余剰分析で必要となる「総余剰」「死荷重」「政府介入」などの情報をまとめています。
- 総余剰(社会的余剰)とは
- 総余剰(社会的余剰)のグラフ
- 総余剰(社会的余剰)の求め方・計算
- 死荷重(デッドウェイトロス)意味
- 政府介入(規制・課税・関税・補助)の分析
総余剰(社会的余剰)とは
ここに注目
余剰分析では、総余剰が最大化することを「社会的に最も望ましい状態」と考えます。
総余剰は”経済的な厚生※”の指標として扱われる。(※経済的厚生とは、社会にいる人々の効用・満足度の合計のこと)「総余剰が最大化=社会にいる人々の効用・満足度の合計が最大」と考える。
総余剰は消費者余剰・生産者余剰の合計
グラフで確認する
需要曲線と供給曲線があります
価格が「P1」で決まって生産量は「Q1」となりました。
このときの総余剰は?
- 需要曲線の切片となる「P2」
- 市場均衡点「E」
- 供給曲線の切片となる「P0」
この3つの点からなる三角形部分が総余剰となります
総余剰(TS)=「三角形P2・E・P0」
ちなみに
総余剰(社会的余剰)は「消費者余剰(CS)」「生産者余剰(PS)」に分けられます
計算方法・求め方
ポイント
基本的には三角形の計算を思い出す。
例えば
- 財Aの需要曲線が「D=-20P+500」
- 財Aの供給曲線が「S=30P-150」
このとき、市場均衡点における総余剰はいくらか?
均衡点は「需要曲線と供給曲線が交わる」という事を意味しているので「D=S」として計算します。
- -20P+500=30P-150
次に均衡点における市場価格を計算します。
- 50P=650
- P=13
「S=30P-150」に市場価格のP=13を代入します。
- S=390-150=240
これで、市場均衡点における価格と供給量(生産量)が分かりました。
グラフで見ると
三角形の面積を求めるには、2つの切片(?)の値が必要です。
- ①需要曲線「D=-20P+500」を「P=●●の形(逆需要関数)」にする
20P=-D+500
P=(-D+500)/20
切片なので横軸の需要量(D)は0となります
グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。
P=(-0+500)/20
P=(500)/20
P=25
- ②供給曲線「S=30P-150」を「P=●●の形(逆供給関数)」にする
30P=S+150
P=(S+150)/30
切片なので横軸の供給量(S)は0となります
グラフの横軸は”生産量Q”という表記になっていますが、需要量(D)・供給量(S)と同じ意味です。
P=(0+150)/30
P=(150)/30
P=5
以上より
ポイント
後は「(縦×横)÷2」で三角形の面積を求めるだけです。
- 縦=(25-5)=20
- 横=240
(20×240)÷2=2400
以上より、社会的余剰(TS)=2400
死荷重(デッドウェイトロス)とは
死荷重(デッドウェイトロス)
総余剰が最大化されないときの社会的な損失部分のこと。
※厚生損失・死重損失などとも言う。
ある市場で
- 均衡点で取引した場合の総余剰は
ここで、何かしらの理由で均衡点で取引が出来なくなった場合を考えます
グラフで見ると‥
何かしらの理由で生産量が「Q2」となった場合、均衡点からずれているため経済的な効率性が失われている。このとき、三角形ABE(赤色)部分が死荷重となる。
さらに詳しく
余剰分析では大きく3つの経済主体が登場します。
仮に均衡点以外で取引を行うと、どの経済主体にも属さない部分(誰も得していない部分)が発生してしまいます。それを死荷重(デッドウェイトロス・厚生損失・死重損失)と呼んでいます。
誰も得をしないので死荷重を「社会的損失」と捉えることも出来ます(均衡点で取引をしていれば、社会全体で”得した分”の合計がもっと増えていたはず)。つまり、死荷重が発生している=誰も得をしていない部分があるので、経済的には望ましくない(効率的ではない)というわけです。
市場では、何かしらの理由で均衡点で取引が行われない場合があります。
具体例を考えてみましょう!
例えば
政府が市場へ介入することで、市場の効率性が失われて総余剰が減少する。このとき、総余剰の減少分は死荷重(デッドウェイトロス)に該当する。
政府介入の例
- 価格規制(上限・下限)
- 数量規制(上限・割り当てなど)
- 参入規制
- 従量税・従価税・定額税
- 補助金の支給
- 保護貿易(関税・割当・補助など)
- その他外部性が発生する事象
ポイント
政府は、さまざまな理由から市場へ介入します。このとき、市場では経済効率性が失われて死荷重(デッドウェイトロス)が生まれます。
死荷重(デッドウェイトロス)の学習をするときは、政府などの外部の影響を考えることが重要です。
具体的な求め方や計算方法は次の章から
規制・課税・補助金・保護貿易(関税等)・外部性の分析