ミクロ経済学

【余剰分析】総余剰の最大化と死荷重の意味・求め方

2020年5月24日

余剰分析で必要となる「総余剰」「死荷重」「政府介入」などの情報をまとめています。

  • 総余剰(社会的余剰)とは
  • 総余剰(社会的余剰)のグラフ
  • 総余剰(社会的余剰)の求め方・計算
  • 死荷重(デッドウェイトロス)意味
  • 政府介入(規制・課税・関税・補助)の分析

総余剰(社会的余剰)とは

総余剰(社会的余剰)

社会全体で発生する余剰の合計のこと。

総余剰(TS)=消費者余剰(CS)+生産者余剰(PS)

 

ここに注目

余剰分析では、総余剰が最大化することを「社会的に最も望ましい状態」と考えます

総余剰は”経済的な厚生※”の指標として扱われる。(※経済的厚生とは、社会にいる人々の効用・満足度の合計のこと)「総余剰が最大化=社会にいる人々の効用・満足度の合計が最大」と考える。

 

総余剰は消費者余剰・生産者余剰の合計

消費者余剰(CS)

生産者余剰(PS)

 

グラフで確認する

 

需要曲線と供給曲線があります

価格が「P1」で決まって生産量は「Q1」となりました。

 

このときの総余剰は?

  • 需要曲線の切片となる「P2」
  • 市場均衡点「E」
  • 供給曲線の切片となる「P0」

この3つの点からなる三角形部分が総余剰となります

総余剰(TS)=「三角形P2・E・P0」

 

ちなみに

総余剰(社会的余剰)は「消費者余剰(CS)」「生産者余剰(PS)」に分けられます

 

北国宗太郎
北国宗太郎
消費者余剰と生産者余剰を覚えていれば簡単!
うん。しっかりと覚えておきましょう。
牛さん
牛さん

 

計算方法・求め方

 

ポイント

基本的には三角形の計算を思い出す

 

例えば

  • 財Aの需要曲線が「D=-20P+500」
  • 財Aの供給曲線が「S=30P-150」

このとき、市場均衡点における総余剰はいくらか?

 

均衡点は「需要曲線と供給曲線が交わる」という事を意味しているので「D=S」として計算します。

  • -20P+500=30P-150

次に均衡点における市場価格を計算します。

  • 50P=650
  • P=13

「S=30P-150」に市場価格のP=13を代入します。

  • S=390-150=240

これで、市場均衡点における価格と供給量(生産量)が分かりました。

 

グラフで見ると

三角形の面積を求めるには、2つの切片()の値が必要です。

 

  • ①需要曲線「D=-20P+500」を「P=●●の形(逆需要関数)」にする

20P=-D+500
P=(-D+500)/20

切片なので横軸の需要量(D)は0となります

グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。

 

P=(-0+500)/20
P=(500)/20
P=25

 

  • ②供給曲線「S=30P-150」を「P=●●の形(逆供給関数)」にする

30P=S+150
P=(S+150)/30

切片なので横軸の供給量(S)は0となります

グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。

 

P=(0+150)/30
P=(150)/30
P=5

 

以上より

 

ポイント

後は「(縦×横)÷2」で三角形の面積を求めるだけです。

 

  • 縦=(25-5)=20
  • =240

(20×240)÷2=2400

以上より、社会的余剰(TS)=2400

 

北国宗太郎
北国宗太郎
消費者余剰・生産者余剰が計算できれば簡単。
グラフで状況を整理しながら計算すれば、ミスも減るよ!
牛さん
牛さん

死荷重(デッドウェイトロス)とは

死荷重(デッドウェイトロス)

総余剰が最大化されないときの社会的な損失部分のこと。

厚生損失・死重損失などとも言う。

 

ある市場で

  • 均衡点で取引した場合の総余剰は

 

ここで、何かしらの理由で均衡点で取引が出来なくなった場合を考えます

 

グラフで見ると‥

何かしらの理由で生産量が「Q2」となった場合、均衡点からずれているため経済的な効率性が失われている。このとき、三角形ABE(赤色)部分が死荷重となる。

 

さらに詳しく

余剰分析では大きく3つの経済主体が登場します。

  • 消費者余剰(CS)=消費者が得した分
  • 生産者余剰(PS)=生産者が得した分
  • 政府余剰(GS)=政府が得した分(税金収入)

仮に均衡点以外で取引を行うと、どの経済主体にも属さない部分(誰も得していない部分)が発生してしまいます。それを死荷重(デッドウェイトロス・厚生損失・死重損失)と呼んでいます。

誰も得をしないので死荷重を「社会的損失」と捉えることも出来ます(均衡点で取引をしていれば、社会全体で”得した分”の合計がもっと増えていたはず)。つまり、死荷重が発生している=誰も得をしていない部分があるので、経済的には望ましくない(効率的ではない)というわけです。

 

北国宗太郎
北国宗太郎
どうして市場均衡点で取引が行われないのかな?
それがここからの本題です。
牛さん
牛さん

 

市場では、何かしらの理由で均衡点で取引が行われない場合があります。

具体例を考えてみましょう!

 

例えば

政府が市場へ介入することで、市場の効率性が失われて総余剰が減少する。このとき、総余剰の減少分は死荷重(デッドウェイトロス)に該当する。

 

政府介入の例

  • 価格規制(上限・下限)
  • 数量規制(上限・割り当てなど)
  • 参入規制
  • 従量税・従価税・定額税
  • 補助金の支給
  • 保護貿易(関税・割当・補助など)
  • その他外部性が発生する事象

ポイント

政府は、さまざまな理由から市場へ介入します。このとき、市場では経済効率性が失われて死荷重(デッドウェイトロス)が生まれます。

死荷重(デッドウェイトロス)の学習をするときは、政府などの外部の影響を考えることが重要です。

 

具体的な求め方や計算方法は次の章から

規制・課税・補助金・保護貿易(関税等)・外部性の分析

 

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