経済学で登場する有名な財の1つ「公共財」
- 経済学的な「公共財」とは?
- そもそも”財”とは?
- 共有地の悲劇・フリーライダー問題
「公共財」や「それ以外の財」の違いを分かりやすく解説!
公共財とは?
公共財とは?
経済学では、次の2つの性質を備えている財を「純粋公共財」と呼ぶ。どちらか1つの性質がある場合は「準公共財」と言う。
- 消費の非競合性(等量消費)
- 排除不可能性
※一般に「公共財」と呼ぶ場合は「純粋公共財」を指している。
財とは?
消費することで「満足感」や「何かしらの利益」が得られる商品・サービス・その他すべて。
ポイント
「財」は、この2つの条件の組み合わせで四種類に分かれます。
- 競合性 (同時にたくさんの人が使えるか)
- 排除可能性 (利用料を払った人だけが使えるか)
排除可能 | 排除不可能 | |
---|---|---|
競合性 | 私的財 | 準公共財(共有財・共有資源) |
非競合性 | 準公共財(クラブ財) | (純粋)公共財 |
私的財
排除可能 | 排除不可能 | |
---|---|---|
競合性 | 私的財 | 準公共財 |
非競合性 | 準公共財 | (純粋)公共財 |
コンビニなどで買っている商品など、一般的なモノ
例えば
コンビニで買ったパンや飲み物は、買った人しか飲めません。リンゴなら、買った人が食べてしまえば、他の人が食べることは出来ません。
こんな当たり前だと思っている財を「私的財」と呼びます。普通の経済学で想定しているのは私的財です。
クラブ財(準公共財)
排除可能 | 排除不可能 | |
---|---|---|
競合性 | 私的財 | 準公共財 |
非競合性 | 準公共財(クラブ財) | (純粋)公共財 |
お金を支払っていれば、同時に何人も消費できる商品やサービス
同時に何人でも消費できることを「競合性がない(非競合性)」と言います。
例えば
衛星放送やネット環境です。利用料を支払った人だけが、放送や通信サービスを受けれられますが、同時に何人でも利用できます。
クラブ財の「クラブ」は会員制といった意味合いがあります。会費を支払えば、みんなで使えるというイメージ。
身近なものなら
- インターネット回線(個人・法人等)
- 電気水道(個人・法人等)
- 電車・高速道路(混雑していない時のみ)
- 映画館(混雑していない時のみ)
- 有料図書館(混雑していない時のみ)
- Netflix(ネットフリックス)
- Amazon(アマゾンビデオ)
インターネット回線・電気水道は、公共の施設で無料で使える場合はクラブ財にはなりません。また、混雑している電車・高速道路・映画館・有料図書館も、お金を支払っても十分に利用できない可能性があるためクラブ財にはなりません。
さらに詳しく
クラブ財はインフラ系が多いことに注目です。同時に何人もの人が利用できるものは、設備をそろえるのに莫大なお金がかかります。そのため、参入障壁が高いです。
しかし、一度設備が完成すれば利益率も高く、生き残った企業による独占的な商売 (独占市場・寡占市場) が始まります。
こうした商品やサービスを扱う市場では、わずか3社で市場のシェア率が90%を超えていることも普通です。
初期投資は多額のお金が必要でも、設備が完成すれば追加費用が掛からなくなる分野を「費用逓減産業」と言います。費用逓減産業では、市場が独占的になる傾向があります。
共有財・コモンプール財(準公共財)
排除可能 | 排除不可能 | |
---|---|---|
競合性 | 私的財 | 準公共財(共有財・共有資源) |
非競合性 | 準公共財 | (純粋)公共財 |
お金を支払う必要はないが、複数人で消費できない商品やサービス
お金を支払っていない人でも利用できることを「排除不可能」と言います。
例えば
海洋資源(漁獲資源)や農地です。海で漁獲高に応じてお金を支払う必要も、農地で作物料を支払う必要もありません。もちろん海や農地の利用料なんてものはありません。
こうした資源は、一見すると皆が同時に使えると思えるかもしれませんが、数に限りがあり、一斉に消費すると資源が枯渇します。
そのため経済学では、排除不可能だけど、複数人では消費できない(競合性がある)と考えています
他には
- 森林
- 水資源
- 牧草地
- 灌漑(かんがい)※
- 観光地
- 混雑する一般道路
※灌漑とは、水路を作って田畑に必要な水を引きよせること。水を引きよせるにも限界がある。
旅行者の増加で、キャパシティーを超えた人数が観光地に押し寄せている状態を「オーバーツーリズム」(⇒ オーバーツーリズム・観光公害とは?) と言います。観光地に入るのは普通は無料です。鎌倉市に入っても入場料は支払いません。しかし、交通や宿泊施設にも限度があり、人が来すぎるとマヒしてしまいます(複数人では消費できない=競合性がある)。
有名な例
牧草地(共有地)があり、近くに羊の放牧を行っている羊飼いがたくさんいます。
放牧するのにお金はかかりませんので、羊飼いは放牧地に羊を放ちます。羊は、牧草をたくさん食べますが、一斉に牧草を食べると、牧草が繁殖する前に食べつくされてしまいます (資源の枯渇)。
普通はそんなことを気にしないので、羊が牧草を食べつくして牧草地は枯れ果てました (共有地の悲劇)。
公共財(純粋公共財)
排除可能 | 排除不可能 | |
---|---|---|
競合性 | 私的財 | 準公共財 |
非競合性 | 準公共財 | (純粋)公共財 |
公共財は、同時にたくさんの人が使えて、お金を払っていない人も使える財のこと。
お金を払わない、みんなで使える、そんな魔法みたいな財があるのか?と思う人もいるかもしれません。しかし、意外と多くあります。
例えば
- 公園
- 警察
- 消防
- 国防
- ゴミ回収
- 行政サービス
- 混雑しない一般道路
もちろん助ける人数にも限度があるので「共有財」に近いとも言えます。現実の世界では、そのような緊急事態が発生しないことから、公共財という位置づけで扱われます。
公共財には、大きく2つの問題が発生します。2つの問題は、経済学では有名&定番です。
問題① 供給が過小になる(グラフ)
ポイント
公共財は、お金を支払わなくても利用できる性質(排除不可能)から、サービス提供者が負担を強いられる。(料金を完全に徴収できないため)
その結果、本来よりも高い費用でサービスが提供されることになり、必要とされる量よりも過小供給となる。
経済学の一般的な考えでは、公共財は、政府や自治体が税金としてお金を徴収して、サービス提供するのが好ましいと考えれている
もう1度見てみよう
問題② フリーライダー問題
個人で公共財を提供するのは至難の業です。そのため、政府や地方自治体が、税金でお金を徴収して、公共財を提供することが重要になります。
ちなみに
公共財は、供給が過小になる以外にも、需要の測定が難しいという問題点もあります。
ここに道路があった方が良いと思う人は?
このように聞くと「う~ん、別に要らないかな」って答える人が居ます。しかし、いざ道路が出来ると、要らないといった人も、その道路を利用し始めます 。
公共財は、ヒアリングなどをしても過小申告される傾向にあるため、本当の需要が分かりづらいのです。
花火大会
公共財にまつわる話として、最後に花火大会を紹介します。
日本の花火大会が危機的状況なことを知っていますか?
花火大会は、お金を支払わなくても観賞できます。さらに、空に打ち上げられるのでたくさんの人が見ることが出来ます。
つまり、花火大会は「排除不可能」「競合性なし」という公共財の性質を備えたイベントです。
家族や恋人で楽しむことが出来る花火大会ですが、近年、大きく問題が発生しています。
step
1警備費用の増加
地域の人以外にも、観光客などが多く訪れているため、警備費用が増加し続けています。
この警備費用が、1回の花火大会で、1,000万円単位でかかることもあり、花火大会を運営する自治体が限界を迎えようとしています。
注意ポイント
公共財にはフリーライダー問題が発生するため、花火大会の見物料を徴収するのが非常に困難です。
step
2モラル意識の低下
フリーライダー問題から派生して、無料で参加できる花火大会に乗じてバカ騒ぎする人たちがいます。
花火大会が終われば、辺り一面がゴミの山になっている。その掃除をするのもボランティアの人たちです。
注意ポイント
こうした人たちが、大量に押し寄せて、酔って川に飛び込んだり、警備員の規制を無視したり、安全性を確保するのも難しくなっています。
財政的に豊かではなかったり、安全性の確保が難しい場合、花火大会は中止を余儀なくされています。
将来的には・・
花火が見える道路は規制されて、お金を払わないと入場できない。花火は、公共財として提供するのが難しくなっている以上、そのような措置が行われる可能性は当然あります。
花火が無料で見れる時代は終わりに近づいているかもしれません。