外国人観光客が増える一方で、現地の人の生活や観光資源に悪影響を与える観光公害が問題になっています。
- オーバーツーリズム(観光公害)とは?
- 経済学で考えると?
- 日本のオーバーツーリズム(観光公害)の問題点と対策
最近話題になっているオーバーツーリズム(観光問題)について考えていきます。
オーバーツーリズムとは?
オーバーツーリズム・観光公害
観光客が増え過ぎた結果、現地の人々の生活や環境に悪影響を及ぼしている状態のこと。
2015年以降、世界中で注目される言葉となっている。
オーバーツーリズム(観光公害)の大きな原因の1つが、観光客が増え過ぎたことです。世界中の観光地で同様の問題が生まれています。
どうして増え過ぎた?
理由は大きく3つに分かれます。
- 世界的な人口増
- 格安航空の普及
- SNSの普及
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1世界的な人口増加
2000年頃の世界の人口は、約60億人を超えるくらいでした。
しかし、2019年の世界の人口は約77億人です。(国連より)
ただ人口が増えただけではありません。特にアジア地域の経済成長によって、外国へ旅行する余裕のある人々が増えています。
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2格安航空の普及
日本で考えてみると、むかしは日本航空(JAL)か全日本運輸(ANA)しか航空会社はありませんでした。
現在は・・
- ピーチ・アビエーション
- ジェットスター・ジャパン
- バニラエア
- 春秋航空日本
格安航空(LCC)がたくさんあり、飛行機代を安く抑えることも可能です。
飛行機と書きましたが宿泊施設も同様です
旅館やホテルに泊まるのが普通でしたが、今ではAirbnb(エアビーアンドビー)に代表される民泊などを利用すれば宿泊費を抑えられます。
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3SNSの普及
最後にSNSの普及です。
Instagram(インスタグラム)などの観光地の魅力を伝えられるSNSが普及した結果、これまで以上に観光地に訪れるきっかけを与えています。
今までなら知られていないような観光地の情報が拡散しやすくなりました。
ホットな話題なので、知っておいて損はありません。
経済学でオーバーツーリズムを考える
経済学でオーバーツーリズムを見るときのポイントがあります。
ポイント
観光地が、共有財(コモンプール財)に近いこと。
共有財(コモンプール財)とは、お金を支払っていなくても利用できて、数に限りがあるものを言います。
詳しくはこちらの記事で確認!⇒ 公共財とは?「財の4つの分類」引き起こる問題点を分かりやすく解説!
例えば
浅草を散策するのにお金は必要ありません。また、浅草に人が集まり過ぎると混雑して、身動きが取れなくなります。(=一度に歩ける人の数が限られている)
外国旅行へ行くと分かりますが、異国の地をただ歩くだけでも十分に魅力があります。もちろん施設やお店に入ることも楽しいですが、観光地はお金を使わずに歩くだけでも十分に楽しめます。
経済学で考えると
共有財(コモンプール財)では、ある問題が発生します。
有名な例
牧草地(共有地)があり、近くに羊の放牧を行っている羊飼いがたくさんいます。
放牧するのにお金はかかりませんので、羊飼いは放牧地に羊を放ちます。羊は、牧草をたくさん食べますが、一斉に牧草を食べると、牧草が繁殖する前に食べつくされてしまいます (資源の枯渇)。
普通はそんなことを気にしないので、羊が牧草を食べつくして牧草地は枯れ果てました (共有地の悲劇)。
ポイント
観光地が共有財(コモンプール財)に近い特徴があるということは、観光資源が過剰消費される傾向にあるということを意味しています。
オーバーツーリズム(観光公害)は、共有地の悲劇に陥っていると言える
日本のオーバーツーリズム
京都の場合
日本の代表的な観光地の1つである京都は、観光消費額で1兆円を突破しました。更に年間の旅行客数は5000万人を超えています。
そんな京都ですが、若干のオーバーツーリズムに陥っています。
竹林への落書き、ごみの問題などがある中で、断トツで問題視されているのが混雑です。
市内を走るバスが観光客で一杯になり、住民が乗車できない状況になっています。
対策
オーバーツーリズムの対策は2つ考えられます。
先ほど紹介した「観光地は共有財(コモンプール財)」という話を思い出してください。
- お金を支払わなくても利用できる
- 数に限りがある
観光地(共有財)には、この2つの特徴があるため共有地の悲劇に陥るという話でした。
なので
- お金を要求する
- 人の出入りを制限する
どちらかを満たす対策を取って、共有地の悲劇に陥らないようにする必要があります。
京都ではオーバーツーリズム(観光公害)の対策をどのように行っているのでしょうか?
京都が実際にやっている対策
住民と観光客の乗り場を分離する試行実験を27日から始める。金閣寺(北区)周辺に観光路線専用の臨時停留所を設け、効果を検証する。
一部の市バスから市営地下鉄に乗り換えた場合に東山-京都駅と北大路-京都駅の地下鉄運賃を無料にする。さらに金閣寺と永観堂(左京区)周辺の市バス経路を一部変更する。市バスと地下鉄の臨時増発も行う予定。
(京都新聞より)
ここで注目したいのはこの2つの対策案です。
- 住民と観光客の乗り場を分離する
- 一部の市バスから市営地下鉄に乗り換えた場合に地下鉄運賃を無料にする
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1①「住民と観光客の乗り場を分離する」という案
こちらの対策案ですが「住民の人がバスに乗れるようにする」という点だけを考えれば、効果があるのかもしれません。
しかし
乗車場を分けたところで大量の観光客が乗車するため、住民が混雑に巻き込まれるのは必須です。
先ほどの話なら「お金を要求する」「人の出入りを制限する」のどちらにも当てはまっていないためです。
バス代は発生しますが、観光客にとってみれば少額のため実質的にお金を支払っていないものと考えます。
- 住民は通常運賃
- 観光客は2000円
現実に分けることが出来るかは置いておき、観光客側にバス代を重く負担させることで、バスに乗らないインセンティブ(誘因)を与えることが出来ます。
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1②「一部 地下鉄運賃を無料」という案
この対策案は「お金を要求する」という要素をおさえています。
地下鉄の運賃を下げることで、バスの運賃を相対的に高くしている (≒お金を要求する)
乗車位置を分ける対策案よりも、経済学的に考えればよい対策案に見えます。
ココに注意
ただし、そもそもバスの運賃がそこまで高くないと、利便性の劣る地下鉄を利用する方向になるのか?という疑問が残ります。今後も暫くは試行錯誤が必要かもしれません。
飛騨・白川郷
白川郷では、夜のライトアップに観光客が溢れかえり、深刻なオーバーツーリズム(観光公害)になっていました。白川郷に住む方々は非常に困っていたようです。
そこで
オーバーツーリズム(観光公害)対策として、ライトアップの時間帯に入場規制を実施
この入場規制の結果、白川郷では、以前のような酷いオーバーツーリズム(観光公害)にはなっていないようです。
京都のバスの話に置き換えると
- 住民が乗車した後に、バスに乗れる人数に制限をかける
- 寺院への入場規制を行う
などの対策案が考えられます。
ただ京都市の対策内容を見ると、人数規制を行うよりも他の方法で解決したい、という感じが取れます(せっかくなので色々な人に京の町を楽しんでほしい、というのはあると思います)。
人数規制をしないのなら
(現時点での現実的な)対策は「お金を取る」という点に尽きると思います。私も京都好きなのでオーバーツーリズム(観光公害)で、現地の景観などが壊れないように祈るばかりです。