経済学者アマルティア・センが作った「合理的な愚か者」という造語。
初めて聞くと良く分からないですが、とても重要なことを言っています。
行動経済学につながる重要な考えを、分かりやすく簡単解説!
合理的な愚か者とは?
合理的な愚か者とは
経済学者アマルティア・センが、従来の経済学に疑問を投げかけるために用いた造語。
経済学で考えている合理的な人間は、道徳心や倫理観が無視されおり「社会的に見ればバカ」だと皮肉が込められている。
(Wikipediaより・アマルティア・セン)
インド出身の経済学者で、1998年にアジア人初のノーベル経済学賞に輝いた。高度な数学と論理学を使う厚生経済学や社会選択理論における牽引者である。
「合理的な愚か者」という言葉は、その背景まで理解しないと意味が分からないです。
経済学の勉強をしている人が、いきなり見ても分からないですよね・・。というのも、この論文をまとめた書籍などの内容が難しいためです。
元の論文「Rational Fools: A Critique of the Behavioral Foundations of Economic Theory」
これまでの経済学
経済学で登場する人のことを「ホモ・エコノミクス」と言います。
日本語だと「合理的な経済人」です。
合理的な経済人
「自分の利益を最大化することだけ」が行動の基準です。
経済学で登場する人間は、自分の利益が最大になるように生きていると仮定しています。
「期待効用理論」などに代表される経済学のすべての理論が、この前提に基づいて作らています。
ここに問題あり
- それだけでは説明できないことが多すぎる
無償で他人を助ける理由は?
募金する理由は?
ボランティアする理由は?
時には合理的じゃないこともするけど
ポイント
こうした利他的な行動はもちろんのこと、生まれや育ちによって、価値観が変わります。
一括(ひとくく)りに「ホモ・エコノミクス (合理的な経済人)」とするのは限界があるのです。
こうした経済学の問題点に焦点を当てたのが「合理的な愚か者」という言葉です。
The purely economic man is indeed close to being a social moron.
Economic theory has been much preoccupied with this rational fool decked in the glory of his one all-purpose preference ordering.
「純粋な経済人は、社会的にはバカに近いのだ。
しかし、これまでの経済理論では、そんな合理的な栄光を着飾った「合理的な愚か者(rational fools)」に占領され続けてきた。」
To make room for the different concepts related to his behavior we need a more elaborate structure.
「人の行動を理解するためには、もっと複雑な構造が必要だ。」
センは、価値観・倫理観も人の行動に影響を及ぼすと考えています。
「自分の利益(効用)を最大化するためだけ」に行動するという誤った認識を、経済学の世界から取り除こうとしたのです。
センは、古典的な経済学が想定している「合理的な経済人」という前提は乗り越えるべき対象で、批判されてしかるべき存在だと考えていました。
センが「合理的な愚か者」という言葉を用いたのが、1977年の論文『合理的な愚か者(Rational Fools)』です。
それから40年以上が経過して、現在の経済学は新しい流れが生まれています。
行動経済学の拡大
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行動経済学とは?
いままでの経済学に心理学などを取り入れていく分野。
心理・感情を経済学の理論に応用することを目指している。
ノーベル経済学賞も受賞
2002年と2017年には、行動経済学の研究者がノーベル経済学賞を受賞します。
(TED.comより・ダニエル・カーネマン)
(Wikipediaより・リチャード・セイラー)
経済学の分野で「合理的な愚か者」という言葉に巡り合ったのなら、行動経済学は必見です。
行動経済学では、センが批判している「ホモ・エコノミクス (合理的な経済人)」とは違う「普通の人」を前提に理論が作られています。
ビジネスの分野でも注目されている行動経済学は、今の時代では必須の科目となっています。
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