お金がたまらない。
そんな悩みと関係が深い行動経済学の理論。
「心理会計・メンタルアカウンティング」を分かりやすく簡単解説!
「心理会計・メンタルアカウンティング」とは?
心理会計・心の会計とは?
同じ金額でも「稼いだ方法」や「お金を使う目的」によって、無意識にお金の重要度を分類してしまう心理現象のこと。
「メンタルアカウンティング」とも言う。
心理会計・メンタルアカウンティングは「お金に色を付ける現象」です。
簡単に言えば
- 働いて稼いだ1万円
- ギャンブルで稼いだ1万円
同じ金額なのに「働いて稼いだ1万円」の方が価値があるように見える心理現象のことです。
私たちは心の解釈で、お金の価値や重要度を変えているのです。
これに注目したのが行動経済学の権威「リチャード・セイラー教授」
(Wikipediaより リチャード・セイラー教授)
大事なこと
人の心の中には様々な会計基準があって、その影響を受けながら意思決定をする。必ずしも合理的な選択をしない。
ここからは「心理会計・メンタルアカウンティング」が働くことで有名な場面を紹介していきます!
具体例①「使用目的」生活費と特別費
普段の生活では、10円レベルで値段を気にする人も多いのでは?
コンビニで「おにぎり10円引き」
男性
おにぎり10円引きか・・パンとどっちが良いかな・・?
わずか10円ですが、お昼ご飯なら10円の差が凄く重要なポイントになります。
しかし
旅行・遊ぶ時のお金・ギャンブルをするお金になると、急に財布のひもが緩む!
旅行先で1,000円のご当地ランチなら気にせずに食べます。お土産も1,000円単位で普通に買ってしまいます。10円の差なんて気にしません!
これは典型的な心理会計・メンタルアカウンティングの例です。
ポイント
このように、普段の生活に関わるお金「生活費」と娯楽で使うお金「特別費」では、お金の価値を違うものとして解釈してしまいます。
これは「使用目的」によって、お金の価値が変わる例です。
具体例②「取得方法」 お金に色を付ける
最初に登場した「お金の稼ぎ方」の話です。
- 仕事で稼いだ1万円
- ギャンブルで稼いだ1万円
この2つなら「仕事で稼いだ1万円」の方が価値があるように感じます。
更に・・
2つのお金の使い方を考えてみましょう。
女性
仕事で稼いだお金は大切に使いたいな。
ポイント
自分が一生懸命働いて稼いだお金は「大切に使いたい」という人が多いです。
一方でギャンブルで稼いだお金はどうでしょうか?
男性
競馬で20万円勝ったぞ!よし豪遊だ!
という具合に、ギャンブルで稼いだお金は、軽く使ってしまう傾向があります。
ポイント
給料の20万円を豪遊する気にはならない。
でも、競馬で儲かったお金を20万円なら湯水のように使ってしまう。
これは「お金の取得方法」によって、お金の価値が変わる例です。
ちなみに
「稼いだお金に価値がある」と思うのには理由があります。
それが「イケア効果」です。
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人には「自分が労力を費やして得たもの」を高く評価してしまう傾向があります。
これを行動経済学では「イケア効果(IKEA効果)」、
心理学では「保有効果」と呼んでいます。
具体例③「比較対象」金額が高いと感覚がマヒする
普段から節約している人でも、車を買う時はどうでしょうか?
例えば
1台10万円のカーナビがあります。
- カーナビ単体を購入する時
- 400万円の車と一緒にカーナビを購入する時
どちらが抵抗感が少ないですか?
多くの人が「400万円の車と一緒に購入する時」だと答えます。
車・冠婚葬祭・家など、高価なものを購入する時は、付属の製品やサービスが安く見えます。
単体で考えれば10万円以上するものばかりで高いです。
ポイント
同じ10万円のカーナビなのに「車本体と購入する時」と「カーナビ単体で購入する時」では、10万円の感じ方が変わります。
これは「比較対象」に高価なものがあるだけで、お金の価値が変わる例です。
アンカリング効果
本体が100万円~1000万円とかの単位だと、そっちを基準に考えてしまうためです。
さらに詳しく
このように、提示される情報次第で、自分の考え方や判断に影響を与える心理現象を「アンカリング効果」と呼びます。
行動経済学では「固着性(係留と調整)ヒューリスティック」として登場します。
400万円の車が基準になるので、カーナビの10万円はとても安く感じます。その結果、カーナビ単体で購入するよりも抵抗感が薄れるのです。
ココに注意
高い買い物をするときは、余計なお金を払っていないかを意識して注意しましょう!
メンタルアカウンティングの有名な実験
有名な話
- 同じお芝居のチケットを2回買う?
こちらは、ダニエル・カーネマンが行った実験です。
① 160ドル(約1万8,000円)の前売り券を購入した女性が、チケットを失くしたことに気づきました。
当日券を買う?
② 160ドル(約1万8,000円)の当日券を購入する予定だった女性が、160ドルの現金を失くしたことに気づきました。
当日券をクレジットカードで買う?
結果
① 約10%が再購入した
② 約90%が再購入した
ポイント
- この160ドルを何のお金と考えるか
① 160ドル(約1万8,000円)の前売り券を購入した場合、もう一度お金を支払うと、同じお芝居に320ドル(3万6,000円)支払ったことになります。
女性
同じお芝居に、またお金を支払うのか・・
しかし
② 160ドルの現金を失くした場合、お芝居のお金を1度も支払っていないので、クレジットカードでチケット代を支払っても抵抗感がありません。
ポイント
前売券を無くした場合は、同じ映画に倍の値段を支払うことになり抵抗が強まる。これは、メンタルアカウンティング(心の会計)で、お芝居代は160ドル程度と分類を終えているため。
どうして人は「心の家計簿」を作るのか?
日本史や世界史の勉強で「単語だけを覚えないで、ストーリーを理解して覚える」という話を聞いたことがありませんか?
人は、意味がないものを覚えるのが下手です。
「意味がないと重要じゃないのでわざわざ覚えなくても良い」と判断されます。
逆に言えば
脳は「前後の関係や意味のある情報を処理する方が得意」と言えます。
ポイント
更にこれが転じて「人は積極的に情報を分類してしまうクセがある」わけです。
なので漠然と「お金」と捉えるよりも「これは使っていいもの・これは貯める分」と勝手に分類してしまっているわけです。←脳が処理しやすいため
更に
そもそも、人の脳が処理できる思考の容量は限られています。
あれもこれも判断していてはキャパオーバーです。つまり、分類してまとめて処理する方が脳も楽なのです。
心理会計で分かる「浪費を抑えるコツ」
メンタルアカウンティング(心の家計簿)について理解したところで、浪費を抑えるためにどうすれば良いのか?
答えは簡単
心がメンタルアカウンティングをする前に、自分で分類しましょう。
例えば
口座を何種類か用意します。
- 生活用
- 遊び用
- 絶対に使わない用
などと分類してお金の管理をしましょう。口座が複数あるばお金を使うことに心理的な抵抗を高める事が出来るので効果的です。
重要なのは心理会計(メンタルアカウンティング)が始まる前に「自分で分類して浪費を抑えること」です
更にココがポイント
事前にどのくらいの金額をどうするのかを自分で決めておきましょう。
事前に決めた金額をもとに意思決定すれば「心理会計・メンタルアカウンティングが入る余地」をふさぐことが出来ます。
ここにも注意
途中でも紹介しましたが「高い買い物をするとき」は心理会計・メンタルアカウンティングの影響を強く受けます。
100万円単位の金額に意識が持っていかれて、数万とかが何でもないような金額に思えてきます。
特に高い金額の買い物をする時は注意しましょう!