ミクロ経済学

効用とは何か?経済学的な意味と関連する話を紹介!

2019年9月23日

効用(Utilitiy)」は、経済学で登場する考え方で、満足感や幸福度を表す単語です。

特に近代の経済学は「効用」という考え方をベースに話が進みます。

  • 効用とは?
  • 人は効用を最大化して行動する
  • 経済学の効用・選好の定義
  • 効用にまつわる経済学の話

効用を理解して、経済学の考え方を知ろう!

効用とは?

 

効用とは?

経済学で使われる用語で「財・サービスを消費した時に得られる満足度」のこと。

あくまで主観的な評価で、同じものを消費しても人それぞれ得られる効用は違う。

 

北国宗太郎
経済学ではどうして効用(満足度)が重要になるの?
まず、効用という考え方自体が画期的だったんだよ。
牛さん

 

経済学の中で「効用(満足度)」という考え方が広まったのは1870年代です。それまでは、労働価値説という考え方が主流でした。

 

労働価値説

  • モノの価値は、投入された労働量で決まる

時給1,000円の人が1時間かけて作った料理は、1,000円の価値がある。

※厳密な話をすると論点がたくさんあるので簡単に。

 

労働価値説は、経済学の主流だった「古典派経済学」の価値観です。

 

労働価値説の始祖「ウィリアム・ペティ」

(Wikipediaより・1623~1687年)

1662年に出版された『租税貢納論』に労働価値説に近い指摘がある。

労働価値説の確立「アダム・スミス」

(Wikipediaより・1723~1790年)

1776年の『国富論』で労働価値説について言及している。

 

北国宗太郎
1600年代・1700年代ってかなり古いね。
うん。そんな時代が終わって1870年代に変革が起きたんだ。
牛さん

 

効用価値説

  • モノの価値は、満足度で決まる時代へ

料理の価値は、食べた人の満足度で決まる。

 

効用価値説は、経済学の主流だった「古典派経済学」の価値観です。

 

ウィリアム・S・ジェヴォンズ

(Wikipediaより・1835~1882年)

『経済学理論(1871年)』で限界効用という概念を初めて説明した。

カール・メンガー

(Wikipediaより・1840~1921年)

『国民経済学原理(1871年)』で限界効用に関する経済学をまとめた。

 

北国宗太郎
変革って同じ時期に起きるから面白いよね。
そうだね。そしてもう1人が超有名です。
牛さん

 

レオン・ワルラス

(Wikipediaより・1834~1910年)

すべての経済学者の中で最も偉大と言われる人物。上の2人と同じく効用という考え方で経済学を変革した人物の1人。1874年に出版された『純粋経済学要論』で一般均衡理論がまとめられている。

 

経済学を変革した「一般均衡理論」で”効用”という考え方を用いた

消費者は自分の「効用 (満足度)」を最大化するために、生産者は「利益(=効用)」を最大化するために、すべての財・サービスの需要と供給が決まる。

その結果、すべての財・サービスの(均衡)価格が決まると主張したのがワルラスです。

 

さらに詳しく

ガソリンの価格が上がったら車で移動することが減ります。その結果、家族旅行が減ります。旅行に行かない分、家で映画を見るなど動画需要が増えます。こんな風に、すべての市場は関連していますが、そんな中でも全ての市場が均衡するポイント(均衡価格)がある、というのがワルラスの一般均衡理論です。

 

北国宗太郎
今の経済学に近い考え方だね。
うん。1870年代を境に「効用」が経済学の主流な考え方になったんだ。
牛さん

経済学では1870年代の一連の変革を「限界革命」と呼ばれます。※財を1単位消費した時に得られる効用(満足度)を「限界効用」と言うため、その”限界”から来ている。

 

こうして「効用」は今現在でも経済学の主流の考え方となっています。

 

人は効用の最大化を目指す

 

ポイント

ワルラスの一般均衡理論でも触れましたが、現在の経済学では「人は効用を最大化するように行動する」と考えています。

 

北国宗太郎
自分の満足度が高くなるように行動するのは普通だよね。
うん。1870年代以降の経済学で基本となっている考え方だよ。
牛さん

 

例えば

経済学では需要と供給の関係を分析することがあります。

その分析も「消費者が自分の満足度(効用)を最大化することを目指す」という前提があってこそ機能します。

昼飯に牛丼を食べると満足度が高まる人が、なぜか不味いラーメン屋へ行くことはありません。そんな人が居ると、需要と供給の関係性がおかしくなります。

 

効用と選好の関係

 

合理的な選好

  1. 完備性(Completeness)を満たす
  2. 推移性(Transitivity)を満たす

※「選好」はどちらを好んで選ぶか?という意味合いがある。

 

人は「効用が高まる方を好んで選ぶ」と経済学では考えている。

その時のルールが2つあります。

 

完備性

  • AとBがあれば、必ずA≧B・B≧Aとなる。

 

推移性

  • A>B, C>Aなら C>Bが成り立つ

 

例えば

ラーメン>蕎麦 >パスタ という選考を持つ人は、ラーメンを食べると1番効用が高まります。なので、特別な事情が無ければ3つの選択肢が出されたらラーメンを選びます。

ちなみに

ミクロ経済学で登場する「効用関数」は完備性・推移性の2つを満たすことを前提にしています。

 

効用にまつわる経済学の話

 

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