ミクロ経済学

無差別曲線の簡単な証明

2019年10月13日

無差別曲線を単調性推移性を使って、証明する問題があります。

  • 無差別曲線が右下がりになる理由
  • 無差別曲線は右上ほど効用が高い理由
  • 無差別曲線は交わらない理由
  • 無差別曲線が原点に対して凸の理由

無差別曲線の4つの性質について、簡単な証明をまとめています。

無差別曲線が右下がりになる

 

最初に

X財とY財の2財を考える。

2財の消費について単調性(非飽和性)を満たしているとする(=消費者の選好が単調性(非飽和性)を満たすとする)。

 

ポイント

2財とも消費をすればするほど効用が増加する。これを単調性(非飽和性)と呼ぶ。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
例えばだけど、同じものを食べ続けたら気持ち悪くならない?
うん。だけど証明をするときは、いったん無視するよ。
牛さん
牛さん

 

通常は、消費を続けると飽きたり、限界を迎えたりします。しかし、証明をする際は、状況を簡単にするために、永遠に消費を続けることが出来ると考えます

 

次に

同じ無差別曲線上ならば、「どのX財・Y財の消費の組み合わせ」も同じ効用となる。

先ほど記載した通り、2財の消費について、単調性(非飽和性)を満たすため、X財・Y財どちらも、消費するほど効用が高くなる

 

仮に

X財の消費量を増やすとき、それに合わせてY財の消費量を減らさないと、同じ効用を保てなくなる。

 

ポイント

2財が単調性(非飽和性)を満たすとき、片方の財の消費量を増やした場合、もう片方の財の消費量を減らさないと、同じ効用を保てなくなる。

 

つまり

  • 同じ無差別曲線上なら、どの点(2財の消費の組合わせ)でも、同じ効用を示す。
  • 2財が単調性(非飽和性)を満たすとき、X財の消費量を増やした場合、Y財の消費量を減らさないと、同じ効用を保てなくなる。

この2つから、無差別曲線は右下がりの曲線となる。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
う~ん。あっさりしている。
「簡単に証明」だからね。一応、具体例も見ておこう。
牛さん
牛さん

 

例えば

  • 効用(U)=10とする

「効用(U)=(X財の消費量)×(Y財の消費量)」で表されるときを考える。

効用(U)=10なので、X財とY財の消費量の組み合わせは次の通りになる。

  • (X=10, Y=1)
  • (X=5,  Y=2)
  • (X=2,  Y=5)
  • (X=1,  Y=10)

「横軸にX財の消費量」「縦軸にY財の消費量」をとってグラフを作ると、右下がりの曲線になります。

 

無差別曲線は右上ほど効用が高い

 

最初に

X財とY財の2財を考える。

2財の消費について単調性(非飽和性)を満たしているとする(=消費者の選好が単調性(非飽和性)を満たすとする)。

 

ポイント

2財とも消費をすればするほど効用が増加する。これを単調性(非飽和性)と呼ぶ。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
右下がりの証明する時と同じだね。
うん。こっちはもっと簡単になるよ。
牛さん
牛さん

 

ここで

2財とも単調性(非飽和性)を満たすとき、財の消費量を増やせば効用が高くなる

 

ポイント

X財・Y財の消費量のどちらかの消費量を増やした場合、グラフ上では、より上方向か右方向に無差別曲線を書くことが出来る

 

つまり

2財が単調性(非飽和性)を満たしていれば

  • 財の消費量の増加=効用の増加
  • 財の消費量の増加=グラフ上では、上方か右方向で無差別曲線が書ける

この2つから、右上の無差別曲線ほど効用が高くなる。

 

無差別曲線は交わらない

最初に

X財とY財の2財を考える。

  • 2財の消費について単調性(非飽和性)を満たしているとする(=消費者の選好が単調性(非飽和性)を満たすとする)。
  • 消費の組み合わせについて推移性を満たしているとする。

 

ポイント

2財とも消費をすればするほど効用が増加する。これを単調性(非飽和性)と呼ぶ。

X財とY財の消費の組合わせ「A・B・C」があった場合、「A ≧ B」「B ≧ C」という選好なら「A ≧ C」を満たすことを推移性と呼ぶ。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
新しく推移性って出てきたね。
うん。≧は=も含んでいるから気を付けてね。
牛さん
牛さん

 

ここで

無差別曲線(U=1)と無差別曲線(U=2)が交わっているとします。

  • 無差別曲線(U=1)上に点Aと点B
  • 無差別曲線(U=2)上に点Aと点C

 

次に

同じ無差別曲線上ならば、「どのX財・Y財の消費の組み合わせ」も同じ効用となる。

  • 無差別曲線(U=1)上にある点Aと点Bは同じ効用の大きさ
  • 無差別曲線(U=2)上にある点Aと点Cは同じ効用の大きさ

 

ここで

推移性を満たしているため、「点Aと点Bの効用の大きさが同じ」「点Aと点Cの効用の大きさが同じ」という情報から「点Bと点Cも効用の大きさが同じ」となる。

 

しかし

グラフから、点Cは

  • 点Bよりも右上に存在している
  • X財の消費量・Y財の消費量ともに点Bより多い

単調性(非飽和性)を満たしていることから、点Cは、点Bよりも効用が大きくなるはずである。

単調性(非飽和性)は、消費をすればするほど効用が増加することを言いました。ここでは、点Cの方がX財の消費量・Y財の消費量がともに点Bより多いため、消費量が多い=より効用が高いと判断できます。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
これだと矛盾が出てくるね。
うん。矛盾が出るから交わらないってことになるよ。
牛さん
牛さん

 

そのため

2財の消費について推移性・単調性を満たすことから、2つの無差別曲線が交わることで矛盾が生じるため、2つの異なる無差別曲線が交わることはない。

無差別曲線が原点に対して凸

 

 

北国宗太郎
北国宗太郎
・・・・・・・・。
簡単なイメージから説明するね。
牛さん
牛さん

 

最初に

X財とY財の2財を考える。

 

ポイント

普通は、同じものをずーっと消費するよりは、どちらもバランスよく消費したいです。

 

例えば

紅茶とケーキで考える。

普通なら、ケーキを食べ続けるよりも、紅茶も飲みながらケーキを食べたい

 

北国宗太郎
北国宗太郎
何となく分かりました。
これを難しく言うと「限界代替率逓減の法則」って言うんだ。
牛さん
牛さん

 

「限界代替率逓減の法則」は、同じものを消費し続けるよりも、2財をバランスよく消費したいという人の性質を表した考え方です。

 

さらに詳しく

限界代替率は「X財の消費量を1つ増やしたとき、同じ効用を維持するために、どれくらいY財の消費量を減らす必要があるか」を表している。通常、この限界代替率は「X財の消費量を1つ増やすほど、減らすY財の消費量は小さくなる」。これを「限界代替率逓減の法則」という。

 

ポイント

限界代替率逓減の法則が成り立つとき、無差別曲線は原点に対して凸となる。

 

例えば

パンにソーセージをはさんで食べます。

  • パン1つ・ソーセージ1つ
  • パン2つ・ソーセージ2つ

1つ食べるより、2つ食べる方が効用は増えます。

 

ここで

  • パン4つ

という風に食べるときを考えてみましょう。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
パン4つ食べるのって苦しい・・。
そうだね。ここで注目です!
牛さん
牛さん

ポイント

「パン4つ」を食べるよりも「パン2つ・ソーセージ2つ」とバランスよく消費する方が、得られる効用が大きくなります

 

グラフで見ると

 

ここで「パン4つ」と「パン2つ・ソーセージ2つ」は、どちらも財を4つ消費しています。

しかし、先ほど書いたように、パンだけを4つ食べるより、ソーセージもバランスよく食べたいです。そのため、同じ4つ消費するでも「パン2つ・ソーセージ2つ」という組み合わせの方が効用が高くなります

 

仮に

「パン4つ」と「パン2つ・ソーセージ2つ」が同じ効用ならば、無差別曲線は直線になる。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
でも現実は違うね。
うん。だから無差別曲線は原点に対して凸になるよ。
牛さん
牛さん

 

「パン4つ」よりも「パン2つ・ソーセージ2つ」の方が効用が高くなるため、「パン2つ・ソーセージ2つ」は右上の無差別曲線上に存在することになります。

 

つまり

  • 「パン4つ」と「パン1つ・ソーセージ1つ」が同じ効用
  • 「パン4つ」よりも「パン2つ・ソーセージ2つ」の方が効用が高くなる

この条件を満たす無差別曲線を書こうとすると、原点に対して凸の曲線を書くことになります。したがって、無差別曲線は原点に対して凸となります。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
う~ん、なんか証明という感じはしないね。
数学的に証明するとかになると凄く難しんだ。
牛さん
牛さん

 

なので

通常は、限界代替率逓減の法則が成り立つため「パン4つ」よりも「パン2つ・ソーセージ2つ」の方が効用が高くなる。そのため、無差別曲線は原点に対して凸になるような曲線となる。

などのように、簡単に書かれることが多いです。

 

無差別曲線の形状には例外もあります。

例外についてはこちらから⇒特殊な無差別曲線【直線・L字・円形・右上がり・原点に対して凹】

 

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