ミクロ経済学

「規模に関して収穫逓減・一定・逓増」の意味と具体例

2020年1月26日

「規模に関して収穫」がどのように変化するかを判断するために、基本となる知識を抑えましょう。

  • 規模に関する収穫とは?
  • 収穫逓減・一定・逓増
  • 同次関数とは?
  • 同次関数で規模に関する収穫を判断する

「限界生産力逓減の法則」と混同しやすい「規模に関する収穫」について、必要な情報をまとめています。

規模に関する収穫

規模に関する収穫とは?

全ての生産要素を増加させた場合、産出量がどのような増加具合を示すかを表した言葉。

(例) 全ての生産要素の投入量を2倍にしたとき、製品・サービスの産出量が‥

  • 2倍より少ない=「収穫逓減
  • 2倍になる=「収穫一定(不変)」
  • 2倍よりも増える=「収穫逓増

 

北国宗太郎
北国宗太郎
「限界生産力逓減の法則」って言葉もあるよね。違いが分からないです…
迷っちゃうよね。まずは違いを抑えよう!
牛さん
牛さん

 

確認する

限界生産力逓減の法則(収穫逓減の法則)との違い

限界生産力逓減の法則は「1つの生産要素だけを投入しつ続けると、産出量が減少する」という仮定を置いています。このとき、他の生産要素は一定(固定的生産要素)と考えます。

一方で

規模に関する収穫は「全ての生産要素の投入量を増やすと、産出量がどのようになるか?」という視点で考えます。全ての生産要素が可変的生産要素だと想定。

 

違いが分からないと講義などで混乱するので気を付けましょう!定義が分かったところで、簡単な例も見ていきます。

 

例えば

  • 自動車を増産する

自動車を増産するためには、工場(K)や労働力(L)を増やす必要があります。

 

工場の規模(K)を2倍にして、雇用(L)もこれまでの2倍にしました。この時、車の生産量がどのように増えるのかを確認します。

これまで生産していた車は100台として考えてみます。

 

工場・雇用を2倍にした結果

  • 車の生産量が0台~199台になった場合「規模に関して収穫逓減
  • 車の生産量が200台になった場合「規模に関して収穫一定
  • 車の生産量が201台以上になった場合「規模に関して収穫逓増

 

北国宗太郎
北国宗太郎
分かってきた。
良かったです。次は関数を使って判断する方法だよ。
牛さん
牛さん

 

「規模に関して収穫逓減・一定・逓増」を判断する時に「同次関数」という考え方を使います。意味は簡単ですが、数式で見ると拒絶反応を示す人もいますので、簡単に見ていきましょう。

 

同次関数の意味

 

N次同次関数

「関数F(X,Y)」の独立変数(XとY)を○倍して、計算結果が○のN乗になるとき、この関数を「N次同次関数」という。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
( ^ω^)・・・
もっと簡単に見ていこう!(汗)
牛さん
牛さん

 

生産関数で考える

  • 資本量(K)
  • 労働量(L)
  • 製品・サービスの産出量(Y)

生産関数を「産出量(Y)=資本量(K)×労働量(L)」とします。

一般に、この生産関数は「Y=F(K,L)」と表現されます。

 

例えば、資本量(K)・労働量(L)を2倍します。

すると「2K×2L」となります。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
ここまでは分かりました。
それでは、次に参りましょう。
牛さん
牛さん

 

このとき

産出量(Y)が「2のN乗×Y」となれば、N次同次関数となります。

  • 産出量(Y)=資本量(K)×労働量(L)

⇩ 例えば「KとLを2倍する」

  • 2K×2L

⇩ Yがどのように増加するか確認する

  • 「2のN乗・Y=2K×2L」となると「N次同次関数」

仮に「4Y=2K×2L」となれば「2の2乗×Y=2K×2L」となっているので、2次同次関数となります。

2次同次関数は「資本量(K)や労働量(L)を2倍にしたときに、生産量が4倍(4Y)になる」ことを意味しています。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
理解できているか微妙です。
初めはピンと来ないことも多いから繰り返し考えてみよう。
牛さん
牛さん

 

ちなみに

上の例で「2Y=2K×2L」となれば1次同次関数です。

資本量(K)や労働量(L)を2倍にしたときに、生産量が2倍(2Y)になる

 

ここから本題ですが「規模に関して収穫逓減・一定・逓増」なのかは、このN次同次関数から判断できます。

 

ポイント

生産関数がN次同次関数で

  • N<1なら「収穫逓減」
  • N=1なら「収穫一定」
  • N>1なら「収穫逓増」

 

「規模に関して収穫逓減」の場合

規模に関して収穫逓減

「Y=F(K,L)」に"n"を掛ける

  • nY(=nF(K,L))
  • F(nK,nL)

この時「nY>F(nK,nL)」となれば収穫逓減

 

詳しく

「F(nK,nL)」は、全ての生産要素「資本(K)」と「労働(L)」をn倍したことを表す

「nY (=nF(K,L) )」は、産出量がn倍になったことを表す

 

同次関数で確認すると‥?

 

「nY>F(nK,nL)」が収穫逓減になることを同次関数で見ていきます。

 

ポイント

「nY>F(nK,nL)」を同次関数にしてみる

同次関数にするためには「nY>F(nK,nL)」をイコールで結べばOKです。

そのとき「nY」を小さくする必要があるので、必然的に「nの0.7乗」とか「nの0.4乗」になります。

 

例えば

  • 「nの0.5乗×Y=F(nK,nL)」でイコールになった場合

全ての生産要素をn倍したときの産出量が「nの0.5乗(=√n)×Y」なので、0.5次同次関数となります。

生産関数がN次同次関数でN<1なら「収穫逓減」なので、この場合は収穫逓減と判断できます。

 

さらに詳しく

生産関数「Y=K×L」で簡単に考える

全ての生産要素を2倍したら「2K×2L」となり、産出量が「2の0.5乗×Y」でイコールになった場合

「2の0.5乗=√2=約1.4...」なので「1.4Y=2K×2L」

生産要素を2倍にしたのに、産出量が2倍を下回って効率が悪い状態(収穫逓減)

 

「規模に関して収穫一定」の場合

規模に関して収穫一定(不変)

「Y=F(K,L)」に"n"を掛ける

  • nY(=nF(K,L))
  • F(nK,nL)

この時「nY=F(nK,nL)」となれば収穫一定

 

詳しく

「F(nK,nL)」は、全ての生産要素「資本(K)」と「労働(L)」をn倍したことを表す

「nY (=nF(K,L) )」は、産出量がn倍になったことを表す

 

北国宗太郎
北国宗太郎
これは簡単だね。
うん。全ての生産要素を2倍したら、産出量も2倍になるだけ。
牛さん
牛さん

 

全ての生産要素をn倍したときの産出量が「n(=nの1乗)×Y」と表現できるので、1次同次関数となります。

生産関数がN次同次関数でN=1なら「収穫一定」なので、この場合は収穫一定と判断できます。

 

現実の例

  • 海岸でゴミ拾いのボランティア活動

ゴミ拾いは、手で地道にゴミを拾っていくので、人数が増えようが効率が良くなったり悪くなったりしません

1人から2人になれば、おおよそ拾えるゴミの量は2倍になります(収穫一定)。

つまり、分業できない、かつ、1人1人の労働力だけが必要な活動は、収穫が一定になると言えます。

 

「規模に関して収穫逓増」の場合

 

規模に関して収穫逓増

「Y=F(K,L)」に"n"を掛ける

  • nY(=nF(K,L))
  • F(nK,nL)

この時「nY<F(nK,nL)」となれば収穫逓増

 

詳しく

「F(nK,nL)」は、全ての生産要素「資本(K)」と「労働(L)」をn倍したことを表す

「nY (=nF(K,L) )」は、産出量がn倍になったことを表す

 

同次関数で確認すると‥?

 

「nY<F(nK,nL)」が収穫逓増になることを同次関数で見ていきます。

 

ポイント

「nY<F(nK,nL)」を同次関数にしてみる

同次関数にするためには「nY<F(nK,nL)」をイコールで結べばOKです。

そのとき「nY」を大きくする必要があるので、必然的に「nの2乗」とか「nの3乗」になります。

 

例えば

  • 「nの2乗×Y=F(nK,nL)」でイコールになった場合

全ての生産要素をn倍したときの産出量が「nの2乗×Y」なので、2次同次関数となります。

生産関数がN次同次関数でN>1なら「収穫逓増」なので、この場合は収穫逓増と判断できます。

 

さらに詳しく

生産関数「Y=K×L」で簡単に考える

全ての生産要素を2倍したら「2K×2L」となり、産出量が「2の2乗×Y」でイコールになった場合

「2の2乗=4」なので「4Y=2K×2L」

生産要素を2倍にすると、産出量が2倍を上回って効率が良い状態(収穫逓増)

 

北国宗太郎
北国宗太郎
何回か考えたら分かってきた気がする
内容自体は簡単だから、同次関数で判断できるように頑張ろう!
牛さん
牛さん

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