エッジワース・ボックス(純粋交換経済)の項目で登場する契約曲線について基礎知識をまとめています。
- 契約曲線とは?
- 契約曲線のグラフ
- 契約曲線とコア配分
- 計算方法・求め方
契約曲線とは
契約曲線
エッジワース・ボックスで、パレート効率的(パレート最適)な資源配分が実現している点を結んだ線(パレート最適が実現する点の軌跡)のこと。
グラフで見ると‥
ポイント①
ポイント①
契約曲線上では、2人の消費者の限界代替率(MRS)が常に一致している。
参考:限界代替率・エッジワース・ボックス
パレート効率的な資源配分では、2人の消費者の限界代替率が一致します。
つまり、パレート効率的な資源配分の軌跡である契約曲線上は「常に2人の消費者の限界代替率が一致している」ことになります。
これは計算問題とかで使うので、頭の片隅にでも入れておきましょう。
ポイント②
ポイント②
契約曲線上はすべてパレート効率的ではあるが、それぞれの資源配分が実現できるかは初期保有・財の価格比に依存する(パレート効率的ではあっても、全てが競争均衡配分というわけではない)。
契約曲線は「このエッジワース・ボックス内なら、この部分が効率的な資源配分ですよ」ということを示しています。
しかし、効率的な資源配分だからと言って、実現が出来るかどうかは分かりません。
例えば
2人の初期保有は下記の通り いま2人が財の交換を行います。
ここで
財の交換をした結果
- Aさん(X財=21・Y財=9)
- Bさん(X財=1・Y財=1)
となるでしょうか?
相手がジャイアンではない限り、普通に考えればここまで偏った資源配分にはなりません。
普通に考えると‥
- Aさん(X財=11・Y財=5)
- Bさん(X財=11・Y財=5)
という風になるのが自然です。
これが「契約曲線上はすべてパレート効率的な資源配分だけど、どの資源配分が実現できるかは初期保有に依存する」という意味になります。
コア配分
はてな
初期保有点よりもパレート改善が実現する領域で、かつ契約曲線上にある資源配分のことを「コア配分」と呼ぶ。
いま、2人の消費者の初期保有が次のようになっている。
初期保有点よりもパレート改善となる資源配分は・・?
パレート改善は「誰かの効用水準を下げることなく、誰かの効用水準を高める」という意味です。
例えば
Aさんの効用水準を下げないで、Bさんの効用水準を高めます。
Bさんの効用水準を高める(無差別曲線を移動していく)
Aさんの効用水準を変えずに、Bさんの効用水準は点Aまで高めることが出来ます。
Aさんのオレンジ色の無差別曲線上なら、どの部分も同じ効用水準なので、ぎりぎり(点A)までBさんの無差別曲線を移動させることが出来ます。
Aさんの無差別曲線からはみ出た部分は除く
以上より
ポイント
「初期保有点W・点A・点C・点B」内の資源配分なら、初期保有点(W)よりもパレート改善が実現する。
「初期保有点W・点A・点C・点B」の領域内にある契約曲線に注目します。
この点A~点Bの契約曲線部分をコア配分と言います。
- 初期保有点よりもパレート改善が実現する領域
- かつ、パレート最適が実現する資源配分(契約曲線上)
この2つの条件を満たす部分がコア配分と呼ばれます。
問題で「コア配分」はどの部分か?などの問いがあったりするので、しっかりと覚えておきましょう。
計算方法(例題)
いま、2人の消費者(Aさん・Bさん)が2種類の財を保有している。
- AさんはX財20個・Y財80個
- BさんはX財80個・Y財20個
また2人の効用関数は以下の通りである。
- Aさん「U=3xy」
- Bさん「U=2xy」
契約曲線を求める
step
1限界代替率を求める
ポイント
効用関数(無差別曲線)を微分すれば「傾き(限界代替率)」が求められます。
参考:最適消費点の計算方法
- Aさんの効用関数「U=3xy」より
「y=U/3x」とする
「y=U/3x」を微分すると⇒「U/-3xの2乗(=U・-3xの-2乗)」
ちなみに分数は「(1/2)=2の-1乗」なので注意しましょう。
ここで
「U」という文字が邪魔なので、Uを「xとy」に置き換えます。
「U=3xy」を「U/-3xの2乗」に代入します。
「U(=xy)/-3xの2乗」⇒「3xy/-3xの2乗」=「-(y/x)」
Bさんの限界代替率も同様に求めると「-(y/x)」となります。
以上より
- Aさんの限界代替率=「-(y/x)」
- Bさんの限界代替率=「-(y/x)」
step
22人の資源配分を考慮する
問題文の情報より各財の総量は‥
AさんはX財20個・Y財80個
BさんはX財80個・Y財20個
- X財の総量=100個
- Y財の総量=100個
ポイント
- AさんがX財を「x個」消費するとき、Bさんは「100-x」を消費
- AさんがY財を「y個」消費するとき、Bさんは「100-y」を消費
また、Bさんの2財の消費量は「100-y」「100-x」と表現できるので、Bさんの限界代替率を「-(y/x)=-(100-y)/(100-x)」と考えます。
以上より
- Aさんの限界代替率=-(y/x)
- Bさんの限界代替率=-(100-y)/(100-x)
ここで、契約曲線上では2人の限界代替率が等しいことを思い出します。
つまり「(y/x)=(100-y)/(100-x)」となります。
計算がややこしくなるのでマイナスは消しました。
後は「(y/x)=(100-y)/(100-x)」を計算して「y=○○x」などの形にすればOKです。
契約曲線は「(縦軸)=(横軸)」という式になる。
(y/x)=(100-y)/(100-x)
(y/x)(100-x)=(100-y)
(100y-xy/x)=(100-y)
(100y-xy)=(100-y)x
100y-xy=100x-xy
100y=100x
y=x
契約曲線は「y=x」
ちなみに
「y=x」ということは、契約曲線はグラフのような直線になります。