政府が課税したときに税収・死荷重がどうなるのかを見ていきます。
- 従量税・従価税とは
- 定額税(固定一括税)とは
- 政府余剰(税収)と死荷重の分析
従量税・従価税とは
従量税・従価税とは
〇従量税は生産量に応じて課される税金のこと。1個当たり○○円と設定される税金。有名どころは酒税です。お酒は1リットル当たりで課税されています。
〇従価税は価格に応じて課される税金のこと。1円当たり○%・○円と設定される税金。消費税が従価税に該当します。
従量税と従価税のどちらを課しても、供給曲線を上方向へシフトさせます。
ポイント
従量税を課すと供給曲線は真上にシフトしますが、従価税を課すと供給曲線は回転しながら上方向へシフトします。
税金と供給曲線のシフトについてはこちらで確認してください⇒【定額税・従量税・従価税】供給曲線のシフトと計算方法
余剰分析を行うときは従量税・従価税をまとめて考えることが多いです。理由は、どちらも消費者余剰・生産者余剰・政府余剰(税収)・死荷重が同じように得られるためです。もちろん、各経済主体が得られる割合に違いは出ますが、政府の税収・死荷重が発生するという結果は変わりません。
ここからは従量税を使って余剰分析を行っていきます(もちろん、そこで得られた結果は従価税でも同様に分析が可能です)
総余剰と政府余剰(税収)・死荷重
ポイント
政府が税金を課すと供給曲線が上方向へシフトして、市場価格より高い値段で商品・サービスが取引される。
グラフで見ると
政府が課税したことにより、供給曲線が上方向へシフトします。その結果「P*1」で価格が決まり「Q*」で生産量が決まります。
政府余剰(税収入)と死荷重
課税により市場均衡点から外れたところで価格と数量が決まるため死荷重が発生します。
- 点B
- 均衡点E
- 点A
この3つの点からなる三角形部分が死荷重(社会的損失)となります
社会的損失=「三角形B・E・A」
また、次の四角形で囲まれた部分が政府余剰(税金収入)となります。
- P*1
- 点B
- 点A
- P*2
もう少し詳しく
政府の課税により、点A→点Bの距離分だけ供給曲線が上方向へシフトしたと分かります
生産量「Q*」のとき
- 点Aは課税前の供給曲線
- 点Bは課税後の供給曲線
点A→点Bの移動距離=課税によって供給曲線がシフトした分となる。
ポイント
政府余剰(税金収入)は次の2つの情報から計算できる
- 課税によって価格が上昇した分
- 課税の影響を受ける財の数量(=生産量)
税金による価格上昇分「(P*1-P*2)」と、その影響を受ける生産量「Q*」の2つを掛ければ政府余剰(税金収入)が求められると考えています。
最後に
消費者余剰(CS)と生産者余剰(PS)は‥
消費者余剰は
次の三角形で囲まれた部分
- 点P2
- 点B
- 点P*1
生産者余剰は
次の三角形で囲まれた部分
- 点P*2
- 点A
- 点P0
ちなみに
このように表現しても、消費税余剰・生産者余剰・政府余剰・死荷重の面積はどれも同じになるので間違いではありません。
ただし、一般的には(どの教科書も)最初に表示した描き方をします。また、従量税ではなく従価税でこれをやると間違いになるので注意してください。
まとめ
課税によって、均衡取引量よりも少ない取引量しか実現しない(価格も高止まりする)ため死荷重が生まれ、経済的に非効率となることが分かる。
計算方法
例えば
- 財Aの需要曲線が「D=-20P+500」
- 財Aの供給曲線が「S=30P-150」
政府が次の税金を課すとき、消費者余剰・生産者余剰・政府余剰・死荷重はいくらか?
- 1単位当たり10の従量税
- 1円当たり20%の従価税
①従量税・②従価税どちらのケースでも必要な情報を計算する
はじめに市場均衡点を求めるために「D=S」として計算します。
- -20P+500=30P-150
次に均衡点における市場価格を計算します。
- 50P=650
- P=13
「S=30P-150」に市場価格のP=13を代入します。
- S=390-150=240
これで、市場均衡点における価格と供給量(生産量)が分かりました。
グラフで見ると
まずは2つの切片(?)の値が必要です。
- ①需要曲線「D=-20P+500」を「P=●●の形(逆需要関数)」にする
20P=-D+500
P=(-D+500)/20
切片なので横軸の需要量(D)は0となります
グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。
P=(-0+500)/20
P=(500)/20
P=25
- ②供給曲線「S=30P-150」を「P=●●の形(逆供給関数)」にする
30P=S+150
P=(S+150)/30
切片なので横軸の供給量(S)は0となります
グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。
P=(0+150)/30
P=(150)/30
P=5
以上より
①従量税
②従価税
定額税(一括固定税)の余剰分析
定額税(一括固定税)
生産量や価格に関係なく、一定額を課す税金のこと。身近なものだと住民税(の均等割)があります(日本に住むと所得に関係なく、必ず数千円の納税義務が発生します)。
企業の話をすると法人住民税の均等割りが定額税に近いです。資本金や従業員数によって納付額が変わりますが、会社が存在しているだけで必ず課されます。
定額税の話はこちらで確認してください⇒【定額税・従量税・従価税】供給曲線のシフトと計算方法
ポイント
定額税(一括固定税)を課しても供給曲線がシフトしないため死荷重は発生しない。
更に
従量税・従価税は、市場で取引(製造販売)しようとすると発生(市場での取引に対して課税)するが、定額税は市場で取引しなくても課税されます。
余剰分析は、あくまで市場を通して発生した余剰や死荷重を分析するのが目的です。市場での取引に関係なく課税される定額税では、供給曲線にも影響与えないため均衡点で取引を行った場合と同じ総余剰が実現(変化なし)します(死荷重が発生しないと考えます)
政府余剰は?
政府が「この分は税金で頂きますね。」とした分が政府余剰(税金収入)です。ここでは「四角形P*1・点B・点A・P*2」の部分。
定額税(固定一括税)では、生産量や価格に影響を与えない(供給曲線をシフトさせない)ので死荷重が発生しません。