点依存性とは?
人の感情は、自分が設定した基準(参照点)から、どれくらい変化したのかで評価が決まる。
つまり、人の心理的な評価は、絶対評価ではなく相対評価になる。
例えばこんな場面
コンビニで鮭おにぎりを買います
- 120円が割引で100円
- 100円
どちらの鮭おにぎりを買う方がお得感がありますか?
これこそが参照点依存性です
120円という基準から見れば、100円は20円安いので割引感があります。
もともと100円のおにぎりは、価格が変わっていないので高くも安くもありません。
ココがポイント
同じ値段でも、心の中で設定していた基準よりも高いか安いかで評価が変わる。
ちなみに
なぜ私たちは「参照点依存性」という特徴をもっているのでしょうか?
これは私の推測ですが、人が何かを情報を理解したりするには、前後の文脈が必要です。
例えば「子どもが泣いている」という情報だけでは、それ以外のことが分かりません。しかし「割れた風船が落ちていた」という情報があればどうでしょうか?
つまり
少ない情報から物事を判断するために、脳は無意識に情報を関連付けています。参照点依存性という特徴は、その脳のクセが影響しているのではないでしょうか?
人と比較してしまう理由
他人と収入を比較したり、容姿を比較したり、生きていれば1度や2度は経験があるのではないでしょうか?
参照点依存性を使えば、なぜ他人と比較するのかが分かります。
ポイント
他人と比較するという事は、基本的に自分が基準となっています。
自分の今の現状に満足していない、もしくは判断に困っている、という人は他人と比べることで、自分の状況を判断しようとします。
年収を例に見てみる
- あなたの年収500万円
- 会社のライバル年収500万円
- あなたと関係ない人の年収1000万円
今ここに、3人の人がいます。
この中で「あなたとは関係のない人の年収が1000万円から900万円になりました」
このとき、あなたは何か感じますか?
あなたの年収が500万円を基準にすれば、1000万円も900万円も良い給料です。なので、たくさんもらっていて羨ましいな~程度にしか思いません。
しかし、これが同じ500万円の給料を貰っている会社の同僚(ライバル)だったら?
ライバルの同僚は、査定で500万円から450万円へ減給になっていました。
あなたは何を感じますか?
男性
ざまーみろ!
女性
自分じゃなくて良かった・・(冷や汗)
自分と同じ500万円という基準を持った人が減給になったわけですから、自然に自分と重ね合わせて考えることが出来ます。
さらに詳しく
自分を重ね合わせることで、他人と自分の違いを比較することが出来る。なので、自分と似た境遇の人・もしくは同等レベルだと思っている人と自分を比較することが多い。
他にも!
小学生くらいの子どもを持つ母親がいます。
- 外国で、戦争で子どもが亡くなった
- 日本で、通り魔に襲われて子どもが亡くなった
どちらのニュースに悲しみを覚えるでしょうか?
子どもを持つ母親なら、通り魔のニュースの方が感情を揺さぶられます。自分を参照点として、子どもが亡くなったらことを考えることが出来るからです。
このように、自分と他人を比較するだけではなく、共感をする上でも参照点依存性というのは、重要な役割を果たしている。
まとめ
他人とに比較で、自分と似た状況の人や、同等レベルの人を比べることで自分の状況を知ろうとしている。しかし、あまりにも自分と違う人だと、自分(参照点)を基準に出来ないので比較しづらくなる。
また、自分(参照点)と近い人がいれば、自分に置き換えて考えやすいので共感しやすくもなる。
参照点依存性の例
ここからは、参照点依存性が表れている例を紹介していきます。
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1固着性ヒューリスティック
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固着性(係留と調整)ヒューリスティックの例を紹介!最初の情報で変わる行動!
固着性ヒューリスティック(係留と調整ヒューリスティック)ってどんな例があるの? 行動経済学でも重要となる固着性(係留と調 ...
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行動経済学では、人が情報を判断するときの癖を「ヒューリスティック」と言っています。
その中で登場する「固着性ヒューリスティック」は、参照点依存性と深く関係があります。
固着性ヒューリスティックとは?
初めての経験・始めの情報に影響を受けて物事を判断する現象のこと。途中の経験や情報は、最初の判断を修正するために使われることが多くなる。
不動産
不動産では、最初に価格が高めの物件を紹介されます。
こうすることで、この物件が基準(参照点)となります。
次に、イマイチな物件を提示して、最後にちょっとだけ高めの良い物件を紹介します。
そうすれば、最初(参照点)よりも価格が安い物件なので割安感を感じます。なおかつ条件がいいので気にいる確率が高くなります。
さらに詳しく
最初に提示された情報を基準(参照点)にして価値を判断してしまう現象を「アンカリング効果」と呼んでいます。
固着性ヒューリスティックは、アンカリング効果から発生するヒューリスティックです。
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2プロスペクト理論
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【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!
お金を失うのは嫌、幸せは長くは続かないし、隣の芝生は青い 私たちの心の本質とは?をまとめた理論があるんです。 広告・マー ...
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行動経済学の有名な理論に「プロスペクト理論」というものがあります。
プロスペクト理論の概要!
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる(損失回避)。
- 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
参照点依存性は、さらにプロスペクト理論へ発展しています。
注意ポイント
ここまでは「自分の感情は、参照点を基準にしてどれくらい変化したかで評価が変わる」という話を指摘しましたが、これには続きがあります。
実は、参照点から上に変化するよりも、下に変化する方が感じ方が大きいのです。
例えば
あなたは、今月の給料は、手取りで20万円貰えると思っています。(20万円が参照点になります)
- 保険料が上がっていて、手取りが19万5000円になっていた
- 保険料の還付があって、手取りが20万5000円になっていた
このとき、どちらの方が苦痛・喜びが大きいですか?
どちらも参照点より5000円動いています。手取りが減っている方が「参照点より下に動いた」・手取りが増えた方が「参照点より上に動いた」と考えます。
じつは、同じ金額でもお金を失う方が敏感に反応します。
お金が戻ってくる喜びが1なら、保険料が上がって、お金を失う悲しみは2倍~2.5倍になります。つまり「参照点より下に動いた方が、感情が揺れ動く」。
- 保険料が上がっていて、手取りが19万5000円になっていた
- 保険料の還付があって、手取りが21万円になっていた。
こうしないと、同じ大きさの感じ方にはならないのです (さっきよりも、還付額が倍になっている)。
おわりに
人生を過ごすコツは「過度な期待をして参照点を上げすぎないようにする」なのかもしれません。
自分で変な参照点を設定しないで、客観的に人生を過ごしたいものです。
(筆者こころのつぶやき)