ある効用水準を達成するために必要な最低支出額(最低限の所得)を計算するための「支出関数(補償所得関数)」
- 支出関数(補償所得関数)とは?
- 求め方・計算方法は?
ヒックスの補償需要関数(D’)と混乱する人も多い支出関数を、分かりやすくまとめています。
支出関数(補償所得関数)とは?
支出関数とは
価格(P)と効用水準(U)で表される、最小支出額(補償所得)を計算する関数のこと。ある効用水準(U)を達成するためには、最低でいくら支出する必要があるのか(最低で所得がいくら必要か)?を計算することが出来る。
簡単な流れ
- 「ふつうの効用関数(U)」
↓ - 「補償需要関数(D’)」
↓ - 「支出関数(補償所得関数)(E)」
効用関数から順番に計算していくと支出関数が求められます。
計算問題がメインになるので、さっそく計算方法を見ていきましょう!
通常の効用関数・補償需要関数から求める
ポイント
効用関数が与えられていることが多いので、まずは補償需要関数(D’)を計算します。
例題
- 「U(x, y)=xy」のとき、支出関数を求める
① 価格や消費量を文字でおき、支出額を式で表す。
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- X財の消費量=x
- Y財の消費量=y
支出額(E)は「(X財の消費量×X財の価格)+(Y財の消費量×Y財の価格)」で決まるので「xPx + yPy」と置けます。
以上より「支出額(E)= xPx + yPy」です。
この「支出額(E)= xPx + yPy」は支出関数(補償所得関数)の前段階になるので、これを答えにしないでください。
② 支出(費用)最小化問題を解く
効用関数「U(x, y)=xy」と支出額「E=xPx + yPy」を使って、支出(費用)最小化問題を解きます。
解き方は効用最大化問題と同じです。方法は沢山ありますが、ここでは「予算制約線の傾き=限界代替率」を使って解きます。
(1)予算制約線の傾きを求める
E=xPx+yPyより
- E=xPx+yPy
- y=-(xPx/Py)+E/Py
- y=-(Px/Py)x+E/Py
(2)効用関数から限界代替率を求める
「U=xy」から「y=U/x」へ変形後に微分します。
- 「y=U/x」⇒「U/xの2乗(=U・xの-2乗)」
- 「U/xの2乗」に「U=xy」を代入
- 「U(=xy)/xの2乗」⇒「xy/xの2乗」=「y/x」
(3)予算制約線の傾き=限界代替率で効用最大化(最適消費点)を求める
「-(Px/Py)」=「-y/x」
- X財についての補償需要関数「x=(Py/Px)y」
- Y財についての補償需要関数「y=(Px/Py)x」
③ 支出額「E=xPx + yPy」のx,yに補償需要関数(D’)を代入する
- E=(Py/Px)y・Px + (Px/Py)x・Py
- E=「Py・y + Px・x」
- E=「yPy + xPx」
支出関数(補償所得関数)は「E=yPy + xPx」
ちなみに
途中で支出額を「E=xPx + yPy」と置いたのと、支出関数(補償所得関数)の答えが一緒になっていますが、たまたまです。
効用関数が簡単な形だったため、一緒になりましたが、普通は違った関数になります。