パレート効率性とは?
ある集団内の誰かの効用を犠牲にしなければ、他の誰かの効用を高めることができない状態をパレート効率的(パレート最適)という。※誰かの効用を上げようとすると、誰かの効用を減少させる必要がある状態ともいえる。
また、誰の効用も減少させずに、誰かの効用を高めることができればパレート改善したという。パレート効率性は、パレート改善の余地がない状態。
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余剰分析ではダメ?パレート効率性を使う理由
パレート効率性(パレート最適)は、経済状態の効率性を表す指標として使われます。
注意ポイント
しかし、経済状態の良しあしを考えるだけなら余剰分析を行って総余剰が最大化しているか?死荷重が発生していないか?を考えれば済むように思えます。
余剰分析の問題点①
- 財が1つの場合しか想定していない
余剰分析では、1つの財の市場を分析対象としているため、1つの財の取引に対して総余剰が最大化するのか?を考えています。
ふつう、経済というのは1つの財の取引だけで完結しているわけではありません。したがって、より社会・経済を広く分析しようとすると余剰分析では不十分になります。
余剰分析の問題点②
- 所得効果が考慮されていない
これは消費者余剰の問題点として説明していますが、余剰分析では他の財が安くなったり、高くなったりしても消費者の行動が変わらないことを想定しています。
ふつう、他の商品の価格が変われば消費者の消費行動が変わり、分析している財の消費量などにも影響を与えるはずです。したがって、より消費者の行動を細かく(他の財との関係性も含めて)分析しようと思うなら余剰分析では不十分になります。
この問題点を考慮すると、より経済状態を広く細かく分析するためには余剰以外の指標が必要になります。
そこで登場するのが「パレート効率性(パレート最適)」というわけです。
ポイント
パレート効率性では「他の人の効用水準を考えながら、社会全体の効用最大化を図る指標」であるため、余剰分析よりも”一般的な”経済状況の分析が可能となる。
※ここでいう”一般的な”というのは、他者を含めて、複数の財を考慮しているという意味です。
パレート効率性の問題点
注意ポイント
パレート効率性(パレート最適)では、経済状態の効率性のみを考えているため、公平性は考慮されていない。
例えば
- Aさん:100万円
- Bさん:1万円
Aさん・Bさんがお金を持っています。Bさんの生活が苦しいので、Aさんのお金の一部をBさんへ渡すことを考えます。
このとき、Aさんは「お金が減る=効用が減少する」とした場合、パレート効率性に反します。
確認する
パレート効率性は「誰かの効用を犠牲にしなければ、他の誰かの効用を高めることができない状態」です。
- Aさん:100万円
- Bさん:1万円
Bさんの効用を高めるためには、Aさんのお金を使う(効用を減らす)しか方法がないと考えれば、この状態はパレート効率的です。
ポイント
パレート効率性は、個々人の効用が少なすぎるとか、富(効用)が誰かに偏っているとかは考慮しません。つまり公平性は考えていないわけです。
パレート効率性の現実での事例
パレート効率的な例
タクシーの相乗り
いま、終電を逃して駅からタクシーで帰ろうとする人が2人います。
この2人は、同じ方面に帰宅しようとしています。
そこに1台のタクシーがやってきました。通常、タクシーは1人(1グループ)しか乗せないので、1人はタクシーに乗れません。
ポイント
ここで、2人とも相乗りでもOKという人だった場合、1台のタクシーに相乗りすればパレート効率的となります。
わざわざ2回に分けて運送するのは利用者からすると無駄でしかありません。
さらに詳しく
料金設定次第で、タクシー会社が損をする(効用が減る)のではないか?と考える人がいますが、もし1人当たりの料金が安くなったとしても、料金が安くなることでタクシーを利用する人が増えるため、タクシー会社が損する(効用が減少する)ことはないと言えます。
パレート効率的ではない例
通信量が多い時間帯に、特定の通信会社では速度制限がかかる。
自分が通信量をオーバーしたわけでもないのに、回線が混み合う特定の時間帯に通信速度が遅くなったりします。
通信速度が遅くなるので、ユーザーは不便さを感じるので効用も減少します。ユーザーの効用が減少しているのでパレート効率的とは言えません。
この場合、料金体系をもっと厳密に分けるとか、そもそもの設備投資をもっとする等の根本的な解決が必要です。