経済学で登場する「限界収入(MR)」という考え方。
- 限界収入の意味は?
- 競争市場・独占市場では限界収入が違う?
- 限界収入はどうやって求めるの?
- 頻出「独占市場と限界収入の関係」
限界収入(MR)が分からない人向けに、簡単に分かりやすくまとめました (グラフをたくさん使っています)。
限界収入とは?
限界収入(MR)とは?
商品を1つ売ったときに発生する、売上の増加分のこと(生産物を1単位当たり売却した時に得られる収入の増加分)。
英語では「Marginal Revenue」と言うのでMRと略します。Marginalには「1つ(1単位)変化すると、どうなるか?」という意味合いがある。
例えば
- 自動車を2台売ります
1台目は300万円で売れました。限界収入(追加で発生した売上)は300万円です。
2台目は290万円で売れました。限界収入(追加で発生した売上)は290万円です。
「限界収入」自体は、そこまで難しい考え方ではありません
限界収入は、完全市場や独占市場で登場します。その時に、関連する知識がないと「限界収入」が出てきて混乱する事になるので、注意が必要です。
必ず押さえるポイント
- 完全競争市場と独占市場の違いを理解する
- おもに独占市場で重要になる
この2つを正しく理解しないと、限界収入の意味が分からなくなります。
step
1完全競争市場だと
一番身近な「完全競争市場」では、次の前提があります。
- 価格⇒需要量
- 企業はプライステイカー
需要と供給のグラフ
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2独占市場だと
一方で「独占市場」には、競争市場とは違った前提があります。
- 需要量⇒価格
- 企業はプライスメーカー
需要と供給のグラフ
限界収入との関係
- 競争市場の場合
自社で製品を100個生産しても、1000個生産しても、市場価格に影響を与えることは基本的にありません。
1つの企業がどのくらい生産しようと、市場価格は100円のままなので、企業は1個売るごとに100円の収入を得ます。したがって、限界収入は常に一定です。
- 独占市場の場合
自社製品を増産すると市場価格に影響を与えます。
独占企業が生産を増やすと、供給量が増えるため市場価格が下がります。企業はたくさん売るほど、収入の幅が減少するのです。したがって、限界収入は右下がりです。
例えば
トヨタが自動車を100万台増産しても、自動車の価格が下がることはありません
世界中にある車の数を考えれば、1企業がどれだけ頑張って増産しても、市場価格に影響を与えるほどの生産は出来ないのです。
仮に増産した100万台を売れば、おおよそ一定の収入を得られます(限界収入は変わらない)。
トヨタが空飛ぶ車を量産した場合(独占市場)
世界でトヨタだけが販売している「空飛ぶ車」の量産を始めます。空飛ぶ車は、トヨタだけが販売しているので独占市場です。
量産すると、1台2000万円くらいだった空飛ぶ車は、1台500万円になります(ライバル企業がいないため、生産数がもろに市場価格に影響を与えます)。
したがって、限界収入が下がり始めます。2000万円だった限界収入は、500万円程度になります。
まとめると
完全競争市場の場合
- 限界収入(MR)=価格(P)
先ほどの説明の通り、販売価格100円の商品を売れば、限界収入は必ず100円になります。限界収入=(販売)価格
独占市場の場合(グラフ)
独占市場の場合は・・
つまり
独占市場で11個生産すると、需要(曲線)があるところで価格が決まります(価格(P)=99円)。一方で「限界収入(MR)=89円」です。つまり、グラフの通り「限界収入(MR)< 需要曲線(D)」となります。
限界収入曲線(MR)の求め方
ポイント
完全競争市場では「限界収入(MR)=価格(P)」です。
そのため、経済学でよく問題になるのは、独占市場で「限界収入曲線(MR)」をどうやって求めるかです。
まずは簡単な競争市場で考えてみます。
完全競争市場の場合
- 1台100万円の車を20台売るとき(競争市場)
総収入(R)=100万円× 20台 =2000万円
この時の限界収入(MR)を求める
競争市場では「限界収入(MR)=価格(P)」となります。この問題の答えは「限界収入(MR)=100万円」です。
100万円の車を1台売れば収益が100万円増えるので「限界収入(MR)=100万円」
独占市場の場合(限界収入との関係について)
独占市場で限界収入(MR)を求める場合に、必ず登場する話があるので紹介していきます。
独占市場と限界収入の関係
- 独占市場では、限界収入曲線(MR)は、需要曲線の傾きよりも(絶対値で考えて)2倍の傾きになる
計算してみる
- D=需要(生産量)
- P=価格
需要曲線を「D=-aP+b」とします。
※計算を簡単にするために「傾き(a)=1」で考える
「Ⅾ=-aP+b」⇒「D=-P+b」⇒「P=-D+b」
次に
「総収入(TR)= D(需要量) × 価格(P)」です。
先ほどの「P=-D+b」を「価格(P)」に代入します。
総収入(TR)=「D×(-D+b)」 =「(ーDの2乗)+Db」
この時の限界収入を求める
ここで需要(D)で微分します。
必ず覚えておく!
限界収入(MR)は、総収入を生産量で微分したものになる。需要があるだけ生産するので、需要(D)=生産量と考えてください。
ポイント
微分は、値が1つ変化した時に、関数がどんな変化をするのかを計算するもの。
「限界収入(MR)」は、商品を1つ売ったときに発生する、収入の増加分のことなので、総収入(TR)を微分すれば、商品を追加で1個売上げた時に、総収入(TR)がどんな動きをするのかが直ぐに分かる。
微分は、乗数を1つ減らして、元の乗数を定数に掛ける
例えば
- 「Aの3乗」を微分→「3Aの2乗」
- 「Aの2乗」を微分→「2A」
- 「A (の1乗)」を微分→「1」
「A」を微分する場合は「Aの1乗」と考えます。また、微分すると「1Aの0乗」となりますが、0乗=1なので「1×1=1」となります。
先ほどの総収入(TR)を需要(D)で微分する
「(ーDの2乗)+Db」 ⇒「P’=ー2D+b」となります
微分する前の数式→「P=-D+b」
つまり、独占市場では、限界収入曲線(MR)は、需要曲線の傾きよりも(絶対値で考えて)2倍の傾きになる。
限界収入を求める時は「総収入を生産量で微分する」ことを忘れないでおきましょう!
ちなみに
限界収入以外に「限界費用(MC)」や「独占市場での価格の決まり方」など、他の話と絡めてくることが多いので、その辺りも勉強しておきましょう~!