行動経済学

【損失回避性とは?】絶対に知るべき行動経済学で登場する心理学

2019年6月15日

あなたが「失う」ことを嫌うのは何故か。

行動経済学の理論の多くが「損失回避の法則」と関係しています。

必ず知るべき「人の本質」を徹底解説!

損失回避性とは?

 

損失回避性とは?

「損をする」ことに対して過剰に恐怖を覚える人の性質のこと。

同じ金額ならば、利益を得る喜びよりも損をする苦痛の方が2倍以上大きいことが分かっている。こうした理由から、人は無意識に損を避ける行動を取る。

「損失回避の法則」や「損失回避バイアス」などと呼ばれることもある。

 

グラフで見てみると・・

 

北国宗太郎
北国宗太郎
普段の生活でも損失回避が働いているのかな?
身近な例でイメージしてみよう!
牛さん
牛さん

例えば・・

あなたは、500円分の家電量販店のポイントが残っていることに気づきました。

有効期限が明日が近づいていることがわかり・・。

 

男性

もったいない!

 

もったいないので、とりあえずお店に行ってポイントを消費することにしました。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
ポイントが消えるともったいないよね
そのときに感じる”もったいない”が重要だよ
牛さん
牛さん

ポイント

欲しいものがないなら、ポイント500円分くらい消えても良いと思うかもしれません。

しかし、私たちはそれが出来ないのです。

たとえ500円以上の買い物になろうとも、なんとしてもポイントの有効期限が切れる前に使おうとします

 

ポイントが消えることに対して凄く抵抗を覚えます

これこそが「損失回避性」という心理なのです。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
損失回避性のイメージが湧いてきた!
他にも面白い話があるから紹介するね
牛さん
牛さん

 

損失回避性を脳の中から分析すると、更に面白いことが分かります。

 

脳科学の視点から

損=死の恐怖?

 

あなたが株式投資をしていると考えてみましょう!

自分が持っている株の価格が1,000円→900円に急落しました。

すると、あなたの脳の中では扁桃核(へんとうかく)と呼ばれる部位が反応します。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
扁桃核・・?どんな意味があるの?
扁桃核は「恐怖」を感じる部位なんだ。
牛さん
牛さん

 

扁桃核(扁桃体)

人の感情的な反応に関わる部位。
特に不安や恐怖といったネガティブな感情と関係が深い。

扁桃核が反応すると、不安や恐怖など感じるようになっている。そのため、扁桃核が損傷すると、恐怖を感じなくなるなどの症例がある。

逆にうつ病の人は、扁桃核が過剰に反応するという症例もある。

 

ポイント

投資で損をした時の扁桃核の活動具合は、「死の恐怖」を感じた時に扁桃核が反応するのと同じくらいの強さ。

投資で損した時に扁桃核が反応している=「死の恐怖」を感じているのと同レベルの恐怖を感じていることになる。

 

野生の世界では

食べ物を失うことは死に繋がります。なので「失うこと」に対しては、ものすごく敏感に反応するように私たちの脳は設計されています。

人が損をすることに恐怖を覚えるのは、人間が動物から進化してきた名残(なごり)だと言えます。

損失回避性と関係が深い心理学

行動経済学では多くの心理学が登場します。

 

その中でも「損失回避性」と深く関係がある心理学が2つあります。

2つの心理学は、行動経済学では必須となる知識なので、損失回避性との関係を知っておきましょう!

 

(1) 保有効果(授かり効果)

 

保有効果(授かり効果)

自分が持っているものに高い価値を感じ、捨てることに抵抗を感じる心理現象のこと。

保有効果は、実物が存在していない場合でも働きます。たとえば、自分のアイディア・健康などでも保有効果が働きます

 

人は何かを得るよりも、失うこと(手放すこと)に苦痛を感じます。

失うこと=損すること(損失回避)」なので、私たちは捨てることを嫌います。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
たしかに自分が持っているものを捨てるのって嫌だよね
保有効果と損失回避性の関りがイメージできたかな?
牛さん
牛さん

簡単にまとめ

人は、損することを避けようとする心理が働いています。なので、自分の所有物を捨てることにも抵抗を覚えます。

「損失回避性」⇒「保有効果」という関係性がある。

 

(2) 現状維持バイアス

 

現状維持バイアス

変化を嫌い、現状を維持したくなる心理現象のこと。

 

私たちは、自分の現在の状況を変えることに対して抵抗を覚えます。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
どうして変化を嫌うのかな?
これも損失回避性と深く関係している話だよ
牛さん
牛さん

 

現状を変えると、今までの環境(状況)を手放すことになります。

つまり「今の状況を手放す=失うこと (損失回避)」だと言えます。

 

さらに詳しく

先ほども紹介しましたが、自分のアイディア・健康などでも保有効果が働きます。なので、現状(今の環境)という抽象的なモノでも保有効果が働きます

その結果、今のままでいいと思う気持ちが強まるのです。

 

簡単にまとめ

現状維持は、今の状況を手放したくない(失いたくない)という気持ちから生まれる。現状を失いたくない気持ちは「損失回避性」「保有効果」が働いている影響とも言えます。

「損失回避性」⇒「保有効果」⇒「現状維持バイアス」という関係性がある。

 

保有効果と現状維持バイアスは、身近な心理学で面白い話がたくさんあります。

詳しくはこちら!

【保有効果と現状維持バイアス】プロスペクト理論で登場する心理学を紹介

 

損失回避性の具体例を紹介!

 

損失回避性は心理学だけに関係しているのではありません。行動経済学の理論とも深く関係があります。

さいごに、行動経済学との関係を紐解いて「損失回避性」の例を見ていきましょう!

 

ナッジ効果(ナッジ理論)

【ナッジ理論とは?】行動経済学で人の動きを思いのままにする方法

行動経済学で「人の動き(心)を操る魔法」と称される「ナッジ理論(ナッジ効果)」 普段の生活には「ナッジ」と呼ばれる技術が ...

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ナッジは「選択肢を制限せずに、人の行動を促す(誘導する)」という行動経済学の分野です。

 

有名な話

有名なナッジ効果の1つとして、選んでほしい選択肢を最初から提示しておく(初期設定・デフォルトにしておく)というものがあります。

 

さらに詳しく

最初に提示されている設定(選択肢)を変更したがらない心理(保有効果)を利用している。「損失回避性」⇒「保有効果」の関係。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
ナッジは最近話題になっている話だよね?
うん。こんな話が話題になったよ。
牛さん
牛さん

 

【臓器移植の意思表示(ドナーカード)】

(公益社団法人日本臓器移植ネットワークHPより)

 

日本でも免許証の裏面に臓器移植の意思表示をする欄があります。

さて、そんなドナーカードですが「脳死したら臓器提供をしてもいい」と答える割合が、国ごとに差があるという問題がありました

  • フランスやベルギーは90%が「臓器提供してもいい」と回答。
  • ドイツやイギリスでは10%台に落ち込みました。

多くの研究者が、この差は何かを調べていたんですが・・。その結果驚くべき事実が分かりました。

 

詳しくはこちら

【ナッジ効果とは?】行動経済学で人の動きを思いのままにする方法

 

心の会計(メンタルアカウンティング)

心理会計「メンタルアカウンティング」とは?人が浪費する理由

お金がたまらない。 そんな悩みと関係が深い行動経済学の理論。 「心理会計・メンタルアカウンティング」を分かりやすく簡単解 ...

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同じ金銭でもその入手方法や使途に応じて(時には無意識に)重要度を分類して扱いを変えることを「心の会計」と呼んでいます。

 

有名な話

「同じチケットを2回買う?」

① 160ドル(約1万8,000円)の前売り券を購入した女性が、チケットを失くしたことに気づきました。

当日券を買う?

② 160ドル(約1万8,000円)の当日券を購入する予定だった女性が、160ドルの現金を失くしたことに気づきました。

当日券をクレジットカードで買う?

 

北国宗太郎
北国宗太郎
どちらも160ドル失くしたことに変わりないよね?
うん。でも①と②では再購入の割合が変わるんだ。
牛さん
牛さん

「損失回避性」が強く働くのはどちらか?

 

詳しくはこちら

【セイラーの心の家計簿(メンタルアカウンティング)】なぜ人は浪費してしまうのか?

 

フレーミング効果

フレーミング効果「表現で選択を変える」マーケティング・行政の事例

あなたの選択は操(あやつ)られていると言われたら? 表現だけで人の感じ方は変わります。 コップに水がもう半分しかない コ ...

続きを見る

 

同じ選択肢でも、表現のされかた次第で選ばれる確率が変わる心理現象を「フレーミング効果」と呼んでいます。

 

有名な話

アジア疾病問題

600人の死亡が予想される伝染病の流行に備えて2つの対策があります。

【問題1】 (ポジティブフレーム)

対策案A: 200人が助かる
対策案B: 1/3の確率で600人が助かるけど 2/3の確率で誰も助からない

どちらの対策案が好まれるでしょうか?

【問題2】(ネガティブフレーム)

対策案C:400人が死ぬ
対策案D:1/3の確率で誰も死なないけど2/3の確率で600人が死ぬ

どちらの対策案が好まれるでしょうか?

 

ちなみに「対策案A=対策案C」「対策案B=対策案D」です。

問題1と問題2の2つの結果を並べると、そこにも損失回避性の影響が現れます!

 

詳しくはこちら

【フレーミング効果とは?】人の選択をあやつる心理学をマーケティングに応用しよう!

 

プロスペクト理論

【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!

お金を失うのは嫌、幸せは長くは続かないし、隣の芝生は青い 私たちの心の本質とは?をまとめた理論があるんです。 広告・マー ...

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プロスペクト理論は、行動経済学では1番有名な理論です。プロスペクト理論の概要を見れば、損失回避性と関係があることが分かります

 

プロスペクト理論の概要!

  • 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
  • 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる(損失回避)
  • 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる
  • 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
  • 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。

 

ちなみに

フレーミング効果で登場した「アジア疾病問題」は、プロスペクト理論で説明が可能です。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
プロスペクト理論と損失回避性はどんな関係があるの?
理論の中に損失回避性が組み込まれているんだ。
牛さん
牛さん

 

プロスペクト理論の中には、損失回避性が含まれています。

 

さらに詳しく

プロスペクト理論は、行動経済学や心理学の知識を横断的に組み込んだ理論。その中核に「損失回避性」がある。

 

詳しくはこちら

【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!

 

一般的には「損失回避性」の話をすると、必ずプロスペクト理論が登場するので是非知っておきましょう!

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