ミクロ経済学

【需要の価格弾力性】計算方法や問題の解き方を分かりやすく

2019年12月1日

需要の価格弾力性」は、問題でも頻出の分野です。

  • 需要の価格弾力性とは?
  • 弾力的・非弾力的な状態
  • 1のとき
  • 水平・垂直のとき
  • 交差価格弾力性
  • 価格弾力性の計算方法

需要の価格弾力性に関わる話を、このページに簡単にまとめました。

需要の価格弾力性とは

需要の価格弾力性

価格が変化するとき、どれくらい需要が変化するかを数値化したもの。

 

北国宗太郎
よく、必需品と贅沢ぜいたく品で弾力性が違うって話がある。
まさにその話だよ。
牛さん

 

需要の価格弾力性は次の式で表されます。

 

需要の価格弾力性(ε)の式

需要の価格弾力性(ε)=(需要の変化率(%)価格の変化率(%))

※ε=イプシロン
η=イータ(エータ)とする場合もあります。

 

価格弾力性の大きさ次第で、価格が変化したときの消費者の行動が変わるため、価格弾力性による分析が行われます。

 

実際に

価格弾力性の大きさで何が変わってくるのかを見ていきます。

需要の価格弾力性は、1より大きいか、1より小さいかで分類される

 

北国宗太郎
「1」という数字が基準になるんだね。
うん。先にその話をしよう!計算の方法は後で紹介するよ。
牛さん

 

弾力的な状態(ε>1)

価格弾力性(ε)が1よりも大きい(ε>1)

このとき、需要は弾力的という。

※ε=イプシロン

 

需要の価格弾力性が「弾力的」だと次のことが言えます。

  • 価格変化に対して、需要が大きく変化する
  • 少しの値上がりで、一気に需要が減る
  • 少しの値下がりで、一気に需要が増える

一般に、弾力的な財は「奢侈しゃし(ぜいたく品)」が多いと言えます。

 

例えば

タクシー

タクシーの初乗りが値上げしたら「少し歩こうかな」と思う人が増えて、タクシー需要が減ります

タクシーは「需要の価格弾力性が弾力的」で奢侈しゃし品(ぜいたく品)だと言えます。

 

海外旅行

円高/外国通貨安になると海外旅行の需要が一気に増えます。これは実質的に海外旅行が安くなり、需要が一気に増したためです。

海外旅行は「需要の価格弾力性が弾力的」で奢侈しゃし品(ぜいたく品)だと言えます。

 

さらに詳しく

もう少し細かく話すと、需要の価格弾力性が弾力的かは、他に代替できるもの(代替財)があるか?が重要になります。

  • タクシーが高いなら、電車や歩くことを選びます。
  • 為替の影響で海外旅行がだめなら、他の娯楽を探します。

一方で、お昼休みに「松〇」が近くにあるのに「松〇は値上げしたから、吉野〇を探そう」と考える人は、意外といません。

お昼時間は限られていますし、代替できるお店が無ければ、そのまま松〇で食事をします。

つまり代替できるものがある+時間がある」と需要の価格弾力性は、弾力的な傾向を持ちます

先ほどのタクシーの話なら「時間がなくて急いでいる」&「他に早く移動する手段がない」なら、初乗りの金額なんて気にせずに乗車しますよね。そういう場合は、弾力的にならないわけです。

※ただし、これも市場全体で見ればそういう傾向がある?程度の話です。

 

非弾力的な状態(ε<1)

価格弾力性(ε)が1よりも小さい(ε<1)

このとき、需要は弾力的という。

※ε=イプシロン

 

需要の価格弾力性が「弾力的」だと次のことが言えます。

  • 価格変化に対して、需要があまり変化しない
  • 値上げ(値下げ)しても、需要がさほど変わらない

一般に、非弾力的な財は「必需品」が多いと言えます。

 

例えば

電気代(水道光熱費)

電気代が値上げしても、電気の消費量を減らすのは一般的に難しいです。なので、電気代が値上げしたところで、電気の消費量はあまり変わりません

電気代(水道光熱費)は「需要の価格弾力性が弾力的」で必需品だと言えます。

 

食料品

食料品が値上げしても「何も食べない」という選択肢は取りづらいです。そのため、食料品の価格が上がっても、需要は減りづらい傾向にあります。

食料品は「需要の価格弾力性が弾力的」で必需品だと言えます。

 

 

さらに詳しく

教科書的には、食料品は非弾力的な傾向を持ちますが、それは種類によります

お米が主食の人なら、お米が値上げしても消費量はさほど減りません。しかし、お米・パン・カップ麺どれでもいい人は、値上げしていない食べ物を買います

個別の食品で見れば、非弾力的かは人の食生活に依存します。

そのような個別の案件を扱うと話が難しくなるので、食料品という大きなカテゴリーで見れば、食べなきゃ死ぬので、値上がりしても需要が減らない(非弾力的)と考えている程度に思ってください。

 

1のとき

価格弾力性(ε)が1のとき(ε=1)

弾力性が「1の弾力性を持つ(単位弾力的)」という場合があります。

※ε=イプシロン

 

需要の価格弾力性が「1」の場合は、弾力的でも、非弾力的でもない特別な状態です。

弾力性が1のとき、次の特徴があります。

 

ポイント

財の価格が変化しても、消費者の支出金額は変化しない

 

例えば

ある財に100円を支払うつもりなら、その財の価格が何円でも100円を支出するつもりがある、という状態です。

 

ココに注意

ときどき混乱する人がいるので注意していください。あくまで、支出金額が変わらないのであって、消費量は変化します

ある財が50円なら100円を支出して2個購入します。これが100円に値上げした場合、100円を支出して1個購入します。

価格が変化しても「支出金額=100円」ですが「購入量は2個→1個」と変化しています。

 

北国宗太郎
うわ~、、間違えそうです。
残念なことに、もう1つ間違えやすいポイントがあるんだ。
牛さん

 

更に注意

弾力性が1の場合、もう1点だけ間違えやすいところがあります。それが需要曲線の形状に関わる話です。

 

需要曲線が右下がりの直線なら価格変化と比例して財の消費量が変化します。

価格 支出額 消費量
10円 100円 10個
25円 100円 4個
50円 100円 2個
100円 100円 1個

 

 

しかし

需要曲線が右下がりにカーブしていると・・

価格 支出額 消費量
10円 50円 5個
25円 75円 3個
50円 100円 2個
75円 75円 1個
100円 50円 0.5個

 

 

北国宗太郎
支出金額が変わってる。これだと最初の話と違うね。
うん。ここが1番わかりづらい点です。
牛さん

 

実は

もともと価格弾力性は、価格が少しだけ変化した時(微小量の変化)に、需要量がどう変化するかを判断する指標です。

なので、需要曲線全体で見てしまうと「財の価格が変化しても、消費者の支出金額が変化しない」という話が当てはまらなくなってしまいます。

 

北国宗太郎
牛さん、さっぱり分かりません。
具体的な例を使って話をするね。
牛さん

例えば

  • 価格=100円
  • 消費量=100個

この時の支出額は「100円×100個=10,000円(1万円)」です。

ここで、需要の価格弾力性が1だとします。

価格が1%上昇すれば、消費量は1%減少します。※価格弾力性=1=-(-1%/1%)

需要の価格弾力性(ε)=(需要の変化率(%)価格の変化率(%))

 

すると・・

支出額は「101円×99個=9,999円(約1万円)」となります。

既に支出額が1円ずれてきましたが、ほぼ同じになります。

 

次に価格が5%上昇、消費量は5%減少で考えてみます。※価格弾力性=1=-(-5%/5%)

支出額は「105円×95個=9,975円」となります。

 

北国宗太郎
支出額が変わってきた。
価格の変化率が大きくなるほど、支出額も大きく変わってくるんだ。
牛さん

 

ポイント

財の価格が変化しても、消費者の支出金額は変化しない」という需要の価格弾力性(ε)が1のときの特徴は、価格変化が大きくなると当てはまらなくなる

もともと価格弾力性(ε)は、価格が少し動いたとき(微小の変化)に、需要がどれくらい変化するかの指標です。

そのため、価格が少しだけ動いた状況なら、上の特徴は当てはまりますが、そうではないと当てはまりません

 

需要曲線が右下がりの直線だと影響はないのですが、普通のカーブを描いた需要曲線だと、上の計算結果のように、支出額が変化していきます。

 

理由

価格変化が大きいと支出額が変わってしまう理由は、経済学の用語で説明できます。

同じ財を消費し続けると飽きてきます。これを限界効用逓減の法則と言います。

価格が5%安くなって、消費量が5%増えても、同じ財を消費していると飽きてきます。つまり、それだけ価値が減っているので、支払っても良いと思う金額は小さくなっているのです。

逆に、金額が高すぎると「他の財を買ったほうがいいや」と思うので、これも支払っても良いと思う金額が小さくなる原因になります。つまり、ほどほどの値段で、ほどほどの量を消費できる時が1番支出額が大きくなる

 

そして

需要曲線がカーブを描いているのは「限界効用逓減の法則」を反映しているためです。

価格変化が小さければ、限界効用逓減が働く余地が少ないので、価格弾力性=1のときの特徴財の価格が変化しても、支出額が一定になるが当てはまります

しかし、価格変化が大きいと、需要曲線がカーブを描くため誤差が大きくなります。

一方で、需要曲線が右下がりの直線の場合は、限界効用逓減が考慮されていません。そのため、需要曲線が右下がりの直線のみ、価格変化が大きくても常に支出額が一定になります。

完全に弾力的(無限大・水平)

価格弾力性(ε)が無限のとき(ε=∞)

このとき、需要は完全に弾力的という。

※ε=イプシロン

 

価格が変化すると需要量が物凄く大きく変化する。

現実世界にそのような財があるのかと言うと、基本的に存在しないと考えてOKです。限りなく水平に近いような状態の財はあるかもしれませんが、完全に弾力的とはなりません。

 

完全に非弾力的(0のとき・垂直)

価格弾力性(ε)が0のとき(ε=0)

このとき、需要は完全に弾力的という。

※ε=イプシロン

 

価格が変化しても需要量が変わらない状態です。

例えば「不死の薬」とか「ゴッホのひまわり」は、価格がいくらでも需要がありそうです。しかし、それにも限度があります。「ゴッホのひまわり」が1000兆円と言われたら、まあ、別に要らないと考える人がたくさん出てきます。なので、完全に非弾力的な需要というのも、現実世界にはないと考えられます

需要の交差価格弾力性

 

需要の交差価格弾力性

2財のケースで、一方の財の価格が変化するとき、他方の財の需要がどれくらい変化するかを表したもの。

 

通常の価格弾力性は、財が1つの場合を想定しています。

「交差価格弾力性」は、財が2つある時の話です。

 

交差価格弾力性の式

ある財の価格の変化率他方の財の需要量の変化率

 

交差価格弾力性から「(粗)代替財」「()補完財」を判断できます。

 

ある財が価格上昇した時に、他方の財の需要量が

  1. 増える交差価格弾力性が+
  2. 減る交差価格弾力性が-

増える(交差価格弾力性が+)なら、他方の財は「代替財

減る(交差価格弾力性が-)なら、他方の財は「補完財

 

交差価格弾力性は、もう一方の財が「代替財」か「補完財」かを判断するような状況で登場します。

ここでは、これ以上の深堀はしません。

「需要の価格弾力性」の求め方(計算)

 

計算問題では需要の価格弾力性の式を使います。

 

需要の価格弾力性(ε)の式

需要の価格弾力性(ε)=(需要の変化率(%)価格の変化率(%))

=-「ΔD/D」/「ΔP/P」

Δデルタ= (変化後の数字)-(変化前の数字)で求められます。ただし、微分が必要なときは微分して求めます。

 

「変化率」の求め方が大きく2パターンあり、どのような場面で使い分ければ良いかも簡単に説明していきます。

 

通常の計算で求める

 

微分を使わずに、普通に計算するパターンです。

普通に計算できるのは、変化前と変化後の数値が分かる場合です。

 

例えば

  • 価格が1,000円で、消費量(需要量)が250の財がある
  • その財は、価格が1,100円になり、消費量が200となった。

需要の価格弾力性を求めて、この財が奢侈しゃし品か必需品かを判断する。

 

計算方法

変化前と変化後の数値が分かるため、微分をせずに普通に計算します。

  • 価格変化:(1,100-1,000)/1,000=0.1
  • 需要変化:(200-250/250)=-0.2

-(需要の変化率-0.2)/(価格の変化率0.1)=2

需要の価格弾力性が1よりも大きいため、この財は奢侈品である。

 

北国宗太郎
練習すれば簡単に解けるようになりそう。
そうだね。問題は微分が必要になる時だよ。
牛さん

 

微分で求める

 

微分を使うのは、変化前と変化後の数値が分からない場合です。

微分を使うときは、さきほどの式を変形します。

 

需要の価格弾力性(ε)の式

需要の価格弾力性(ε)=-(需要の変化率(%)/価格の変化率(%))

=-「ΔD/D」/「ΔP/P」
ΔDΔP」×「PD
需要の変化量(ΔD)価格の変化量(ΔP)」×「元の価格(P)元の需要量(D)

 

北国宗太郎
式を変形しないといけないの?
うん。「ΔD/ΔP」を微分で求めるんだ。
牛さん

 

問題文に「変化前の数字」「変化後の数字」の情報が無ければ、微分をして、変化量を求めることになります。

 

例えば

  • 財Aの需要曲線が「D=-10P+1,000」
  • 財Aの供給曲線が「S=40P」

このとき、市場均衡点における需要の価格弾力性はいくらか?

 

均衡点は「需要曲線と供給曲線が交わる」という事を意味しているので「D=S」として計算します。

  • -10P+1,000=40P

次に均衡点における市場価格を計算します。

  • 50P=1,000
  • P=20

 

「D=-10P+1,000」に市場価格のP=20を代入します。

  • D=-200+1,000=800

これで、市場均衡点における価格と需要量(消費量)が分かりました。

  • P=20
  • D=800

 

次に

変化後の数字を微分で求めます。

「D=-10P+1,000」をPで微分します。

すると「(ΔD/ΔP)=-10」となります。

微分は乗数を1つ減らして手前に持ってくる計算です。-10Pは「-10×Pの1乗」です。「Pの1乗」の1を手前に持ってきて「-10×1=-10」とします。また、Pの0乗になりますが「0乗=1」なのでP=1でPが消えます。文字がついていない「+1,000」も無視されます。

 

以上より

  • P=20
  • D=800
  • (ΔD/ΔP)=-10

パーツがそろったので、先ほどの式に当てはめます。

ΔDΔP」×「PD
需要の変化量(ΔD)価格の変化量(ΔP)」×「元の価格(P)元の需要量(D)

 

  • 価格弾力性(ε)=-(-10)×(20/800)
  • =10×(1/40)
  • ⇒ 1/4=0.25

 

北国宗太郎
微分が出来れば何とかなりそうです・・。
問題をたくさん解きましょう!
牛さん

関連コンテンツ



-ミクロ経済学
-, ,