生産者理論では「等費用線」がしっかり扱われないケースもあるので、基本的な内容を理解することが重要です。
- 等費用線とは
- 等費用線の傾き・生産要素の価格比
- 等費用線のシフト
等費用線の基礎的な話を分かりやすくまとめました。
等費用線とは?
等費用線とは
生産コストが一定となる生産要素(資本・労働)の組合わせを表した直線。
例えば
- 企業の予算 1,000万円
- 機材1台あたりの購入費(レンタル料) 200万円
- 雇用者1人あたりの賃金 25万円
この時「1,000万円で、どのような生産要素の組合わせが実現できるか」を示したのが等費用線です。
実際の数式で考えてみる
- 企業の予算(コスト総額)=「C」
- 機材1台当たりの購入料=「r」
- 雇用者1人あたりの賃金=「w」
- 資本の投入量=「K」
- 労働の投入量=「L」
「C」は「Cost(費用)」の略です。「r」は「Interest rate(利子率)」の略です(「I」では「Investment(投資)」や「数字の1」と紛らわしいので「r」と置くの通例です)。「w」は「Wage(賃金)」の略です。
この情報から、等費用線を求めると次の通りになります。
等費用線の式
「C」=「rK」+「wL」
※コスト = (資本の価格)×(資本の投入量)+(労働の価格)×(労働の投入量)
グラフで見ると
等費用線の傾きと要素価格比
ポイント
等費用線で重要になるのは「傾き(要素価格比)」です。
等費用線の傾き
- 等費用線の傾きを「要素価格比(相対要素価格)」と呼ぶ
- 等費用線の傾きは2つの生産要素の交換比率を表す
ポイント
等量曲線の傾きを「技術的限界代替率(MRTS)」と呼んだように、等費用線の傾きは「要素価格比」と呼びます。
要素価格比は2つ生産要素の交換比率を表していますが、等量曲線と組み合わせて費用最小化点を求めるさいに必要な情報になります。
まずは、等費用線の傾きを求めます。
グラフで描いている弧の部分が等費用線の傾きです。
「縦軸(K)=」の式に変形する
変形完了!
等費用線の傾き=「-(w/r)」
ここで「r」「w」は、2つ生産要素の価格を表していたことを思い出してください。
- 資本(K)の価格=「r」
- 労働(L)の価格=「w」
ポイント
等費用線の傾きは、2つ生産要素の価格比になっている(等費用線の傾きを要素価格比と呼ぶのは、2つの生産要素の価格比になるからです)。
※例えば「1/2」を比率で表すと「2:1」と表現できます。
※「縦軸=労働量」「横軸=資本量」ならば「-(r/w)」となります。
交換比率
等費用線の傾き(要素価格比)=「w/r」は「r:w」とも表記できます。
つまり、要素価格比は[価格基準で考えたとき「資本1単位」と「どれくらいの労働力」と交換できるか]を表した交換比率とも言えます。
「-(w/r)」はマイナスですが、ここでは計算をするわけではないので無視します。例えば角度40度の部分を裏から見ても、角度40度に変わりはありません。
ちなみに①
「傾き」に焦点を当てましたが、切片を文字で表してグラフを書くと次の通りになります。
それぞれの切片は「費用(C)」を「資本の価格(r)・労働の価格(w)」で割った数字になります。
ちなみに②
- 等費用線の傾き(要素価格比)
- 等量曲線の傾き(技術的限界代替率)
この2つを使って、費用最小化点を求めることになります。
等費用線のシフト(変化)
ポイント
- 費用が増減した場合
- 生産要素の価格が増減した場合
それぞれで等費用線がどのようにシフト(変化)するかをおさえる。
step
1費用が増加(減少)した場合
費用が増減した場合は、等費用線が平行移動します。
- 増加する場合は、右上に平行移動
- 減少した場合は、左下に平行移動
※増減後の費用(C)を「’」を付けて「C’」などと表記します。また、資本・労働の投入量(K・L)も変化するので「K’」「L’」としています。
step
2生産要素の価格が増加(減少)した場合
生産要素の価格が変化した場合、等費用線は次のように動きます。
- 価格が上昇した場合は、内側へ移動する
- 価格が減少した場合は、外側へ移動する
ちなみに、価格が上昇すると投入量が減るため、等費用線は内側(原点方向)に移動します。上のグラフなら「縦軸(資本量)を交点に、横軸(労働量)がより内側(時計回り)にシフトする」などと表現できます。
※価格変化後の資本価格(r)を「'」を付けて「r ’」と表記します。また、資本・労働の投入量(K・L)も変化するので「K’」「L’」としています。
ちなみに
資本のレンタル料(r)が変化した場合は