初心者から、行動経済学を勉強している人まで、このページを見れば行動経済学の理論や例題がよくわかるようにまとめました。
大学で行動経済学を専攻していた私がまとめる行動経済学の総まとめ記事です!
メモ
行動経済学は発展途中で、理論を適当に並べた話が多いです。ここでは互いの理論がどう関係しあっているのかが良くわかるようにご紹介していきます!
はじめに:行動経済学とは?
行動経済学とは
人の心理面の特徴を反映させた経済学。
今までの経済学では「人=超合理的に行動する」という方程式で考えられていたのを、心理学や脳科学を使って身近な話に落とし込んだところが画期的と言われています。
詳しくはこちら
行動経済学の理論の特徴は、次の4つに分かれます。
- 「最近の流行り」
- 「損得勘定にどう反応するのか」
- 「脳の負担を減らす」
- 「進化の過程で身についたもの」
こちらは私が考えた分類ですが、この4つの分類で見ていくと、それぞれの理論をより深く理解できます。
それでは順番に見ていきましょう!
例①「最近流行っている系」
行動経済学のなかでも流行りの話というのがあるので、最初に紹介!
【ナッジ効果(ナッジ理論)】無意識に人を誘導する方法
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【ナッジ理論とは?】行動経済学で人の動きを思いのままにする方法
行動経済学で「人の動き(心)を操る魔法」と称される「ナッジ理論(ナッジ効果)」 普段の生活には「ナッジ」と呼ばれる技術が ...
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ナッジ理論・ナッジ効果とは
選択肢を制限せずに、人の行動を促す(誘導する)方法。
ナッジの英語の意味は「ひじでそっと相手を突(つ)く」
ナッジは、行動経済学の中で最近1番注目されています。
ナッジは大きくは4種類
- デフォルト
- フィードバック
- インセンティブ
- 選択肢の構造化
ココがポイント
ナッジは、自民党の小泉進次郎議員も注目する行動経済学です。2019年からは日本の年金はがきにも応用されています。
人の行動を操る魔法と称される「ナッジ効果(ナッジ理論)」。ビジネスでも役に立つ知識なので、読んで損はしません。
詳細はこちら!
⇒【ナッジ効果とは?】行動経済学で人の動きを思いのままにする方法
【神経経済学(ニューロ・エコノミクス)】脳科学を用いて分析
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【神経経済学とは?】行動経済学との違い、なぜ脳科学を応用するのか
「神経経済学(Neuroeconomicsニューロエコノミクス)」という分野をご存知でしょうか? 経済学と脳科学を融合し ...
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神経経済学とは
行動経済学は心理学などを応用していますが、更に脳科学などを用いていく経済学。
神経経済学(ニューロ・エコノミクス)は、最近できたばかりの領域です。
行動経済学の理論を脳科学の方から説明したり、独自の理論を作ろうという試みもあります。
ココがポイント
人の行動の源は脳みそです。脳活動を経済学に取り込むことでより現実に近い分析ができます。
神経経済学(ニューロ・エコノミクス)に興味がわいた人は是非読んでね!
詳しくはこちら
例②「損得勘定に反応する系」
人の「損する」「得する」という感情は特殊で、行動経済学でも「損得」に関する話がたくさんあります。
特に「損する(失う)」という事への拒否反応がとても強く、この特徴が行動経済学の理論にもたくさん応用されています。
ポイント
人の「損をする事への拒否反応」が行動経済学では重要な要素の1つ!
損を嫌う私たちの特徴がたくさん「損得勘定に反応する系」の例を見ていきましょう。
【プロスペクト理論】行動経済学の代表的な理論
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【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!
お金を失うのは嫌、幸せは長くは続かないし、隣の芝生は青い 私たちの心の本質とは?をまとめた理論があるんです。 広告・マー ...
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プロスペクト理論とは
行動経済学の代表的な理論。人の意思決定がどのように行われるかを心理的な側面を加味して分析している。
- 100万円を得られる喜びより、100万円を失うショックの方が大きい
- 喜びは長く続かない(慣れる)
- 人は相対評価の世界で生きている
などの特徴をすべて織り込んだモデル。
プロスペクト理論の要約はこちら!
6つのポイント
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避ける。
- 損している時は、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
- 人は確率を正しく認識していない。
ココがポイント
プロスペクト理論は、行動経済学の集大成的な理論です。できれば行動経済学の他の理論などで色々と見識を広げてからの方が理解が深まります。
詳しくはこちら!
⇒【プロスペクト理論を分かりやすく】行動経済学で投資や恋愛で失敗する理由を知ろう!
【フレーミング効果】コップに水が「○○半分」
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フレーミング効果「表現で選択を変える」マーケティング・行政の事例
あなたの選択は操(あやつ)られていると言われたら? 表現だけで人の感じ方は変わります。 コップに水がもう半分しかない コ ...
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フレーミング効果とは
同じ選択肢でも、表現次第で選ばれる確率が変わる心理現象のこと。
つまり「ものは言いよう」
言い回しで印象が変わると、私たちの選択・行動も大きく変ってきます。
よくあるのが・・
コップの中に水が「もう半分」「まだ半分」
フレーミング効果は大きく3つ
- リスク選択フレーミング
- 属性フレーミング
- 目標フレーミング
「アジア疾病問題」などが有名ですが、何と言っても「マーケティング手法」としてフレーミング効果を用いる人が沢山います。
ココがポイント
「人は損する選択肢は嫌い、損しないように行動する」という特徴を上手く利用して、ベストな言い回しを見つけてくれる行動経済学の例になっています。
マーケティングに関わる話も解説しているよ!
詳しくはこちら
⇒【フレーミング効果とは?】人の選択をあやつる心理学をマーケティングに応用しよう!
【イケア効果とコンコルドの誤謬】自分が関わったものは特別
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【イケア効果とコンコルド効果】恋愛と投資で失敗する理由
自分が好きな人を引きずったり、投資で損切りできなかったり。 「ここまで来て諦めるなんて・・」 「もったいない」 自分が時 ...
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イケア効果(IKEA効果)とは
自分が労力をかけた物事に対して、普通よりも価値があると感じてしまう心理現象のこと。
コンコルド効果とは?
今まで費やした労力(金銭・時間・努力)に引きづられて、合理的な判断が下せなくなる心理現象のこと。
損すると分かっていても、止められない気持ちなど。
投資や恋愛などで失敗したりする原因にもなります。
どちらも
経済学では、今までに費やしたお金・時間・手間などのことを「サンクコスト・埋没費用」と言います。
「イケア効果」「コンコルド効果」は、どちらもサンクコスト・埋没費用が関係しています。
ココがポイント
私たちは手間を掛けたり・お金を掛けたりすると、未来の行動に影響を及ぼします。もったないと感じる気持ちが私たちを支配している。
詳細はこちらで!
例③「脳の負担を減らす系」
みなさんは「疲れた~、動くのめんどい」とか思ったりしませんか?
じつは、人の脳はもっとめんどくさがりです。面倒くさいというと若干間違いですが「とにかく節約家」です。
ポイント
脳を使うのにはエネルギーが沢山いるので「なるべく脳に負担がかからないように動こうとしている」
そんな脳の節約志向を反映させたのが「脳の負担を減らす系」の行動経済学の理論です。
【ヒューリスティック】人が経験則で動いてしまう理由
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ヒューリスティックで人が経験則で行動する事例・心理学との関係
直感的に行動したり、経験則で行動することを心理学・行動経済学の世界で「ヒューリスティック」と言います。 今までの経験上こ ...
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ヒューリスティックとは
人は自分が生きてきた中で経験したこと・経験則を基準に物事を判断する。
もしくは直感的に行動する、というものです。
ココがポイント
反射的に判断することで脳がエネルギーを浪費しないで済む
ヒューリスティックには3つあります
「リンダ問題」「英単語問題」「事故死と病死だとどちらが多い?」「松竹梅の法則」など、ヒューリスティックの話で登場するものはたくさんあります。
更に心理学で登場する「確証バイアス」「初頭効果」「親近効果」などはヒューリスティックに密接に関係しています。
詳細はこちらから
⇒【ヒューリスティックとは?】人が経験則で行動する理由を心理学で説明!
【メンタルアカウンティング(心の会計簿)】浪費してしまう理由
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心理会計「メンタルアカウンティング」とは?人が浪費する理由
お金がたまらない。 そんな悩みと関係が深い行動経済学の理論。 「心理会計・メンタルアカウンティング」を分かりやすく簡単解 ...
続きを見る
心理会計
「働いて稼いだ1万円」と「ギャンブルで稼いだ1万円」では、金額が同じなのに価値が違うように感じる現象のこと。
「メンタルアカウンティング」とも言う。
私たちは、普段の生活で情報を積極的に取捨選択しています。
しかし
全部の情報の良しあしを判断していると脳が疲れてしまいます。
そこで、脳は無意識のうちに情報を分類しています。例えば「これはいらない情報」「こっちは必要」など。
この話の詳細はこちらで確認してね!
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【フレーム問題とは?】人は積極的に情報を分類している?
「フレーム問題」という話を知っていますか? 「ロボットと人では情報の処理方法が決定的に違う」というお話です。 そんなお話 ...
続きを見る
ココがポイント
つまり、脳が積極的に情報を分類する影響で、心理会計・メンタルアカウンティングが発生する。
心理会計・メンタルアカウンティングの特徴
- 使用目的でお金の価値が変わる(生活費と特別費)
- お金の取得方法で価値が変わる(お金に色を付ける)
- 比較対象で金額の感じ方が変わる
心理会計・メンタルアカウンティングはどんな状況で発生しやすいのか?などを解説しています!
詳細はこちらの記事で
⇒心理会計「メンタルアカウンティング」とは?人が浪費する理由
例④「進化の過程で身についた系」
人が進化すると脳みそが大きくなって、社会的な文化を作って・・・。と進化の過程では色々ありました。
その進化の影響を受けた結果、人には独特の行動パターンが生まれています。
ポイント
人が進化の過程で得た特徴が、今の私たちにも影響を与えている。
そんな人類の進化の影響を受けた「進化の過程で身についた系」の行動経済学の理論です。
【双曲割引】ダイエットに失敗する理由
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【双曲割引とは?】目先の誘惑に負ける理由を行動経済学で解説!
目先の誘惑に負けてしまう原因を説明した「双曲割引」 貯金に失敗した ダイエットに失敗した 勉強できずに遊んでしまった そ ...
続きを見る
双曲割引とは
人は「遠い将来は待つことができるが、近い将来は待つことができない」という特徴のこと。
人は「今日1万円貰うか・1年後に2万円貰うか」だと前者を選ぶ傾向があります。
しかし
「1年後に1万円貰うか・2年後に2万円貰うか」だったら、先ほどよりも我慢できる人が増えるのです。
ココがポイント
こんな感じでとにかく「今」が重要でそのほかの時間軸は重要度が下がって理性的な選択を取りやすくなるわけです。
これは、人の脳の発達の仕方が影響しています。
人へ進化するにつれて、昔からあった脳みそに、将来を考えて行動するという脳の仕組みが外づけされました(大脳新皮質)。
重要な脳の仕組み
昔からある脳みは今を生きるために機能しているイメージです。影響力がかなり強く「今、目の前にあるエサを取らねば!」という感じで働きかけてきます。
逆に、将来のために行動するという人の行動は、脳の後から進化してきた部分がコントロールしています。
ココがポイント
人の脳の「昔からある部分」「外付けされた(進化した)部分」があるので、時間の捉え方がゆがんでいる。
双曲割引はダイエットが失敗する理由を説明したりするのに使われます。
詳しくはこちら
⇒「双曲割引」選好の逆転とは?ケーキに負けてダイエット失敗!自滅選択の罠
【ハーディング現象(効果)】お店に行列ができる理由
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【ハーディング現象とは?】バブル経済が生まれ、店に行列ができる理由
「みんなやってるよ、やってないの?」 私たちは、何故この魔法の言葉に反応してしまうのか? 誰もが経験した事があるこの現象 ...
続きを見る
ハーディング現象・効果とは?
周りの人(集団)と同じ行動を取ることで、安心を得ようとする群集心理のこと。
結果的に多くの人が同じ行動を取る。
押さえておきたい!
自分の考えが正しいとか、周りが間違っているとかは関係ない。
それよりも、私たちは周りと同じように行動して安心感を得たいと思う心理がある。
ハーディング現象(効果)の具体例はこんなものがあります。
- お店に行列ができると並びたくなる
- バブル相場が出来ると便乗したくなる
- 暴落が売ると株を投げ売りしたくなる
- バラエティー番組の笑い声
この話で関係する「ミラーニューロン」の働きに注目
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【ミラーニューロンとは?】批判も含めて簡単にわかりやすく紹介!
1990年代後半から、脳科学の分野で話題に上がっていた「ミラーニューロン」 何故そんなに話題になっていたのか? 行動経済 ...
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「ミラーニューロン」は脳の神経細胞のこと。他人の行動を脳内で再現する機能が優れており、私たちは他人の行動に影響を受けやすい生き物なのです。
更に、人は社会の一員として認められたい生き物です。そうしたこともあり、周りの人と同じ行動を取る原動力となります。
ココがポイント
人には他人の行動に反応しやすい脳の機能がある以外にも、他人と同じ行動をしていれば、社会(集団)の一員として認められているような安心感を得られます。こうして周りの人へ同調するというハーディング現象(効果)へ繋がっていきます。
元々はバブル相場が発生する理由を説明するための行動経済学の理論なので、興味がある人はぜひ読んでください。
詳しくはこちら
⇒【ハーディング現象とは?】バブル経済が生まれ、店に行列ができる理由
【理由付け行動】人は簡単に理由が説明できるものが好き
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【理由付け行動と正則条件の破れとは?】人はどうして不合理な行動をするのか?
ここまで、行動経済学では「プロスペクト理論」・「メンタルアカウンティング(心の会計簿)」などの有名な話がありますが、今回 ...
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理由付け行動とは
これまでの経済学では、人の意思決定は「自分の利益を最大化」を目的にしていると考えていた。
しかし、時には「簡単に理由を説明できるから」という理由で意思決定することがある。
例えば・・
GoogleやAmazonがかなり悪いことをしていたら、いくら便利でも使うのを止めたりします。
つまり「悪いことをしたら罰する」という簡単な理由から、自分が損をしてでも「相手を罰するような行動」をします。これが理由付け行動です。
特に理由付け行動でよく登場するのが「公正概念」です。
自分の損得ではなく「社会的に認められているか?」という基準で物事を判断したりすることがあります。
裏を返せば「そっちの方が理由を簡単に説明出来る」からです。
ココがポイント
自分の損得勘定だけで行動したりしないのは、群れで行動する私たちの祖先の影響を強く受けているからです。
哲学っぽい話なので興味があれば!
⇒【理由付け行動と正則条件の破れとは?】人はどうして不合理な行動をするのか?
【社会規範と市場規範】お金の力は道徳心を壊す
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【社会規範と市場規範】お金の力で倫理観が壊れる理由
「市場に任せていれば、すべてが上手くいく」 残念ながら、市場に任せると失敗するものがあります。 私たちの”良心”を壊す、 ...
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市場規範と社会規範とは
社会規範とは、道徳や倫理的なルールのこと。犯罪ではないけど、社会的に認められていないものは、社会規範にあたる。
市場規範とは、市場の原理のこと。物のやり取りをお金で行って、需要と供給で価格が決まるような状態のこと。
例えば・・
被災地にボランティアで来てくれている人がたくさんいます。もっと手伝ってくれる人を呼びたい被災地は、時給1,000円で被災地アルバイトを募集しました。
すると、人が誰も来なくなり、ボランティア活動だけを受け入れていた方が、はるかに人が集まっていたのです。
なぜ
お金には、人の「道徳心・倫理観・善意」を取り除く力があります。
ココがポイント
誰かの善意に頼っていたことをお金の力で強化しようとすると、失敗する。
お金の力だけでは失敗する善意の力
読んでおくといい本
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私がお勧めする行動経済学の入門本『不合理だからうまくいく』ダン・アリエリー著
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