行動経済学のプロスペクト理論は、どうして「期待効用理論」と比較されるの?
「そもそも期待効用理論って何?」という人にも分かりやすく解説!
期待効用理論とは?
期待効用理論とは
私たちが普段の生活で、どのような基準で物事を考えているのかをまとめた理論。
経済学では伝統的な理論として登場しているが、問題があることが分かっている。
「期待効用仮説」とも呼ばれる。
効用
経済学には不思議な専門用語がありますが「効用(こうよう)」はその1つです。
効用とは、自分が得られる利益・便益・満足度などを言います。つまり「自分にとって良いモノ・自分を満足させてくれるもの」が効用です。
「期待効用」という場合
イメージは期待値と同じです。
例えば
50%で100万円が当たる宝くじがあれば、期待値は50万円です。
この時の「期待効用」も50万円です。
さらに詳しく
期待値との違って、期待効用の場合は「感情的なもの」も含まれます。
デートできる確率が50%あります。デート出来れば、嬉しさマックス(100)と考えれば、期待効用は「50」です。
期待効用
- 「自分が得られる利益・満足度」×「どれくらいの確率で得られるのか?」を表したもの。
「期待効用」の考えを応用したのが期待効用理論ですが、内容は簡単です!
ココがポイント
人が意思決定する時は、つねに「期待効用」を考えて判断している。これが期待効用理論です。
例えば
- 大好きな子とデート出来る確率が10%あります。デート出来れば嬉しさマックス(100)です。
- 好きじゃない子とデート出来る確率は50%。デートした時の嬉しさは、さっきの3割(30)程度です。
デートに誘おうか迷う男
期待効用を考えてみよう。大好きな子をデートに誘うと「10」の期待効用。そうでもない子なら「15」の期待効用だ。よし、好きじゃない子をデートに誘おう!
期待効用理論では、人が意思決定する時は、必ず期待効用を考えて判断していると考えています。
経済学では、期待効用理論の通りに人間が行動する、という前提で話が展開されます。
期待効用理論の問題点
期待効用理論は、一見すると正しいように聞こえます。
あなたも「どれくらいの利益が出そう」とか「どれくらい満足するか」を考えて行動しているかもしれません。
しかし、期待効用理論の困ったところは「人は常に期待効用を考えて行動する」という前提です。
人はそこまで合理的に行動していないのでは?
「期待効用理論」は経済学の有名な理論になりました。しかし、期待効用理論では説明がつかない問題も見つかります。
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宝くじの質問
選択肢A:確実に1,000ドルがもらえる。
選択肢B:10%の確率で2,500ドル・89%で1,000ドル・1%は賞金なし。
どちらの宝くじを選びますか?
ちなみに、1,000ドルは日本円で1万1,000円くらい。2,500ドルは2万7,000円くらい
結果
ほとんどの場合、選択肢Aが選ばれる。
=なぜか期待値が低い方が選ばれる。
ちなみに
期待効用理論では、このような現象を説明するために「リスクプレミアム」という考え方があります。
リスクプレミアム
確実な状況(100%)を手に入れるために、支払ってもいいと考える手数料・保険料などのこと。
人は100%の確率が好きな傾向がある (不確実性が残るのが嫌い) と考えられている。別の言い方をすると、リスクがあるだけで価値が低くなる。
(式)リスクプレミアム=「不確実性を伴う資産額の期待値」ー「確実性等価」
例えば
- 100%の確率で100万円が貰える宝くじがありました。
- 50%の確率で200万円が貰える宝くじがありました。
この場合、どちらも期待値は同じですが、(1)の方が好まれます。
理由は「リスクプレミアム」です。
50%の確率で200万円が貰えても、リスクがあるので期待値からその分の「リスクプレミアム」が引かれて価値が下がります。
この時、リスクプレミアムが1万円だとすると、期待値100万円から1万円が引かれて、(2)の価値は99万円となります。
※ この場合の確率100%には1万円分の価値がある。
「人は常に期待効用(期待値)を考えて行動する」わけではありません。
リスクプレミアムのおかげで期待値通りに行動しない理由を説明が出来ましたが、そもそも期待値を常に計算しているという前提が少しづつ限界を迎えてきました。
そして、この問題を説明するために登場したのが「プロスペクト理論」です。
プロスペクト理論の登場
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アイコンの写真は、プロスペクト理論を確立して2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマン教授。
簡単な解説
ダニエルカーネマン教授は、期待効用理論だけでは説明がつかない人の行動を再考しました。その結果誕生したのが「プロスペクト理論」です。
プロスペクト理論では心理学などの話を盛り込み、人間っぽさを重視した理論になっています。
プロスペクト理論:6つのポイント
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる。
- 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
- 人は確率を正しく認識していない。
単純に期待値を計算して行動すると考えていた「期待効用理論」と比べると、その差はハッキリと分かるかと思います。
ちなみに
プロスペクト理論では、たくさんの心理現象が登場します。
こうした心理現象を考慮して、人は意思決定をしていると考えたのがプロスペクト理論なのです。
期待効用理論とプロスペクト理論の違い
- 期待効用理論
人が意思決定をするときは、期待値(期待効用)を計算して決断している。
- プロスペクト理論
人が意思決定をするときは、期待値を計算する以外にも次の心理現象に影響を受けながら決断している。
- 人は得をするよりも、損する方に敏感に反応する。
- 人は得られる利益は確実に得たいが、確実な損失は避けたがる。
- 損をしている場面だと、リスクのある行動を取りやすくなる。
- 人の喜びや悲しみは、参照点に依存する(相対評価)。
- 人の喜び・悲しみは長くは続かない(慣れる)。
- 人は確率を正しく認識していない。
重要
おおよそは、人は期待値(期待効用)をざっくりと計算して行動しています。これは「期待効用理論」です。
しかし、必ずそうなるわけではありません。その「必ずそうなるわけではない」という部分を考慮したのがプロスペクト理論です。
違いをしっかりと理解して勉強を進めてくださいね!
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