経済学では、市場に任せておけば効率的になるという「市場原理(市場メカニズム)」という考え方があります。しかし、必ず上手く行くわけではありません。
- どんな状況だと市場が機能しないのか
- 市場の失敗の例
よく登場する「市場の失敗」の例をまとめています。
市場の失敗とは?
市場の失敗とは
市場原理(市場メカニズム)が機能せず、経済的な非効率さが生まれている状態。
財やサービスの取引を市場に任せた結果、経済的に望ましい資源配分(パレート最適)が達成されない状態のこと。
※狭義では「完全競争市場」で引き起ったものを市場の失敗と呼ぶが、広義では「不完全競争市場」の話も含む。
市場が機能するためには
次の4つの条件を満たす必要があります
- 完全競争(プライステイカー)
- 完全情報
- 標準的製品(財の同質性)
- フリー・エントリー(自由参入・自由退出)
[完全競争]市場には消費者・企業がたくさんいる。そして、全員が価格受容者(プライステイカー)である。[完全情報]消費者と企業は、持っている情報に偏りがなく全ての情報を知っている。
[財の同質性]さらに、同じ財やサービスなら、価格は同一で扱われる。[フリー・エントリー]市場への参加(撤退)は自由にできます。
「市場の失敗」は、この4つの条件が満たされない時に発生します
ココに注意
現実にこの条件を満たす市場はほぼありません。そのため、身近なところで何かしらの「市場の失敗」が引き起っています。
市場の失敗:例① 外部性
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ポイント
第三者へ良い影響を与える「正の外部性」は、それにタダ乗りする人がたくさん現れて供給が過小になる。
一方で、第三者へ悪い影響を与える「負の外部性」があるものは、当事者が責任を負わないため供給が過剰になる。
例えば
- 養蜂家と果樹農家(正の外部性)
- 都市開発(正の外部性)
- 公害(負の外部性)
- 帰省ラッシュ(負の外部性)
外部性は、個人や企業の活動が、関係のないところで影響を及ぼします。そのため、そうした便益や損失が市場でのやり取りに含まれていないことが問題です。
詳しくはこちら
⇒ 「外部性」外部(不)経済とは?具体例や解決方法を分かりやすく解説!
市場の失敗:例② 公共財
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ポイント
公共財は、お金を支払わなくても利用できる性質(排除不可能)から、サービス提供者が負担を強いられる。(料金を完全に徴収できないため)
その結果、本来よりも高い費用でサービスが提供されることになり、必要とされる量よりも過小供給となる。
例えばこんな問題が生まれます
- 共有地の悲劇
- フリーライダー問題
近年話題になる「オーバーツーリズム」は共有地の悲劇に該当する「市場の失敗」の例です。
詳しくはこちら
⇒ 公共財とは?「財の4つの分類」引き起こる問題点を分かりやすく解説!
市場の失敗:例③ 独占市場
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自然独占とは?例を交えて「市場の失敗」が起こる理由・規制方法をわかりやすく
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ポイント
市場が独占的になると、財やサービスの価格が高止まりして消費者が余計な負担を強いられる。全体で見た場合でも、競争がないため、企業が経営努力を怠るなどの非効率さが残る。
独占市場は、競争の結果として生まれることもあり、その傾向が強い産業もあります。
関係する有名な話
- 費用逓減産業
- 自然独占
身近な電気・水道・鉄道・通信などのインフラ産業は、なるべくして独占状態となっています(競争が働きづらい産業構造)
詳しくこちら
⇒ 費用逓減産業とは?具体例とグラフを交えて分かりやすく解説!
市場の失敗:例④ 情報の非対称性
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経済学では必ず登場する「情報の非対称性」 就職活動で発生する問題 中古市場での逆選択 保険市場でのモラルハザード これを ...
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ポイント
情報が行き渡っていないと、情報を持っていない側が、品質の悪い商品やサービスを掴まされる逆選択が発生する。
また、相手の行動を完全に知ることが出来ない場合、見えないところで悪さやサボりが発生するモラルハザードやエージェンシー問題も発生する。
例えば次の市場で引き起ります
- 就活市場(労働市場)
- 中古自動車市場(レモン市場)
- 保険市場(モラルハザード)
就職・転職で引き起るミスマッチングなどは「市場の失敗」の例です。他にも悪い商品を掴まされた等。情報に偏りがあると問題がたくさん生まれます。
詳しくはこちら
⇒ 【情報の非対称性とは?】市場が失敗する具体例を分かりやすく紹介!