ミクロ経済学

【限界効用均等の法則・加重限界効用均等の法則】意味・例や公式を分かりやすく解説

2019年11月3日

いきなり教科書で登場してきて、イメージもしづらい「限界効用均等の法則

  • (加重)限界効用均等の法則とは?
  • (加重)限界効用均等の法則の公式
  • (加重)限界効用均等の法則の証明
  • 公式を使って最適消費点(効用最大化)を求める

「限界効用均等の法則」で分かりづらいポイントを、念入りにまとめています。

限界効用均等の法則・加重限界効用均等の法則

(加重)限界効用均等の法則

最適消費量(効用最大化)が実現する2財の消費の組合わせでは、1円当たりの2財の限界効用が等しく(均等に)なることを「限界効用均等の法則」と呼ぶ。

また、1円当たりの限界効用を「加重限界効用」と呼ぶため「加重限界効用均等の法則」と呼ばれることが多い。

限界効用逓減の法則をゴッセンの第一法則と呼ぶのに対して、ゴッセンの第二法則とも呼ばれる。

 

北国宗太郎
牛さん、さっぱり分からないです。
イメージできない人が多いけど、すぐに分かるようになるよ!
牛さん

 

例えば

  • 白米と鮭

「(加重)限界効用均等の法則」の説明のときに、よく登場するのがご飯とおかずです。

 

ご飯を食べていると「白米」「鮭」を交互に食べていきます。

白米を食べていると、途中で鮭を食べたくなります。これは、白米を食べ続けると「限界効用逓減の法則」により、1口あたりの得られる限界効用が減少していくためです。

「白米」の限界効用が減少するため、途中から「鮭」を食べた時の限界効用の方が高くなります

 

北国宗太郎
そのタイミングで「鮭」を食べ始めるんだね。
うん。ご飯の時は「得られる満足度が高い方」を食べ続けるんだ。
牛さん

 

ここで

食事が終わる直前を考えてみましょう。

私たちは「白米⇒鮭」「鮭⇒白米」という風に、食べるものを途中で変えます。これは、限界効用逓減の法則によって、同じものを食べ続けると得られる限界効用(満足度)が減少していくためです。

しかし、お腹がふくれてきて「白米」「鮭」どちらを食べても限界効用(満足度)が得られなくなっていきます。言い換えれば「どっちも、もう要らない」です。

 

最終的に、お腹がいっぱいになれば「白米」「鮭」もどちらも食べられなくなります。つまり、1口で得られる限界効用が、どちらも(等しく)「0」になっていると言えます。

仮に、白米の限界効用が「1」あるなら、まだ白米を食べ続けているはずです。つまり、もう食べられない=白米・鮭のどちらからも満足度が得られない状態なので「白米の限界効用(0)=鮭の限界効用(0)」と言えます。※分かりやすいように、どちらも限界効用=0になると考えています。

 

ポイント

「お腹がいっぱい」というのは、満足度がマックスで幸せな状態です。この状態を最適消費点(効用最大化)と考えれば、「最適消費点(効用最大化)では2財の限界効用は等しくなる」と言えます。

究極的には「白米1円分」「鮭1円分」のレベルで限界効用が等しくなると考えたのが「(加重)限界効用均等の法則」です。

 

北国宗太郎
なんとなくイメージ出来ました (鼻息荒く)
良かったです (汗)
牛さん

 

さらに詳しく

「(加重)限界効用均等の法則」がゴッセンの第二法則と呼ばれる理由

ゴッセンは「限界効用逓減の法則」「(加重)限界効用均等の法則」を唱えた経済学者です。

限界効用は初めが一番大きく次第に減少していく法則=「限界効用逓減の法則」をゴッセンの第一法則と呼びます。

「白米と鮭」の例で説明したように、最初に「限界効用逓減の法則」が表れて、最後に「(加重)限界効用均等の法則」が出現するという流れがあります。

つまり「限界効用逓減の法則(第一法則)」⇒「(加重)限界効用均等の法則(第二法則)」という関係になっています。

公式の数学的な証明

 

ポイント

「最適消費量(効用最大化)が実現する2財の消費の組合わせでは、1円当たりの2財の限界効用が等しく(均等に)なる」ことを式で表すと次の通りになる。

「MUx/Px」=「MUy/Py」

「X財の限界効用/X財の価格」=「Y財の限界効用/Y財の価格」

※X・Yどちらも財1単位当たりの限界効用・価格です。「X財1つを消化した時の限界効用」と「X財1つ当たりの価格」を意味しています。

 

「(加重)限界効用均等の法則」の公式的なものは上の通りです。

どうしてこうなるのか?を考えてみましょう。

 

ここで

  • 効用関数=U(x, y)
  • X財の価格=Px
  • Y財の価格=Py
  • X財の消費量=x
  • Y財の消費量=y

この時、最適消費点ならば、X財・Y財の限界効用が等しくなることを証明する。

まずは「効用関数=U(x, y)」からX財・Y財の限界効用を求めます

 

全微分する

  • 「効用関数=U(x, y)」を全微分します。

ポイント

ここでの全微分の意味は、効用関数(U)=「〇x」×「〇y」の「x」「y」の大きさが変化した時に、効用(U)の大きさがどんな変化をするか?を知るためです。

⇒「x」「y」の変化量(消費量)に対して、効用がどう増減するか=限界効用を求めることになります。

全微分の意味が分からなければ、「効用関数=U(x, y)」を全微分をすると「全体の効用の変化量=X財の限界効用×変化量 + Y財の限界効用×変化量」という式に変形できると解釈してください。

それぞれを文字に置き換える

  • 「x (X財の消費量)」の変化量を「dx」
  • 「y (Y財の消費量)」の変化量を「dy」
  • 最終的な効用(U)の変化量を「dU」

「d」は「ディー」などと呼びます。

  • 「∂U/∂x」=X財を消費した時の限界効用(MUx)
  • 「∂U/∂y」=Y財を消費した時の限界効用(MUy)

※「∂U/∂x」「∂U/∂y」が限界効用(MU)を表している理由はこちらで確認できます⇒ 限界効用・限界効用逓減の法則とは?求め方も含めて簡単にわかりやすく※「財が2つの場合」を参照

 

ポイント①

  • 左辺を「dU=0」とする

 

北国宗太郎
どうして「0」になるの?
まずは限界効用=0という状態がどんなことを表しているかを考えよう。
牛さん

 

「限界効用=0」は、限界効用が変化しないことを表す。

限界効用には「財を消費すればするほど次第に増加する効用も小さくなる」という限界効用逓減の法則があります。

経済学では、消費者は与えられた条件の中で「財を消費しても限界効用が増えない状態=0」まで財を消費すると考えています。

仮に、ある財を好きなだけ消費できると考えた場合、効用が得られる限り、消費者はその財を消費し続けます。そして、いずれ財を消費しても効用が得られない状態(限界効用=0)に到達します。

また、限界効用が「1」得られるなら、財をもう1つ消費する方が合計の効用が高くなります。つまり「限界効用=0になるまで消費を続ければ、自然と消費者の満足度が最大」になります。

 

この状態は、X財・Y財の2つでも同じです。通常は、X財・Y財も「限界効用=0」になるまで消費を続けると考えます。

 

ポイント

限界効用(MU)が最も効率的な場合、最終的な効用の変化量(dU)は「0」となる。

そのため、効用関数を全微分した式(左辺)を「dU=0」と考える。

ちなみに数学では、偏微分可能な2変数関数が(a, b)で極値をとる場合「(∂U/∂x)(a, b)」=「(∂U/∂y)(a, b)」=「0」になるという話があります。それと理屈は同じです。この証明をすると長くなるので置いておきます。

 

先ほどの式で見ると

 

ポイント②

  • 上の式に予算制約線の式を代入する

ここで予算額を「I」とします。

※予算=「(X財の消費量)×(X財の価格)」+「(Y財の消費量)×(Y財の価格)」となります。

  • 予算制約線「I=xPx+yPy

 

予算制約線を「y=」の形にする

 

ここで、先ほどの式は変化量を見ていた式なので、予算制約線も同じことをします。

それぞれを文字に置き換える

  • 「x (X財の消費量)」の変化量を「dx」
  • 「y (Y財の消費量)」の変化量を「dy」

 

注意ポイント

予算制約線の「y=I/Py-(Px/Py)x」ですが、変化量を見たい場合は「I/Py」は無視されます。

※「I/Py」は切片なので「y」「x」の消費量が変化しても、数字が変わりません。変化するのは下記の「消費量x・消費量y」のみで、「x」「y」が含まれていない「I/Py」は無視できる。

  • X財の価格=Px
  • Y財の価格=Py
  • X財の消費量=x
  • Y財の消費量=y

 

ちなみに「X財の消費量=x」を「dx」と置いたのは、変化量で考えているためです。

通常は「x=10」ならば「x財の消費量=10」という意味です。

しかし、変化量の場合は「dx(変化量)=40⇒消費量が10から50に変化した時」という意味合いになります。

 

最終的にコレ

 

上の式を、先ほどの式に代入します。

 

「dy」に代入する

あとは計算するだけです。ひとまず、ここまでの流れをまとめましょう!

 

ここまでの流れ

  1. 与えられた条件から限界効用を求めるために効用関数=U(x, y)を全微分する
  2. 全微分後の式で左辺を「dU=0」とする
  3. 予算制約線から「y=」の式を求める
  4. 1.で求めた式に合わせるために、3.の式にある「x・y」を「dx・dy」とする
  5. 1.の式に4.の式を代入して計算する

 

北国宗太郎
道のりが長いです。。
初めてだと手間取るけど、分かっちゃえば数分もかからず計算できるよ。
牛さん

 

実際に計算する

 

途中でも書きましたが「∂U/∂x」「∂U/∂y」は限界効用を意味します。

  • 「∂U/∂x」=X財の限界効用(MUx)
  • 「∂U/∂y」=Y財の限界効用(MUy)

※限界効用についてはこちらで確認できます⇒ 限界効用・限界効用逓減の法則とは?求め方も含めて簡単にわかりやすく※「財が2つの場合」を参照

 

上記の式から、最適消費点では2財の1円当たりの限界効用は等しくなったことが分かる。

 

北国宗太郎
ついに辿り着いた・・。
これで証明完了です。
牛さん

 

(加重)限界効用均等の法則

「MUx/Px」=「MUy/Py」

「X財の限界効用/X財の価格」=「Y財の限界効用/Y財の価格」

上の式は「MUx:MUy」=「Px:Py」と変形できる※ので、次のようにも言えます。

※「A/B=C/D」の両辺に「B/C」を掛けると「A/C=B/D」と出来ます。「A/C=A:C」です。

「X財の限界効用:Y財の限界効用」=「X財の価格:Y財の価格」

最適消費点の求め方

 

加重限界効用均等の法則は、効用最大化(最適消費を求める)問題で登場することが多いです。

例題を使って計算方法を見ていきましょう!

 

例えば

  • 効用関数U(x, y)=xy
  • X財の価格 (Px)=10
  • Y財の価格 (Py)=30
  • 予算=600

この時の最適消費量(効用最大化)を「加重限界効用均等の法則」を使って求める。

「MUx/Px」=「MUy/Py」

「X財の限界効用/X財の価格」=「Y財の限界効用/Y財の価格」

 

初めに

  • 「X財の限界効用」と「Y財の限界効用」を求める。

限界効用を求めるためには「効用関数U(x, y)=xy」を微分する必要があります。公式を求めるときは全微分をしましたが、実際の数字を計算する時は、xとyでそれぞれ偏微分をする事になります。

 

X財の限界効用(MUx)

「xy」をxで偏微分すると「1×y」なので「y」になります。

「xy」をxで偏微分する場合は「x」だけを微分すればOKです。「y」はそのままになります。ちなみに「x」は「x=(xの1乗)」なので、微分すると「1xの0乗」となり「1」となります。微分は「乗数を1減らして手前に持ってくる」という作業です。「0乗=1」になることも覚えておきましょう。

 

Y財の限界効用(MUy)

「xy」をyで偏微分すると「x×1」なので「x」になります。

 

以上より

  • X財の限界効用(MUx)=y
  • Y財の限界効用(MUy)=x

 

ポイント

「MUx/Px」=「MUy/Py」より「y/10」=「x/30」

最初に、X財の価格 (Px)=10・Y財の価格 (Py)=30と与えられていることを忘れずに。

両辺に30を掛けると「3y=x

 

次に

予算制約線の式を求めます。

与えられた条件から「600=10x+30y」と式を作れます。

最初に、予算=600と与えられているので忘れずに。

「y=」の式にする

  • 30y=-10x+600
  • y=-(1/3)x+20

予算制約線の式に「3y=x」を代入する。

  • y=-(1/3)・3y+20
  • y=-y+20
  • 2y=20
  • y=10

最後に

今度は「y=10」を予算制約線の式に代入する

  • 10=-(1/3)x+20
  • (1/3)x=10
  • x=30

したがって最適消費点は「x=30」「y=10」※(x, y)=(30, 10)とも表記できる。

 

北国宗太郎
最初の偏微分さえ間違えなければ簡単だね。
うん。あとは分数が出てきた時の微分のやり方とかを練習した方が良いよ。
牛さん

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