「行動経済学は心理学を使った理論だ!」とそれっぽい言い回しを鵜呑みにしていませんか?
これでは、恋愛本で恋愛テクニックを読み漁っているのと変わりません。
「○○理論・○○効果」と羅列されている読み物で満足していませんか?
本当に行動経済学を活かしていきたいのなら、是非この続きを読んでください。
【行動経済学とは?】使いこなすために知っておきたいこと
残念ながら多くの人が「行動経済学」を使いこなせているとは言えません。
○○効果という表面上の話しか理解できていないからです。
そのせいで、その理論をそのまま使えばいいと安易に考えてしまいます。ここからは、行動経済学を本当の意味で生かすために必要なことを話していきます。
行動経済学は「人間科学の学問」です。
よく行動経済学と今までの経済学の違いはこんな風に表現されます。
従来の経済学は、人間を合理的な生き物と仮定していた。
しかし行動経済学では、人間の不合理な行動に注目して経済を分析する。
正直なところ、一般の人から見れば当たり前な話です。人は感情で動くという話なんてみんなわかっていることですから。
では、行動経済学の何が画期的だったのか?
それは「感情で揺れ動く人の行動を、理論化しようとした」からです。
つまり、行動経済学は「人間の行動を科学する学問」と言えます。
人の行動原理を知る
伝説の相場師である ジェシー・リバモア は、こんなことを言っています。
人生の転機となるのが恋愛、結婚、子ども、戦争、セックス、犯罪、情熱、宗教などであるように、理性に導かれて人が動くことはめったにない。
この台詞には「人の行動原理」の全てが表現されています。
- 人が理性で動くことはあまりない。
- 大事なのは理性以外のあらゆる感情
人が感情で動くことは先ほども言いましたが、ここで重要なポイントがあります。
ココがポイント
つまり「人は感情で動く!」と表面的に理解していては何も始まりません。
なぜ、人は感情で人が動くのか?
この疑問の答えこそが「行動経済学を本当の意味で使いこなすこと」へとつながります。
人が感情で動く理由
人が理性よりも感情で動いてしまう理由は「脳」にあります。
その脳の仕組みを見ると、人が感情で動く理由が分かるのです。
重要!
- 私たちは、人に進化する前はサルでした。
おサルの時代にも脳(大脳辺縁系など)がありましたが、今の人間でいう「感情・恐怖・本能」を表現する機能ばかりです。
その後
人へ進化するにつれて脳も進化していきますが、昔からあった脳が新しいものに生まれ変わった!というよりも機能が外付けされた形。
人へ進化する過程で脳に外付けされた部分(大脳新皮質)は「理性」を機能させるものが多いです。
ココがポイント
人が感情で動く理由は昔からある脳の影響。後から進化した外付け部分(理性)は、最近できたばかりの機能なので昔からある脳の部位に負ける。
行動経済学を使いこなすために
行動経済学を使いこなすために重要なことは「人の行動原理を知ること」です。
また、行動経済学の「○○効果」とかは、ほとんどが先ほど言った脳の仕組みが原因で発生しています。
このことを知らずに「○○効果を使って~」とか言っても、表面的な話になるばかりです。
ここが一番重要
大事なことは、昔からある脳(大脳辺縁系など)を無意識に刺激して、感情を揺さぶることだということは忘れないでください。または、そんな人のサガをどう抑えるのか?
それ意識せずに行動経済学を使おうとしたって意味はありません。
行動経済学を使いこなした例を紹介!
さて、ここまでくると行動経済学を使って問題を解決したり、なんかやってやりたい!と思う人も多いかと思います。
というわけで、行動経済学を上手く使った例を紹介していきます。
例①フレーミング効果
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フレーミング効果「表現で選択を変える」マーケティング・行政の事例
あなたの選択は操(あやつ)られていると言われたら? 表現だけで人の感じ方は変わります。 コップに水がもう半分しかない コ ...
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フレーミング効果は「表現の仕方で人の行動が変わる」という行動経済学の理論。
具体例!
- 「アジア疾病問題」
600人の死亡が予想される伝染病の流行に備えて2つの対策があります。
「プラスの選択肢」と「マイナスの選択肢」を直接並べられた場合
- 対策案A:200人が助かる (ポジティブフレーム)
- 対策案C:400人が死ぬ (ネガティブフレーム)
※対策案Aと対策案Cは同じです。(600人中・200が助かって400人が死にます)
実験の結果
全く同じことを表現を変えて並べただけですが、この場合は「対策案A」の方が好まれます。
売り文句で「顧客満足度93%!」というのを見たことがありませんか?
これを「7%しか不満足は出なかった!」にしてはダメです。
「その商品の売りポイントをポジティブに表現するのがフレーミング効果のポイントの1つです」。こんな感じで「フレーミング効果」は説明されます。ネットで検索するとたくさん他にも例が出てきます。
しかし、この理論の本質を説明している記事はありません。ぜひ押さえてください!
ココがポイント
この理論の本質は、どう表現すれば「昔からある脳みそを揺さぶることが出来るか?」です。「または揺さぶらずに済むか?」です。人は損することに対して非常に強く反応する生き物です。
さきほどの例だと「400人が死ぬ」とか「7%しか不満足は出なかった(7%が不満足)」では、損失が確定した表現になっています。
脳の視点で見ると
損が確定するような表現だと昔からある脳の部分(扁桃核)が反応します。
さらに詳しく
扁桃核とは、人が恐怖・不安を感じたりする部分。昔の生活では、食べ物を失ったりするなど「何かを失うこと」は生きていく上で超重要な問題でした。そのため損をするとこの部分が本能的に反応します。
つまり
上記の例だと、昔からある脳の部分が反応しない(不安を感じさせない)ような表現で、セールスをする!という話です。
詳しくはこちらで確認
⇒フレーミング効果とは?「表現次第で選択が変わる」行動経済学の具体例を紹介!
例② 双曲割引
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【双曲割引とは?】目先の誘惑に負ける理由を行動経済学で解説!
目先の誘惑に負けてしまう原因を説明した「双曲割引」 貯金に失敗した ダイエットに失敗した 勉強できずに遊んでしまった そ ...
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双曲割引は「未来になればなるほど時間の感じ方がアバウトになる」という行動経済学の理論。(目先の誘惑に負ける理由)
具体例!
- ダイエット
ダイエットする理由は「将来はやせて水着を着るぞ~」とか「好きな人のために痩せるぞ~」などが大くの理由です。(将来のため)
そのために痩せるというのは本当なら重要なはずなのに、目の前にケーキが出るとケーキを食べてしまいます。(今の快楽)
これは「今ケーキを食べる喜び > 将来痩せる喜び」となってしまっている(双曲割引が強い)からです。
ダイエットに成功するためには、外付けされた脳の部分を強く働かせる必要があります。
その方法として有名なものは「1日食べたものを書き出して、反省と次への目標を明確にする」などがあります(自己シグナリング)。
これは、反省や将来を考えるのが「外付けされた脳の部分」なので、この脳の部分をしっかりと使って理性的に振り返るというものです。
さらに詳しく
振り返るうちに、お菓子を食べることへ罪悪感を感じるようになり「昔からある脳の部分」の影響力を抑えることが出来ます。
「昔からある脳の部分」と「外付けされた脳の部分」のもう一つの違いが重要です。
昔からある脳の部分は「とにかく今」が重要だと判断します。逆に、将来のために行動するというのは「外付けされた脳の部分」で処理しています。
つまり
あなたが将来のために行動するには「昔からある脳の部分」を抑えることが重要です。
ポイント
あなたがセールスマンなら「こんな便利なんです。今からの生活が充実したものになります」と言って、「今、目の前にあるこの商品の魅力で、相手の昔からある脳みそを揺さぶることが出来るのか」
双曲割引についてはこちらの記事で確認してね!
⇒【双曲割引とは?】目先の誘惑に負ける理由を行動経済学で解説!
例③プロスペクト理論
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【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!
お金を失うのは嫌、幸せは長くは続かないし、隣の芝生は青い 私たちの心の本質とは?をまとめた理論があるんです。 広告・マー ...
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プロスペクト理論は行動経済学で一番有名な理論!
プロスペクト理論は、行動経済学の集大成ともいえる理論で色々な要素が詰まっています。
まずは、プロスペクト理論の概要を説明!
プロスペクト理論の概要!
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる(損失回避)。
- 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
プロスペクト理論で押さえておきたいのは「人は損が嫌い」「損を避けるように行動する(損失回避)」です。
人が「損」に対して敏感なのは生物として当たり前の反応です。食べ物を失っては命の危機に関わります。そうした生存本能に近い性質が現代の私たちにも残っているのです。
「人の喜びや悲しみは参照点に依存する(相対評価)」というのは「フレーミング効果」の発展形です。つまり、人はモノの見方次第で喜んだり悲しんだりもする。
「人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)」というのは「双曲割引」の発展形です。その出来事が起きた時が一番感情を感じますが、時間が経てばたつほど感覚がアバウトになっていきます。
他には・・
- 保有効果(授かり効果)
- 現状維持バイアス
などの心理現象も関わってくるよ!
例えば
恋愛・日常生活・投資などなど。
プロスペクト理論を使えば、私たちの普段の生活で登場する問題を分析することが出来ます!
ポイント
「損が嫌い」という人の性質を理解すると、日常生活で登場する問題を深く理解できるようになる。
プロスペクト理論についてはこちらの記事で確認
⇒【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!
おわりに・・
行動経済学を使いこなすためには、理論を単純に知っても100%の力を発揮できません。
人がどうして感情で動くのか?
今回の記事で「人の行動原理」の重要性を知っていただいたうえで、行動経済学についてもっともっと興味を持ってもらえればうれしい限りです。
次の2つは必ず読む
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【ナッジ理論とは?】行動経済学で人の動きを思いのままにする方法
行動経済学で「人の動き(心)を操る魔法」と称される「ナッジ理論(ナッジ効果)」 普段の生活には「ナッジ」と呼ばれる技術が ...
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