このページでは次の2つを確認していきます。
- 戦略的代替と戦略的補完の意味
- クールノー競争とベルトラン競争の比較
戦略的代替と戦略的補完
はてな
「戦略的代替性」は相手の行動に対して、反対の行動を取ることが最適戦略になる状態。
「戦略的補完性」は相手の行動に対して、同様の行動を取ることが最適戦略になる状態。
ここで登場する「戦略的」という言葉は「主体Aの行動変化が、他の主体Bの行動変化(他の変数など)に影響を与える関係がある」というニュアンスです。
「代替性」と「補完性」の意味
代替財「ライバル商品の需要が増える⇧と、代わりに自社商品の需要は減る⇩」
補完財「ライバル商品の需要が増える⇧と、自社商品の需要も増える⇧」
代替性「⇧→⇩」
補完性「⇧→⇧」
この関係性を企業の行動戦略に当てはめたのが「戦略的代替性」「戦略的補完性」です。
例えば
「満員電車」→みんなが電車に乗る⇧なら、自分は乗らない方⇩が良いです(戦略的代替性)
「マッチング市場」→みんながマッチングアプリで婚活する⇧なら、自分もマッチングアプリで婚活をした方⇧が、巡り合わせの回数が増えます(戦略的補完性)
※あくまでイメージとして
クールノー競争とベルトラン競争の比較
ポイント
- クールノー競争(数量競争)→「戦略的代替性」
- ベルトラン競争(価格競争)→「戦略的補完性」
クールノー競争の最適戦略
- 相手が増産⇧、自社は減産する⇩(戦略的代替性)
ベルトラン競争の最適戦略
- 相手が値上げ⇧、自社も値上げする⇧(戦略的代替性)
最適反応
ポイント
最適反応曲線の傾きが
- 「右下がり」なら「戦略的代替性」
- 「右上がり」なら「戦略的補完性」
実際に確認してみる
「クールノー競争」と「ベルトラン競争」でライバル企業Bが増産or値上げした場合の、企業Aの最適戦略を考えます。
「最適反応曲線のグラフの傾き」と「戦略的代替性・補完性」については、これ自体に深い話があるというよりは「そういう関係があります」程度に抑えてもらえればと思います。
次に「戦略的代替」「戦略的補完」の違いによって、企業戦略がどのような影響を受けるのかを考えます(←こっちの方が突っ込んだ話です)。
費用の削減効果
「戦略的代替性・補完性」の違いによって、具体的な企業戦略にも影響を及ぼします。
ポイント
「戦略的代替性」の関係があるとき、企業は費用削減することで利益が増加するため、生産コストを抑えるための企業努力は積極的にした方がよい。
「戦略的補完性」の関係があるとき、企業は費用削減することで利益があまり増加しないため、単純な費用削減を目的とした企業努力はしない方がよい。
グラフで確認する
仮に、企業Aが費用削減を実現して、生産コストが0になったケースを考えます。
このとき、企業Aの利益は‥
反応曲線より、企業の直面する状況が
- 「クールノー競争」なら、費用削減に積極的になることで利益増加につながる
- 「ベルトラン競争」なら、費用削減に積極的になっても利益にはあまり影響しない
さらに詳しく
ちなみに、ベルトラン競争(価格競争)の場合、費用削減を進めると単純な価格競争に繋がってしまいます。この状況を脱するための1つの方法は「製品差別化」です。
つまり、ベルトラン競争の場合は費用削減に努めるよりも、新しい技術や、他社との差別化を図るための企業努力が重要になることが分かります。