エッジワース・ボックスを使って企業の生産活動の分析を行います。
- 生産のエッジワース・ボックスの考え方
- 生産のエッジワース・ボックスのグラフ
- 生産要素の効率的な配分
- 技術的限界代替率や等費用線との関係
- 生産の契約曲線
生産のエッジワース・ボックス
はてな
エッジワース・ボックスで消費者の効率的な資源配分を分析したように、企業の効率的な資源配分(生産要素の配分)をエッジワース・ボックスを使って分析することができます。
無差別曲線の代わりに等量曲線を使うことで、どのような生産活動がパレート効率的となるのかを分析できる。
生産者のエッジワース・ボックスのグラフを見る前に、前提となる考え方を知っておきましょう。
前提
- 2企業が2つの生産要素を使って生産を行う
生産のエッジワース・ボックスでは、企業は2社で、生産に使われる生産要素は2種類と仮定しています。
現実の生産経済では「複数の企業が、複数の生産要素を使って生産を行う」
ここで「2企業・2生産要素」ならば「複数企業が複数の生産要素を使って生産を行う」という条件を最小の単位で満たすことができます。
つまり、現実の経済状態を極限までに縮小したモデルが「2企業・2生産要素」といえます。
生産のエッジワース・ボックスのグラフ
ここからは企業の生産要素を「労働力(L)」「資本(K)」の2種類と想定します。
step
12つの等量曲線の合体
- 生産のエッジワース・ボックスでは2つの等量曲線を合体させていることを理解する
片方の等量曲線を反転させます。
反転させたら、2つの等量曲線を1つにまとめます。
- 縦軸=「資本(K)の投入量」
- 横軸=「労働(L)の投入量」
- 企業Aの等量曲線は右上に行くほど生産量が多くなります
- 企業Bの等量曲線は左下に行くほど生産量が多くなります
企業Bの等量曲線が左下に行くほど生産量が多くなるのは反転させて合体したからです。通常の等量曲線は右上に行くほど生産量が多くなります。
step
2具体的な数字でグラフを見る
①エッジワースボックスの横の長さ
ボックスの横の長さは労働力(L)の総量を表す。ここでは労働力(L)の総量を15とする。
また、少し難しく書くと「労働力(L)の総量」=「企業Aの労働力(L)の投入量+企業Bの労働力(L)の投入量」となる
②エッジワースボックスの縦の長さ
ボックスの縦の長さは資本(K)の総量を表す。ここでは資本(K)の総量を10とする。
また、少し難しく書くと「資本(K)の総量」=「企業Aの資本(K)の投入量+企業Bの資本(K)の投入量」となる
例えば
- 企業A「労働の投入量=9・資本の投入量=4」
- 企業B「労働の投入量=6・資本の投入量=6」
2企業が2生産要素を上記のように配分した場合のエッジワースボックスは‥?
等量曲線を追記してみると‥
step
3パレート効率的
実は、先ほどの企業A・企業Bの生産要素の配分は非効率です。
ポイント
等量曲線は同じ曲線上なら同じ生産量となることを思い出す。
企業Bの等量曲線を固定した場合を考えます。
このとき、企業Aの等量曲線をより右上へ移動させると、企業Bの等量曲線を維持したまま、企業Aの生産量を増やすことが出来ます。
最初に書いたとおり、等量曲線は右上に位置する方が生産量が多くなります
最初の点より「点A」の方が企業Aの生産量は多いです
ここで、企業Bの生産量を変えずに、企業Aの生産量を増やすことが出来たためパレート改善したことが分かります(参考:パレート効率性)
具体的な数字で見ると
- 企業A「労働の投入量=9・資本の投入量=4」
- 企業B「労働の投入量=6・資本の投入量=6」
だった財の配分を
- 企業A「労働の投入量=8・資本の投入量=5」
- 企業B「労働の投入量=7・資本の投入量=5」
という風に変更しました。
ポイント
これ以上はパレート改善できないため、この状態がパレート効率的となります。
ポイント
- 2つの等量曲線が接するような状態
2つの等量曲線がグラフのように接するときにパレート効率的となる(例外あり)。
逆に・・
上記のグラフのような交わり方だと非効率です。さきほどの例のように、企業Bの等量曲線を固定して(=生産量を変えずに)企業Aの等量曲線を右上に移動させることで、企業Aの生産量を増やすことが出来るためです。
等費用線と技術的限界代替率
生産のエッジワース・ボックスでパレート効率的となる状況を理解したら、次に等費用線や技術的限界代替率(MRTS)との関係を見ていきます。
はじめに
通常の等量曲線を思い出す
このように、企業が生産を行うときに費用最小化を目指して行動することを考えれば、エッジワース・ボックスの等量曲線も上記のグラフと同じように等費用線(C)と接しているはずです。
ここで重要①
グラフの見方で説明した通り、エッジワース・ボックスでパレート効率的となるとき、2つの等量曲線は次のようなグラフとなります。
つまり・・
グラフで考えればどちらの等量曲線も等費用線(C)に触れているはずです。
ここで重要②
グラフを見れば分かる通り、同じ直線(等費用線(C))なので傾きが同じになります。
上側の傾きと下側の傾きは同じです(平行線の錯角は等しい←小学校位で習うやつ)。
ちなみに
等費用線(C)の傾きは「要素価格比(生産要素の価格比)」と呼ばれるように2つの生産要素の価格比で表せます。
- 労働(L)の価格=w(賃金)
- 資本(K)の価格=r(レンタル料)
とするとき、等費用線(C)の傾き(要素価格比)は「w/r」となります。←この関係は計算問題で必要になることがあるので復習しましょう(等費用線)
さらに「等費用線の傾き」は「技術的限界代替率(MRTS)」と同じです
以上より
- パレート効率的ならば、エッジワース・ボックス内の2つの等量曲線の技術益限界代替率(MRTS)は一致する
「等費用線の傾き(要素価格比)と技術的限界代替率が等しい」というのは、生産者理論の費用最小化点を求めるときに登場する話です。
この部分まで理解していないと、エッジワース・ボックス内での話が理解できなくなるので、等費用線・技術的限界代替率・費用最小化点の関係をしっかりと理解しましょう。
まとめ
エッジワース・ボックス内でパレート効率的な状態では、次の3つが等しくなる。
- 等費用線の傾き(w/r)
- 企業Aの技術的限界代替率(MRTS)
- 企業Bの技術的限界代替率(MRTS)
生産の契約曲線
生産の契約曲線
パレート効率的な生産要素の配分が実現している点の軌跡のこと。生産の効率軌跡(効率性軌跡)とも言う。
グラフで見ると‥
ポイント
ポイント
生産の契約曲線上では、2企業の技術的限界代替率(MRTS)が常に一致している。
企業は費用が最小となるように生産を行います。そのため、企業は生産要素を効率的に利用していき、パレート効率的な生産要素の配分が実現されます。
パレート効率的な生産要素の配分が実現すると、2企業の技術的限界代替率が一致します。
つまり、パレート効率的な生産要素の配分となる契約曲線上は「常に2企業の技術的限界代替率が一致している」ことになります。
ここで
生産の契約曲線上は「効率的な生産要素(労働・資本)の配分が実現している」わけですが、実際の生産量(Q)はどれくらいになるのでしょうか?
生産の契約曲線では「効率的に生産要素(労働・資本)を配分したこと」は分かりますが、実際の生産量がどれくらいかは分かりません。
そこで登場するのが「生産可能性曲線(生産可能性フロンティア)」です。
生産要素の配分が生産の契約曲線上で行われるとき、生産量と生産要素の関係を表した曲線です。契約曲線を理解したら、生産可能性曲線を見ていきましょう。