貿易を行った場合の余剰分析(余剰・死荷重)を一通り確認して、最後に簡単な計算問題を解きます。
ポイント
貿易取引に対する余剰分析では、大きく2つの貿易形態を考える
- 自由貿易
- 保護貿易
さらに「保護貿易」の場合には、関税・輸入(輸出)割当・補助金などの政策が行われ、対象国が小国か大国かで結果が異なる。
自由貿易の総余剰・死荷重
自由貿易
政府が貿易に対して規制や補助を全く行わないケース。
ポイント
まず輸入を考えます。自由貿易を行うと生産者余剰は減少するが、消費者余剰がそれ以上に大きくなるため総余剰で考えるとメリット大きい。
自由貿易のデメリットは、国内生産者がグローバルな競争に巻き込まれる(生産者余剰の減少として表される)ため国内産業が育たない可能性や、生産者の収入減少により結果的に国内経済へ悪影響を与える可能性がある。
グラフで確認する
いま、通常の国内取引だけで次のように消費者余剰と生産者余剰が決まっている。
自由貿易を行うと
- 消費者余剰=三角形 P2・点B・P*
- 生産者余剰=三角形P*・点A・P0
貿易により安い商品が輸入されたことで価格が「P*」へ下落します。すると消費者は「Q*」まで商品を購入・消費できるようになります。
一方で、価格「P*」よりも高い価格で商品を製造販売している生産者は撤退を余儀なくされます。そのため、市場価格「P1」で取引していたときよりも生産者余剰が小さくなります。
総余剰で考えると
最終的に、自由貿易を行うと総余剰が三角形点A・点E・点Bの部分だけ増加します。
輸出をする場合は‥
- 消費者余剰=三角形 P2・点A・P*
- 生産者余剰=三角形P*・点B・P0
国内の市場価格「P1」よりも高い値段「P*」で製造販売しても貿易により輸出することが可能です。生産者は貿易により利益を拡大させることが出来るため生産者余剰が拡大します(価格の上昇により国内の消費量は減少するが、外国でたくさん売ることが出来るため生産者余剰が拡大している)。
一方で、輸出を目的として、市場均衡点よりも過剰に生産が行われるようになります。製造のための土地・人手の奪い合いとなり、結果的に製造販売費が増加して、国内では市場価格「P1」よりも高く商品が販売されるようになります。
そのため、消費者は市場価格「P」よりも高い価格「P*」で商品を購入・消費することになり、貿易をする前と比べて消費者余剰が減少します。
「輸出をすると国内価格も上昇する」というのはイメージし辛いかもしれません。なので、日本史で登場する有名なケースを紹介しておきます。
日本が開国後(ペリーが来て数年後)、大量の輸出を行った結果、国内で物価上昇が引き起り、庶民の生活を圧迫したという話があります。よくある説明が「輸出を大量に行ったので、国内の物資が不足して価格上昇した」というものです。
(生糸・Wikipediaより)
(富岡製糸場の正面)
このとき、特に生糸・茶などが輸出のメインでしたが、生糸はカイコ(昆虫)の繭から作られます。虫(原材料)は無限にいるわけではないので、生産を拡大すればするほど希少価値が高くなり価格上昇を招きます。
これを「国内の市場均衡点よりも過剰に生産を行っているので、製造販売費が高くなっている」と考えれば、製造販売費の高騰(原材料の昆虫の取りあい)によって、国内価格も引きづられて価格上昇を招いた。
その結果、消費者は市場価格よりも高い価格で購入するため、消費者余剰が減少(庶民は困窮)した、と言えます。
総余剰は‥
輸出を行う場合でも総余剰が三角形点A・点B・点Eの部分だけ増加します(先ほどの話なら、輸出によって庶民は苦しむけど、国全体で見ればメリットが大きいよね、ということを意味しています)。
というわけで、次に保護貿易を見ていきます。
保護貿易の総余剰・死荷重
保護貿易
政府が貿易に対して規制や補助を行うケース。ここでは次の政策を考える。
- 関税
- 輸入規制・輸出規制
- 補助金
ポイント
保護貿易では国の影響力によって分析結果が異なります。
- 小国~世界経済に影響力がない
- 大国~世界経済に影響力がある
ここで言う”経済に影響力”があるないの基準は、国際価格(交易条件)に影響を与えるかです。例えば、その品物を大量に輸入・輸出している(市場のシェア率が高い)ため、一国の消費量・生産量の大小によって国際価格へ影響を与える国を大国、そうではない国を小国と表現しています。
ここからは、輸入を行ったケースに絞って余剰分析をしていきましょう!(輸出補助金のみ例外)
関税をかける(小国のケース)
関税
国外から輸入されてくる商品(もしくは国外へ輸出する商品)に対して、政府が税金(関税)をかける政策。おもに、国内の生産者などを保護する目的で実施される。
グラフで見る
ある商品の貿易(輸入)を行っているときの消費者余剰・生産者余剰が決まっている。
ここで、国内生産者が格安な外国商品によってダメージを受けているため、政府が外国商品の輸入時に関税をかけることにした。
関税を導入する前は「P*1」で価格が決まっていましたが、関税分だけ価格が上昇するため「P*2」で価格が決まります。
関税を課した結果、価格が上昇したことで、国内生産者が供給できる量が増えます
- 「P*2・点C・点A・P*1」の分だけ生産者余剰が増加します
- 「P*2・点D・点B・P*1」の分だけ消費者余剰が減少します
ここで
価格「P*2」より
- 消費者は「Q2」の消費量が実現
- 生産者は「Q1」の生産量を供給
「Q1⇔Q2」の差分は輸入量となります
- 四角形「点C・点D・点G・点F」が政府余剰
「Q1」と「Q2」の差分が輸入量なので、輸入量と関税(価格「P*1」と「P*2」の差額分)を掛けた部分が政府余剰(関税収入)となります。
死荷重
2つの三角形「点A・点C・点F」と「点G・点D・点B」が死荷重となる。
輸入割当を行う(小国のケース)
輸入割当
国外から輸入されてくる商品(もしくは国外へ輸出する商品)に対して、政府が国内販売量を制限する政策。日本では水産物(水産資源の管理を目的・参照)や特定地域(北朝鮮など)からの品物に対して一定の制限を設けている。
※ちなみにWTO(世界貿易機関)のルールでは、輸出入に対して数量制限を設定するのは原則禁止としています。こうした制限を設けるには何かしらの理由が必要ということです。
ちなみに
割当なので、政府から輸入枠を割り当てられた企業・団体がその品物を輸入できます。ここでは、輸入枠を割り当てられた会社・団体をまとめて「貿易業者」と表現します。
グラフで見る
ある商品の貿易(輸入)を行っているときの消費者余剰・生産者余剰が決まっている。
ここで、水産資源の保護管理を目的に、政府が外国水産物に対して輸入枠の割当を行うこととした。
ここでは、輸入枠(数量)の上限を「Q1」から「Q2」の数量とします。
すると
国内の供給曲線が変化します
輸入枠には限りがあるので、自由貿易をしていた時の価格「P*1」で供給できる量にも限りが出ます。
すると、価格「P*1」で輸入品を供給し終わると、そこから国内生産者がこれまで通り供給を行います。以上より、価格「P*1」より高い価格からは供給曲線がシフトしたと考えます。
最終的に点Fが均衡点となり需要と供給が決まります。
余剰を確認する前に再確認
最終的な均衡点が点Fなので、価格は「P*2」で決まっています。
余剰は
- 消費者余剰=「P2・点F・P*2」
- 生産者余剰=「P*2・点G・点A・P0」+「点H・点F・点I」
- 貿易業者の余剰=「点G・点H・点I・点A」
- 死荷重=「点I・点F・点B」
ポイント
関税をかける場合と違って、政府余剰(関税収入)が増えるのではなく貿易業者が利益を得る。
ちなみに
最初に紹介した供給曲線をシフトさせる余剰の描き方をしなくても、得られる結果は関税のときと同じなので上記のように表記することの方が多いです(政府余剰を貿易業者の利益とするだけでOKです)
補助金を支給(小国のケース)
補助金の支給
特定の品物に対して輸入や輸出を促進する目的で、政府が補助金を支給する政策。一般的には輸出補助金が有名です。もしくは、国内生産者へ補助金を支給して輸入品との競争から保護する政策。
※ちなみにGAAT(関税及び貿易に関する一般協定)では、輸出入に対して補助金を支給することを原則禁止としています。
例えば、相手国で輸出補助金が不正に支給されていることが分かれば、輸入国がその補助金の効果を相殺するための関税(補助金相殺関税)を設定することが認められています。貿易のルール違反に遭遇した場合の貿易救済措置の1つです(参考)
ちなみに
外国船との貿易自体に補助金を出すことはありますが、特定の品物の輸入に対して補助金をだすというケースは基本ありません。最初に書いた通り、一般的には特定の品物の輸出に対して補助金が出るというケースの方がはるかに多いです。
ここでは最初に「国内生産者へ補助金を支給して輸入品との競争から保護する政策」の余剰分析をします。最後に「輸出補助金」の余剰分析を行います。
生産者保護のための補助金
ある商品の貿易(輸入)を行っているときの消費者余剰・生産者余剰が決まっている。
ここで、国内生産者が格安な外国商品によってダメージを受けているため、政府が補助金を支給して保護することにした。
ここでは「P*1」と「P*2」の差額を補助金として支給します。
補助金を支給したことで国内生産者が供給できる量が増えます
これまで「P*2」で製造販売しなければいけなかった国内生産者は、補助金の支給により「P*1」でも商品を供給できるようになりました。
その結果、国内生産者による供給は「Q1」となります。
さらに
消費者の受入価格は「P*1」なので「Q1」と「Q*」の差分が輸入品となります
以上より
補助金による消費者余剰と生産者余剰は‥
- 消費者余剰=「P2・点B・P*1」
- 生産者余剰=「P*2・点C・P0」
四角形「P*2・点C・点A・P*1」は消費者余剰・生産者余剰でダブって計測されています(最終的にこの部分は「政府余剰のマイナス(補助金支給)」としてダブりが解消されます)
政府余剰は・・?
- 四角形「P*2・点C・点D・P*1」が政府余剰のマイナス
「P*2」と「P*1」の差分を補助金として支給するため、補助金額と補助金の対象となる数量(Q1)を掛けた部分が政府余剰のマイナス(補助金の支給)となります。
死荷重は
- 三角形「点A・点C・点D」が死荷重
補助金を支給したものの、生産者余剰の増加に貢献できなかった部分(元々あった消費者余剰を打ち消してしまった部分)
注意
保護貿易の政策の中でも、補助金の支給は死荷重が小さくなるため効率的だと言えます。しかし、そもそも補助金の支給対象をどうするか?とか、財源を確保したり、他国から批判される危険性などもあるため簡単に実施できる話ではありません。
また、輸出に対する補助金は、関税・割当と同じように死荷重が発生します。
輸出補助金
ある商品の貿易(輸出)を行っているときの消費者余剰・生産者余剰が決まっている。
ここで、輸出力を強化するために、政府は生産者へ補助金を支給して国産商品の競争力を高めようとした。
ここでは「P*1」と「P*2」の差額を補助金として支給します。
補助金を支給したことで輸出量が増えます
当初の輸出量は「点A⇔点B」の数量でしたが「点C⇔点D」へ拡大します。
ここで輸出補助金により「P*1」から「P*2」へ価格が上昇したことに注意します。
輸入による生産者保護のための補助金を支給しても消費者の受入価格は変わりませんでした。これは、外国商品の方が安く、自国商品に価格決定権がないためです。
しかし「輸出を行っている=他国よりも有利な価格で販売している」と考えるため、輸出の場合は自国商品に価格決定権があります。
そのため「輸出補助金の支給によって、輸出が拡大して(過剰生産によって)製造販売費が上昇する」と考えています(戻って確認する)
以上より
輸出補助金による消費者余剰と生産者余剰は‥
- 消費者余剰=「P2・点C・P*2」
- 生産者余剰=「P*2・点D・P0」
「P*1」から「P*2」へ価格上昇したため消費者余剰が減少しています。消費者余剰の減少分「P*2・点C・点A・P*1」は、生産者余剰の増加分になっています。また「点C・点D・点B・点A」部分も生産者余剰が増加します。
政府余剰は・・?
- 四角形「点C・点D・点G・点F」が政府余剰のマイナス
「P*2」と「P*1」の差分を補助金として支給するため、補助金額と補助金の対象となる数量(点C⇔点D)を掛けた部分が政府余剰のマイナス(補助金の支給)となります。
死荷重は
- 2つの三角形「点F・点C・点A」「点B・点D・点G」が死荷重
輸出補助金を支給した結果、国内の消費活動に与えた影響(点F・点C・点A)と過剰生産によって非効率(点B・点D・点G)が発生することで死荷重が生まれています。
「点F・点C・点A」部分は、もともと消費者余剰だったものが生産者余剰となったものの、政府余剰のマイナス(補助金支給)が発生するため、最終的にマイナスとなります。(-消費者余剰+生産者余剰-政府余剰=マイナス)
「点B・点D・点G」部分は、そもそも何もない部分から政府余剰のマイナス(補助金支給)となっているため、最終的にマイナスとなります(別の言い方をすれば生産者余剰の増加に貢献できなかった部分)(-政府余剰=マイナス)
さらに詳しく
最初に記載した通り、輸入品から国内生産者を保護する目的で補助金の支給を行うよりも、国内生産者の競争力を高めて、輸出をたくさん行うために補助金を出すパターンの方が多いです。
今の時代では、中国が産業補助金制度を使って国内企業の輸出力強化を図っています。これに対してアメリカが猛反発しています(米中貿易戦争の数ある争点の1つ)。
1980年代には日本も同様の補助を行っていました。しかし1970年~1980年代にかけて、アメリカとの貿易摩擦から、官民一体となって経済力強化・輸出強化を図るような政策は「日本株式会社論(Japan.Inc)」として広まり批判されました。
大国が保護貿易を行った場合
ポイント
大国が保護貿易を行うと国際価格へ影響を与える。小国が保護貿易を行うと死荷重が発生する(非効率さが生まれる)が、大国が保護貿易を行うと自国の交易条件(※)を改善させて、最終的に死荷重を上回るほどの余剰を得られることが可能となる。
※交易条件とは、輸入価格指数に対する輸出価格指数の比率(=輸出価格/輸入価格)のこと。例えば、商品2単位(2円)を輸出したときに、商品1単位(1円)を輸入しているなら有利(黒字)です。要は貿易をして黒字になるようなら有利というわけです。
関税をかける
例えば
- 大国が輸入品に対して関税を課した場合
途中過程は小国の場合と同じなので省略します。
- 消費者余剰=「P2・点D・P*2」
- 生産者余剰=「P*2・点C・P0」
- 政府余剰(関税収入)=「点C・点D・点G・点F」
- 死荷重=「点A・点C・点F」+「点G・点D・点B」
ここで
関税を課した結果、輸入量が減少しています
念のため確認ですが、関税を課す前の自由貿易の段階では「点A⇔点B」が輸入量ですが、関税を課したことで「点C⇔点D」の輸入量に減少しています。
大国の輸入量は世界需要の大半を占めています。したがって、大国が輸入量を減少させた場合、そのまま世界的な需要減となり供給過剰に陥ります。
供給過剰になると、品物の価格は下落します(国際価格の下落)
- 「P*1」は当初の国際価格
- 「P*2」は関税後の国内の受入価格
- 「P*3」は関税後の国際価格
当初は「P*1」という価格でしたが、関税を課したことで国内は「P*2」で価格が決まります。また、関税により輸入量が減少するため、世界的な需要減⇒供給過剰となるため国際価格が下落して「P*3」となります。
ここで関税後の価格「P*2」は変わらない
国際価格がいくらになろうと国内価格が「P*2」になるまで関税を課すと考えれば、政府の関税収入は拡大します。
そのため、関税後の政府余剰(関税収入)は「点C・点D・点G・点F」から「点C・点D・点H・点I」へ拡大します。
増加した政府余剰分「点F・点G・点H・点I」が、死荷重「点A・点C・点F」と「点G・点D・点B」よりも大きければ、関税を課したことで総余剰が大きくなった(交易が改善した)と考えることが出来ます。
輸入割当を行う
輸入割当(数量規制)を行った場合も関税と同様の結果となります。
途中過程は小国の場合と同じなので省略します。
- 消費者余剰=「P2・点D・P*2」
- 生産者余剰=「P*2・点A・点F・P0」+「点H・点D・点I」
- 貿易業者の利益=「点A・点H・点I・点F」
- 死荷重=「点I・点D・点B」
※関税とは異なり、政府余剰ではなく「貿易業者の利益」となることに注意
割当を行った結果、輸入量が減少したため国際価格が下落します
- 「P*1」は当初の国際価格
- 「P*2」は関税後の国内の受入価格
- 「P*3」は関税後の国際価格
当初は「P*1」という価格でしたが、割当を行うことで国内は「P*2」で価格が決まります。また、関税により輸入量が減少するため、世界的な需要減⇒供給過剰となるため国際価格が下落して「P*3」となります。
ここで割当後の価格「P*2」は変わらない
国際価格がいくらになろうと国内価格が「P*2」と考えれば、貿易業者の利益は拡大します。
そのため、割当後の貿易業者の利益は「点A・点H・点I・点F」から「点A・点H・点K・点J」へ拡大します。
増加した政府余剰分「点F・点I・点K・点J」が、死荷重「点I・点D・点B」よりも大きければ、割当を行ったことで総余剰が大きくなった(交易が改善した)と考えることが出来ます。
ちなみに
供給曲線を動かさずに、関税と同様の表現をすることも可能です。関税とは異なり、黄色部分が政府余剰ではなく貿易業者の利益となっている点は注意です。
輸出補助金を支給
例えば
途中過程は小国の場合と同じなので省略します。
- 消費者余剰=「P2・点C・P*2」
- 生産者余剰=「P*2・点D・P0」
- 政府余剰のマイナス(補助金支給)=「点C・点D・点G・点F」
- 死荷重=「点F・点C・点A」+「点B・点D・点G」
ここで
輸出補助金を支給した結果、輸出量が増大しています
念のため確認ですが、補助金を支給する前の自由貿易の段階では「点A⇔点B」が輸出量ですが、補助金を支給したことで「点C⇔点D」の輸出量に増大しています。
大国の輸出量は世界供給の大半を占めています。したがって、大国が輸出量を増大させた場合、そのまま世界的な供給増となり供給過剰に陥ります。
供給過剰になると、品物の価格は下落します(国際価格の下落)
- 「P*1」は当初の国際価格
- 「P*2」は補助金支給後の国内の受入価格
- 「P*3」は補助金支給後の国際価格
当初は「P*1」という価格でしたが、補助金を支給することで国内は「P*2」で価格が決まります。また、補助金により輸出量が増大するため、世界的な供給増⇒供給過剰となるため国際価格が下落して「P*3」となります。
ここで
国際価格が下落すればするほど、生産者は競争が激化するため、政府の補助金もたくさん支給しなければ、輸出強化を図れなくなります。すると負のループに陥ります。
そのため、補助金支給後の政府余剰のマイナスは「点F・点C・点D・点G」から「点H・点C・点D・点K」へ拡大します。
増加した政府余剰のマイナス分「点F・点G・点K・点H」の影響で、死荷重が「点H・点C・点J」「点I・点D・K」へ拡大しています。輸出補助金を支給したことで総余剰が小さくなった(交易が悪化した)と考えることが出来ます。
ポイント
大国が輸出拡大のための政策を行うと死荷重が拡大して交易条件が悪化していく。
計算問題
例えば
- 財Aの需要曲線が「D=-20P+500」
- 財Aの供給曲線が「S=30P-150」
- 財Aの国際価格は「P11」
この国が小国で輸入を行っていると仮定した場合
- 自由貿易を行った時の消費者余剰・生産者余剰はいくらか?
- 関税を+1課した場合、死荷重がどれくらい発生するか?
はじめに、それぞれの切片を求めるために「P=」の形にします。
①財Aの需要曲線「D=-20P+500」より
- 20P=-D+500
- P=-(D/20)+25
②財Aの供給曲線「S=30P-150」より
- 30P=-S+150
- P=(S/30)+5
グラフで見ると
また、国際価格が「P11」と与えられていたので
点A・点Bのときの生産量を求めれば消費者余剰と生産者余剰が分かる。
①需要曲線「D=-20P+500」より
- D=-20×11+500
- D=-220+500
- D=280
②供給曲線「S=30P-150」より
- S=30×11-150
- S=330-150
- S=180
以上より
消費者余剰は三角形の面積を求めるだけ
- 縦=(25-11)=14
- 横=(280-180)=100
三角形の面積=(縦×横)÷2
(14×100)÷2=700
以上より、消費者余剰(CS)=700
生産者余剰は三角形の面積を求めるだけ
- 縦=(11-5)=6
- 横=180
(6×180)÷2=540
以上より、生産者余剰(PS)=540
関税を課すと
問題文で関税を+1課すとなっていたので、国際価格P11に+1をしてP12となります。
以上より点C・点Dの数量を求めれば、関税を課したときの死荷重が求められる。
①需要曲線「D=-20P+500」より
- D=-20×12+500
- D=-240+500
- D=260
②供給曲線「S=30P-150」より
- S=30×12-150
- S=360-150
- S=210
以上より
関税を課したことによる死荷重は「点A・点C・点F」と「点G・点D・点B」です。
死荷重は2つの三角形の面積を求めるだけ
△点A・点C・点F部分
- 縦=(12-11)=1
- 横=(210-180)=30
- 面積=(1×30)÷2=15
△点G・点D・点B部分
- 縦=(12-11)=1
- 横=(280-260)=20
- 面積=(1×20)÷2=10
「点A・点C・点F」+「点G・点D・点B」より「15+10=25」
関税を課したことによる死荷重は25