代表性ヒューリスティックって具体的にはどんなものがあるの?
行動経済学で登場する代表性ヒューリスティックについて、普段の生活ではどんなものがあるかも紹介していきます!
代表性ヒューリスティックとは?
イメージしやすい・記憶に残りやすい情報を平均的なものだと勘違いして、他の物事にも当てはめて判断する現象のこと。
血液占い
小学生の頃、血液型で性格診断をすることってありませんでしたか?
日本では血液型によってこんなイメージがあります。
- A型 ⇒まじめ
- B型 ⇒変わり者
- O型 ⇒大雑把
- AB型 ⇒二面性
このイメージがどこからきているのかは分かりませんが、この情報をもとに血液型によって、あなたはこういう人だ、と言われたりもします。
こうした「A型だからまじめ」みたいに考えるのも「代表性ヒューリスティック」の1つです。
ポイント
ドラマ・漫画・その他有名な話を、全ての人に共通していると錯覚して、無意識的に当てはめてしまうのが代表性ヒューリスティックの特徴の1つです。
- ブラジル人はサッカーが上手い
- アメリカ人はハンバーガーをよく食べる
- 日本人は寿司が好き
- フランス人はおしゃれ
- ドイツ人はソーセージが好き
こうしたイメージを、すぐに当てはめてしまうのが代表性ヒューリスティックの有名な例で、一見すると差別に繋がりかねないので注意してください。
「私はブラジル人でスポーツが好きです」と言われたら?
- サッカーが好き
- 野球が好き
サッカーが好きなのかもしれませんが、100%そうではないし、人によります。
新卒の3割は3年以内に転職
ニュースなどで「大学を卒業した新卒の3割が、3年以内に転職する」というセリフを聞いたことがありませんか?
この話を聞くと「最近の若者は~」という意見に繋がりかねないですが、実際のところはどうなのでしょうか?
厚生労働省のデータによると
大学の新卒が3年以内に転職する割合は、過去20年以上にわたり30%超という数字で推移しています。
どの時代でも3割くらいは3年以内に転職するわけなので、最近の若者云々は的外れな指摘になります。
ポイント
このように、データの前後や分母を考えずに、結果だけに注目してしまうのも代表性ヒューリスティックの特徴の1つです。
コイントスで100%表が出た
こんな事を言われたら、あなたはどう思いますか?
この場合、100%表が出たという特徴的な結果に注目していますが、この100%は何回コイントスをして得られた結果なのか次第で状況は変わります。
コイントスは1回だけしかしていないかもしれません。その1回で表が出て「100%表が出た」と言っていることもあり得ます。
特徴的な結果に意識が向いてしまって、サンプルの分母数を忘れてしまうのも特徴の1つなのです。
褒めて育てるVS叱って育てる
教育の問題で「叱って育てた方が良い」という問題があります。
ケースバイケースですが、ここでは有名なお話を紹介しておきます。
イスラエルの空軍での話
行動経済学の権威であるカーネマン教授は、イスラエル空軍で心理学の指導をしました。
(TED.comより)
スキル強化訓練における重要な原則として、失敗を叱るより能力向上を誉めるほうが効果的である。
しかし、講義を受けていたベテラン教官が反論します。
反論した教官
訓練生の場合は、成功したときに誉めると次には失敗する。叱りつけると次は上手くいくので、カーネマン教授の話は訓練生にはあてはまらない。
訓練生の場合、飛行技術がまだまだ未熟です。上手くできたというのは実力以上の結果が出たと言えます。
実力以上の結果が出たのですから本来はそこまで上手くできません。次にやる時は当然上手く行かないことが多いのです。
統計では「平均への回帰」と言います。
これは逆のパターンにも当てはまります。実力を遥かに下回る失敗をしていたら、次やる時には、先ほどよりもマシな結果を残せます。
ココに注意
つまり、失敗した時に叱ろうが関係なく、次やる時は、それよりいい結果になる確率があるというわけです。
ポイント
こうした統計的な話をすっぽかして、因果関係を見誤るのも代表性ヒューリスティックの1つに入ります。
因果関係を見誤った結果、叱ると上手くいくイメージが強まったため「叱るほうが良い」と勘違いした。
カーネマン教授は、教官の反論にこう付け足しています。
「誉めると次に失敗し、叱ると次に成功する」という観察は正しい。
しかし「誉めると下手になり、叱ると上手くなる」という推論は完全に的外れです。
風邪を引いたときに○○するのが良い
「風邪を引いたら、○○すると熱も下がって効果があるよ!」という話って無数にありませんか?
これの原因も、平均回帰に関係した代表性ヒューリスティックです。
風邪を引いて熱が出ても、栄養・水分補給・睡眠が取れていれば、数日後には自然治癒します。
注意ポイント
つまり、数日後には熱が下がるわけですから、何をしても効果があるように錯覚してしまいます。
マークシートで同じ記号が続くと心配になる
テストの記号問題で、同じ答えが続くと心配になったりしませんか?
実つはこれも代表性ヒューリスティックの1つです。
2択のテストで答えが下の通りになりました。
- A
- A
- A
- A
完全にランダムだった場合、16回に1回はこのAが4つ続きます。
確率的には約6%です。
ポイント
6%もあるなら、たまには起こる話になります。しかし、Aが4つ続くと不安になったりするので、あえて途中でBと回答してバランスを取ろうとします。
このように、確率的には ある程度発生するはずなのに、人はその確率を正しく認識できずに勘違いをする。
「自分の中の普通」を代表にして考えたので、4回連続Aだと不自然に感じた。
ラッキーが続いて、逆に不安を感じる
たまに聞く話ですが、幸運が続いて不安を感じる人がいます。
しかし、そのラッキーは意外と高い確率であるかもしれませんし、それが連続で起きることなんて、数年に1回はある程度の話かもしれません。
それを、運命的に感じたり、逆に不幸になると考えるのは代表性ヒューリスティックに当てはまります。
さきほどの平均への回帰で考えれば、不幸になるというよりも、普通の状態に戻るほうが正しいです。
オレオレ詐欺
自分はオレオレ詐欺に引っかからない
よく詐欺などのニュースを見ても、自分は大丈夫だと考える人がいます。
これも代表性ヒューリスティックに関係してくる話になります。
ポイント
追加される情報次第で、確率を無視して考えてしまう。
追加情報に目が行ってしまって、誤った判断をする。
たとえば
勝率が5割のチーム同士で野球の試合をします。
次の試合では、Aチームの監督には元プロ野球選手が臨時で務めることになりました。
Aチームは勝つと思いますか?負けると思いますか?
勝率5割で相手も勝率5割のチームなので、勝つ確率は50%です。
それでも、なんかAチームが勝つ可能性が高くなったように感じます。これも代表性ヒューリスティックです。
「Aチームの監督には元プロ野球選手」という情報に目が行ってしまい、元の確率を無視してしまうのです。
「自分」は特別ではない
最初のオレオレ詐欺でも「自分」という情報が加わり、詐欺に騙される確率を低く見積もってしまったのです。
注意ポイント
普通に考えれば詐欺にあう確率も、離婚確率も、交通事故にあう確率も、大体みんな同じで、自分だけ違うなんてことはありません。
注意点
目立つポイントから何かを判断したりするのは悪いことではありません。
物事の特徴をとらえて、瞬間的に判断したほうが有効的な場面が多いです。
しかし、今やネットなどのメディアが発達しており、そうした短絡的な判断で失敗するケースも増えています。
代表性ヒューリスティックの例を知って、誤った判断をしないように注意しましょう!
ヒューリスティックのまとめ記事!
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ヒューリスティックで人が経験則で行動する事例・心理学との関係
直感的に行動したり、経験則で行動することを心理学・行動経済学の世界で「ヒューリスティック」と言います。 今までの経験上こ ...
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