一般均衡理論で語られることの多い「ワルラス均衡」と「ワルラス法則」について、教科書の数式ではイマイチ分からないという人向けに簡単な解説をしています。
- ワルラス均衡
- ワルラス法則
- 意味や数式で考える
- 簡単な計算問題
ワルラス均衡とは?
(Wikipediaより レオン・ワルラス)
ワルラス均衡とは
消費者が効用最大化(生産者が利潤最大化)を実現しており、かつ、その時の需要と供給が全市場で一致する資源配分(市場均衡点)のこと。
はじめに
ワルラス均衡には2つの条件があります。言い換えると、2つの条件を満たす状態(資源配分)をワルラス均衡と呼びます。
- (条件①)消費者の効用最大化(生産者の利潤最大化)が実現する
- (条件②)全市場の需要と供給が一致する
生産者を含めると話が少しだけ複雑になるので、はじめに2人の消費者が財を交換している交換経済を考えます。
交換経済のワルラス均衡
前提
- Aさん・Bさんが2財を交換するケースを考えます
- 2財は、それぞれX財・Y財です
step
1消費者が効用最大化を実現する
消費者が効用最大化を実現するためには
- Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
- Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
の式を最大化すればよいことが分かります。
教科書の表記の意味がよく分からずに困る人が多いようなので簡単に補足です。「効用関数=U(x,y)」の(x,y)は、X財の消費量を「x」・Y財の消費量を「y」を表しています。「xa」でAさんのX財の消費量という意味。
また、(x,y)は変数を表しており「○x・○y」となります。以上より「効用関数=U(X,Y)」は「U=○x・○y」という効用関数を表しています、○の部分は1や2などの数字が入りますよ、という意味です。ちなみに「Ua」はAさんの効用関数を表しています。
また
交換経済なので、AさんとBさんはX財・Y財をそれぞれ初期保有しています(そもそも、2財しかない世界で、2人が財を持っていないと交換なんてできないですよね?)。
ここで、初期保有している財の価値を数字で表さないと、その後の計算が出来ないので貨幣価値に直します。⇒初期保有量に財の価格を掛けます。
また、100円の価値のあるものは、ふつうに考えると100円の価値以上のものとは交換できません。ブラウン管TVを4Kディスプレイに交換できないのと一緒です。
以上より
初期保有量に財の価格を掛けたものは、その人の予算額とイコールになります(予算の範囲内でしか財の交換はできない)。
予算制約式=(X財の価格×X財の保有量)+(Y財の価格×Y財の保有量)となります。
つまり
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- Xa=AさんのX財の初期保有量
- Ya=AさんのY財の初期保有量
とすると
Aさんの予算式=Px・Xa+Py・Ya
同様に
Bさんの予算式=Px・Xb+Py・Yb
ポイント
さきほど記載した通り、自分の予算内で財を交換すると考えます。
効用最大化時の条件
例えばAさんの効用最大化をするときに、予算内でしか財を交換できないため、次のような条件を付け加えます。
Aさんの実際の消費量(財の交換後の2財の保有量)≦Aさんの予算式
- (Px・xa+Py・ya)≦(Px・Xa+Py・Ya)
左辺の小文字の「Xa」「Ya」でAさんの2財の消費量を表しています。右辺の大文字の「Xa」「Ya」でAさんの初期保有量を表しましたが、教科書では文字に「-(バー)」を引いていることが多い印象です。
まとめ
- ワルラス均衡の1つ目の条件「消費者が効用最大化を実現する」は下記のように表す
(Max)Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
(Max)Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
「Max」は2人の効用(関数)を最大化させるという意味
(subject to/s.t)
Aさんの条件:Px・xa+Py・ya ≦ Px・Xa+Py・Ya
Bさんの条件:Px・xb+Py・yb ≦ Px・Xb+Py・Yb
「subject to」は"次の条件を満たす必要がある"ということを表す。ここでは「予算の条件を満たして効用最大化をする必要がある」という意味。
step
2全市場で需要と供給が一致する
はじめに財の供給について考えます。
改めて交換経済を想定していることを思い出してください。財を交換するとき、Aさん・Bさんは初期保有している分しか交換に差し出せません。
つまり、財の供給量は「Aさんの初期保有量+Bさんの初期保有量」となります。
次に財の需要について考えます。
Aさん・Bさんがどのような需要を持っているのか?を考えます。考え方は凄く簡単です。Aさん・Bさんは自身の需要関数(D)に従って、財の交換をしたがるはずなので2人の需要関数(D)を財の需要と考えます。
つまり、財の需要は「Aさんの需要関数+Bさんの需要関数」となります。
ここで、需要と供給が一致します。
- 需要「Aさんの需要関数+Bさんの需要関数」
- 供給「Aさんの初期保有量+Bさんの初期保有量」
この2つを数式にしてイコールで結べばよい。
供給
- Xa=AさんのX財の初期保有量
- Xb=BさんのX財の初期保有量
- Ya=AさんのY財の初期保有量
- Yb=BさんのY財の初期保有量
とすると
「X財の供給=Xa+Xb」
「Y財の供給=Ya+Yb」
需要
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- xa=AさんのX財の消費量
- xb=BさんのX財の消費量
- ya=AさんのY財の消費量
- yb=BさんのY財の消費量
とすると
「X財の需要=xa(Px,Py)+xb(Px,Py)」
「Y財の需要=ya(Px,Py)+yb(Px,Py)」
「x●(Px,Py)」「y●(Px,Py)」の意味ですが、これはX財の需要関数(D)・Y財の需要関数(D)を表しています。例えば「xa(○,○)」でAさんのX財需要・「xb(○,○)」でBさんのX財需要を表します。
X財の消費量(需要)がどのように決まるのか?を式で考えると「X財の消費量(x)=~」となります。なので「x(○,○)」という風に「x」が始めに記載されます。
次に(Px,Py)ですが、効用関数(U)のときと同じく変数を表します。つまり、需要関数は「x=○Px・○Py」のような形になるということです(こちら(最後の段落)で効用関数から需要関数を求めた結果に「Px・Py」があることを確認してみてください。)
少し突っ込んだ話をすると「財の需要というのは、価格の影響を受ける」ということ読み取れます。
まとめ
- X財市場の需給の一致
X財の供給=Xa+Xb
X財の需要=xa(Px,Py)+xb(Px,Py)
xa(Px,Py)+xb(Px,Py)=Xa+Xb
- Y財市場の需給の一致
Y財の供給=Ya+Yb
Y財の需要=ya(Px,Py)+yb(Px,Py)
ya(Px,Py)+yb(Px,Py)=Ya+Yb
ワルラス均衡とは
次の①・②の条件を満たすときの資源配分(市場均衡点)のことを言う。
①消費者が効用最大化を実現しており
(Max)Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
(Max)Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
(subject to/s.t)
Aさんの条件:Px・xa+Py・ya ≦ Px・Xa+Py・Ya
Bさんの条件:Px・xb+Py・yb ≦ Px・Xb+Py・Yb
②さらに全市場の需給が一致している
xa(Px,Py)+xb(Px,Py)=Xa+Xb
ya(Px,Py)+yb(Px,Py)=Ya+Yb
ちなみに生産経済の場合は‥
生産経済のワルラス均衡
前提
- 企業1・消費者2人(Aさん・Bさん)の市場を考えます
- 2財は、それぞれX財・Y財です
- 生産要素は2人の労働力(L)です
- 企業の株式はAさん・Bさんが全て保有しています
イメージはロビンソン・クルーソー経済です。
step
1消費者が効用最大化を実現する
消費者が効用最大化を実現するためには
- Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
- Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
の式を最大化すればよいことが分かります。
この部分は交換経済のケースと同じです。
また
生産経済では、AさんとBさんの予算(所得)は次の2つがあります
- 労働の報酬(賃金収入)
- 企業の利潤の分配(配当収入)
2つの収入を文字で表すと‥
- Aさんの労働量=La
- Bさんの労働量=Lb
- 賃金=w
より、労働収入は「賃金(w)×労働量(L)」なので「w・La+w・Lb」
- Aさんの株式保有量=Sa
- Bさんの株式保有量=Sb
- 企業の利潤=π
より、配当収入は「利潤(π)×株式保有量(S)」なので「π・Sa+π・Sb」
※企業の利潤(π)は、全額配当として株主へ還元されると考える。
つまり
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- AさんのX財消費量=xa
- BさんのX財消費量=xb
- AさんのY財消費量=ya
- BさんのY財消費量=yb
とすると
(Aさんの予算式)Px・xa+Py・ya=w・La+π・Sa
同様に
(Bさんの予算式)Px・xb+Py・yb=w・Lb+π・Sb
まとめ
- ワルラス均衡の条件「消費者が効用最大化を実現する」は下記のように表します
(Max)Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
(Max)Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
「Max」は2人の効用(関数)を最大化させるという意味
(subject to/s.t)
Aさんの条件:Px・xa+Py・ya=w・La+π・Sa
Bさんの条件:Px・xb+Py・yb=w・Lb+π・Sb
「subject to」は"次の条件を満たす必要がある"ということを表す。ここでは「予算の条件を満たして効用最大化をする必要がある」という意味。
step
2生産者が利潤最大化を実現する
生産者が利潤最大化を実現するためには
- 企業の利潤関数「(商品価格×生産販売量)-(賃金×労働量)」を最大化すればよい
ここで
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- X財の生産量=x
- Y財の生産量=y
- 労働の投入量=L
- 賃金=w
とすると、企業の利潤関数は「Px・x+Py・y-w・L」
また
企業の商品生産は「生産関数」に影響を受ける
- X財の生産量=x
- Y財の生産量=y
- 労働量の投入量=L
生産要素は労働量(L)のみなので
- X財の生産関数(x)=F(L)
- Y財の生産関数(y)=F(L)
「x=F(L)」は「x=○L」という意味です。○というのは数字が決まっておらず、2とか3が入るような式になることを表しています。
まとめ
- ワルラス均衡の条件「生産者が利潤最大化を実現する」は下記のように表します
(Max)企業の利潤関数:Px・x+Py・y-w・L
「Max」は企業の利潤(関数)を最大化させるという意味
(subject to/s.t)
企業の条件(生産関数)①:x=F(L)
企業の条件(生産関数)②:y=F(L)
「subject to」は"次の条件を満たす必要がある"ということを表す。ここでは「生産関数に従って利潤最大化をする必要がある」という意味。
step
3全市場で需要と供給が一致する
全市場というのは次の3つです。
- X財市場の需給
- Y財市場の需給
- 労働市場の需給
また、需要と供給というのは
需要「財の消費量(企業の労働投入量)」
供給「財の生産量(2人の労働量)」
つまり
- (AさんのX財消費量+BさんのX財消費量)=(企業のX財生産量)
- (AさんのY財消費量+BさんのY財消費量)=(企業のY財生産量)
- (企業の労働投入量)=(Aさんの労働量+Bさんの労働量)
- AさんのX財消費量=xa
- BさんのX財消費量=xb
- 企業のX財生産量=x
- AさんのY財消費量=ya
- BさんのY財消費量=yb
- 企業のY財生産量=y
- Aさんの労働量=La
- Bさんの労働量=Lb
- 労働量の投入量=L
以上より
- (X財市場)xa+xb=x
- (Y財市場)ya+yb=y
- (労働市場)La+Lb=L
まとめ
- (生産経済における)ワルラス均衡とは
次の①・②・③の条件を満たすときの資源配分(市場均衡点)のことを言う。
①消費者が効用最大化を実現しており
(Max)Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)
(Max)Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)
(subject to/s.t)
Aさんの条件:Px・xa+Py・ya=w・La+π・Sa
Bさんの条件:Px・xb+Py・yb=w・Lb+π・Sb
②生産者が利潤最大化を実現しており
(Max)企業の利潤関数:Px・x+Py・y-w・L
(subject to/s.t)
企業の条件(生産関数)①:x=F(L)
企業の条件(生産関数)②:y=F(L)
③さらに全市場の需給が一致している
(X財市場)xa+xb=x
(Y財市場)ya+yb=y
(労働市場)La+Lb=L
交換経済と生産経済のワルラス均衡が分かったところで・・
ワルラス均衡の含意
ポイント
ワルラス均衡はそれ自体に大きな意味があるというよりも、この後の様々な議論をするときに役立つ。
そもそも
均衡といった場合「需要曲線と供給曲線が交わったところ均衡点と言って~」とか、「市場が均衡しているとき~」などと使われます。
ワルラス均衡は、具体的に均衡を定義しています
これまでは言葉とかグラフで均衡と表現していたものを、より具体的な条件を使って、数学的に表現したことで、この後の議論をし易くしています。
ちなみに「市場均衡」とか「競争均衡」という場合、「ワルラス均衡」を意味しています。つまり、古典的なミクロ経済学の分野で均衡というとき、ワルラス均衡の条件を満たしていることを前提に議論を進めているのです。計算問題でも「市場均衡点」「競争均衡点」という言葉が出てきたとき、ワルラス均衡の条件を満たすことを前提に問題が出されています。そのような問題で、消費者の効用最大化を求めたり、需給が一致するように計算するのはそのためです。
このあとの議論について
ワルラス均衡から「ワルラスの法則」や「厚生経済学の基本定理」へと話が繋がります。なので、ワルラス均衡について分かったけど「だから何?」と思っても、その後の議論の前提になっているという風に理解すればOKです。
ワルラス法則とは?
ワルラスの法則
完全競争市場では、全ての市場の超過需要額の和が0に等しい(総需要と総供給は一致する)という考えのこと。
前提
- X財の価格=Px
- Y財の価格=Py
- xa=AさんのX財の消費量
- xb=BさんのX財の消費量
- ya=AさんのY財の消費量
- yb=BさんのY財の消費量
- Xa=AさんのX財の初期保有量
- Xb=BさんのX財の初期保有量
- Ya=AさんのY財の初期保有量
- Yb=BさんのY財の初期保有量
交換経済を想定して、AさんとBさんが財を交換するとします。
ワルラス均衡の項目で説明したとおり、AさんとBさんの予算式は
- Aさん(Px・xa+Py・ya)≦(Px・Xa+Py・Ya)
- Bさん(Px・xb+Py・yb)≦(Px・Xb+Py・Yb)
この2人の予算式から市場全体を考えます。市場全体と言っても2人しかいませんので、2人の予算式を合体させればOKです。
- (X財とY財の実際の消費額)≦(X財とY財の予算額(初期保有量))
⇒(Px・xa+Py・ya)+(Px・xb+Py・yb) ≦ (Px・Xa+Py・Ya)+(Px・Xb+Py・Yb)
長いので「Px・Py」でくくります。
⇒Px(xa+xb)+Py(ya+yb) ≦ Px(Xa+Xb)+Py(Ya+Yb)
上記の式は「AさんとBさんのX財・Y財の実際の消費額」≦「AさんとBさんのX財・Y財の予算額(初期保有量)」となっており、市場全体の予算線を意味しています。
また、「≦」と置いていましたが、各消費者は効用最大化のために予算をすべて使い切ると考えるため「=」とします。以上より
Px(xa+xb)+Py(ya+yb)=Px(Xa+Xb)+Py(Ya+Yb)
ここで「左辺は市場の総需要」を「右辺は市場の総供給」を表している
左辺は、2人の実際の消費額=需要なので分かりやすいかと思います。右辺ですが、ワルラス均衡で説明した通り、交換経済では初期保有している分を交換に差し出すことができる(供給する)と考えています。
以上より、完全競争市場では、総需要と総供給が一致することが分かる。
ポイント
超過需要が0になるという意味について
例えば
- X財・Y財の需要が各10個だとします
ここで、X財の需要が11個になった場合、超過需要1個(11個-10個)となります。
このとき、供給もX財11個が必要になります。しかし、市場の予算額(初期保有量)には限りがあるので、X財を11個供給したらY財の供給を1個減らす必要があります
X財の供給を1個増やしたため、Y財の供給が9個(10個-1個)になります。供給が減ったので、それに合わせて需要も1個減ります。
以上より、Y財の需要は9個になります。これを超過需要-1個(9個-1個)と考えます。
ポイント
つまり、X財の超過需要が1個となった場合、Y財の超過需要は-1個となり「1-1=0」で市場全体の超過需要は0となる。
このように「完全競争市場では、市場全体の超過需要が0になる」というのがワルラス法則の考え方です。
重要
- ワルラス法則から何が分かるのか
ワルラスの法則の定義について説明したところで、これが何を意味しているのか?(ワルラスの法則が成立するとどんなことが言えるのか?)を簡単に補足します。
ポイントは2つあります
- そもそも市場には均衡が存在するのか?
- 厚生経済学の基本定理の証明
① ワルラスの法則により、全市場の需要と供給が一致する均衡点(一般均衡)が存在するのかを確かめることが出来る。
ポイント
少々難易度が高い話なので、ここではサラッと触れます。
ワルラスの法則等により、全ての市場を均衡させる価格水準(価格体系)を連立方程式として表現することが出来ます。
また、需要関数はゼロ次同次性を満たすため、全ての価格を○倍しても需要量は変化しないことを考慮したりすると、最終的にすべての市場を均衡させる価格体系が存在することが分かります。
② ワルラスの法則により、厚生経済学の基本定理を証明することが出来る。
ポイント
経済学では重要となる「厚生経済学の基本定理」を簡単に証明することができる。
ちなみに、この定理を数学的に証明したのもアローです。
厚生経済学の基本定理は大きなトピックなので、ここではサラッと触れます。
「完全競争市場によって辿り着く均衡点(ワルラス均衡)は、パレート効率的になる」というのが厚生経済学の基本定理ですが、ワルラスの法則を使えば簡単に証明できます。
完全競争市場がパレート効率的になるかは、エッジワース・ボックスなどを使って確認できますが、これよりも簡単に証明できます。
ワルラス均衡の求め方・計算方法
いま、消費者が2人で、X財とY財が存在する交換経済を考える。
Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)=3xa・ya
Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)=2xb・yb
Aさんの初期保有量:Ea(20,80)
Bさんの初期保有量:Eb(80,20)
X財の価格=Px
Y財の価格=1
- Aさん・Bさんの予算制約線を求めよ
- 競争均衡におけるAさんとBさんの各財の消費量はいくらか
- 競争均衡における均衡価格を求めよ
step
12人の予算制約式を考える
ワルラス均衡の予算式で説明した通り
「(価格×実際の消費量)=(価格×初期保有量)」が予算制約となるので
- Aさんの予算制約式:Px・xa+Py・ya=20×Px+80×1なので「Px・xa+Py・ya=20Px+80」
- Bさんの予算制約式:Px・xb+Py・yb=80×Px+20×1なので「Px・xb+Py・yb=80Px+20」
step
2競争均衡を考える
競争均衡とはワルラス均衡のことです。
ワルラス均衡の条件である「消費者の効用最大化」を求めることがポイントです
Aさん・Bさんの効用最大化を求めます。
(Max)
Aさんの効用関数:Ua(xa, ya)=3xa・ya
Bさんの効用関数:Ub(xb, yb)=2xb・yb
(subject.to.)
Aさんの予算制約式:Px・xa+Py・ya=20Px+80
Bさんの予算制約式:Px・xb+Py・yb=80Px+20
上記のときのX財・Y財の消費量を求めればOKです。
2人の限界代替率が知りたいので、問題文で与えられている効用関数から求めます。
ポイント
効用関数(無差別曲線)を微分すれば「傾き(限界代替率)」が求められます。
参考:最適消費点の計算方法(2-3.計算方法を参照)
- Aさんの効用関数「Ua(xa, ya)=3xa・ya」より
「ya=Ua/3xa」とする
「ya=Ua/3xa」を微分すると⇒「Ua/-3xaの2乗(=U・-3xaの-2乗)」
ちなみに分数は「(1/2)=2の-1乗」なので注意しましょう。
ここで
「Ua」という文字が邪魔なので、Uaを「xaとya」に置き換えます。
「Ua=3xa・ya」を「Ua/-3xaの2乗」に代入します。
「Ua(=3xa・ya)/-3xaの2乗」⇒「3xa・ya/-3xaの2乗」=「-(ya/xa)」
Bさんの限界代替率も同様に求めると「-(yb/xb)」となります。
以上より
- Aさんの限界代替率=「-(ya/xa)」
- Bさんの限界代替率=「-(yb/xb)」
次に
効用最大化(最適消費)が実現するとき「予算制約線の傾き=限界代替率」が等しいということを思い出します。
- X財の価格=Px
- Y財の価格=1
より、予算制約線の傾きは「Px/1」なので「Px」となる。
以上より
- Aさん:Px=(ya/xa)
- Bさん:Px=(yb/xb)
限界代替率は厳密にはマイナスが付きますが、計算上は不要になるので外します。
それぞれ「x=・y=」の形にします‥
- xa=ya/Px
- ya=Px・xa
- xb=yb/Px
- yb=Px・xb
また
予算制約式も「x=・y=」の形にします
Aさんの予算制約式:Px・xa+Py・ya=20Px+80
Bさんの予算制約式:Px・xb+Py・yb=80Px+20
Aさんの予算線より
- Px・xa+Py・ya=20Px+80
- Px・xa+ya=20Px+80(Py=1なので消す)
- Px・xa=20Px+80-ya
- xa=20+(80-ya)/Px
- Px・xa+Py・ya=20Px+80
- Px・xa+ya=20Px+80(Py=1なので消す)
- ya=20Px+80-Px・xa
- ya=(20-xa)Px+80
ここから
さきほど下記のように求めたのでイコールで結びます
- xa=ya/Px
- ya=Px・xa
「xa=ya/Px」
「xa=20+(80-ya)/Px」より
- ya/Px=20+(80-ya)/Px
(両辺にPxをかける)
- ya=20Px+80-ya
- 2ya=20Px+80
- ya=10Px+40
「ya=Px・xa」
「ya=(20-xa)Px+80」より
- Px・xa=(20-xa)Px+80
(両辺をPxで割る)
- xa=20-xa+80/Px
- 2xa=20+80/Px
- xa=10+40/Px
Bさんも同様に計算して
- yb=40Px+10
- xb=40+10/Px
以上より
競争均衡におけるAさんとBさんの各財の消費量(最適消費量)は‥
Aさんの最適消費量(需要関数)
- xa=10+40/Px
- ya=10Px+40
Bさんの最適消費量(需要関数)
- xb=40+10/Px
- yb=40Px+10
step
3競争均衡の価格を考える
競争均衡の価格は「ワルラス均衡が実現するときの価格」を意味しています。
よって、ワルラス均衡が実現するとき「市場の需要と供給」が一致していることを思い出す。
市場に存在する2財の総量(供給量)は
Aさんの初期保有「X財20個・Y財80個」
Bさんの初期保有「X財80個・Y財20個」
なので合計でX財=100個・Y財=100となる。
Aさん・Bさんの最適消費量の合計は各100個になるはずなので「(AさんのX財の最適消費量)+(BさんのX財の最適消費量)=100」として価格を求める。
「X財=100」より
「10+40/Px」+「40+10/Px」=100
- 50+50/Px=100
- 50/Px=50
- Px=1
また、問題文より「Py=1」なので
以上より
競争均衡が実現するときの価格は「Px=1」※ワルラス均衡価格は「Px/Py=1」
この問題の場合は具体的に「Px=~円」という答えは出ません(ワルラス均衡では相対価格しか分からない)。価格比(相対価格)が求められればそれでOKです。ちなみに、上の答えの意味は「価格の比率が1:1となる組み合わせなら何でもOK」です。例えば「Px=500円ならPy=500円」「Px=1,000円ならPy=1,000円」などが考えられます。