違いが分からなくなる「代替効果」と「所得効果」
- 代替効果のグラフ
- 所得効果のグラフ
- 所得効果と財の種類
- 全効果(全部効果)
- 全部効果と財の種類
グラフで分かりやすく理解できるようにまとめました。
代替効果・所得効果とは?
代替効果・所得効果とは
「代替効果」~ある財の価格が変化したとき、消費者が同じ効用水準を保つために、消費する財の組み合わせを調整する現象のこと。
「所得効果」~ある財の価格が変化したとき、消費者の使えるお金が変化するため、財の購入量に影響を与える現象のこと。
代替効果・所得効果の違いをグラフと一緒に見ていきましょう!
代替効果のグラフ
例えば
2つの財があります。
- X財=価格(Px)100円
- Y財=価格(Py)100円
- 効用関数は「U=xy」とする
この時の消費者の最適消費は
ここで
X財が200円に値上げします。この時の消費者の行動(代替効果)を考えてみましょう。
値上げしたので、予算制約線が変化する
グラフで見ると
ポイント
ある財の価格が変化したとき、消費者が同じ効用水準を保つために、消費する財の組み合わせを調整する現象のこと。
同じ効用水準を保つためには、もとの無差別曲線に触れるように、予算制約線を動かす必要があります。
グラフで見ると
X財の価格が上昇したことで、2財の消費の組合わせが調整された。(代替効果)
- X財の消費量が減少(x→’x)
- その分、Y財の消費量が増加(y→’y)
ここに注意
代替効果を図るために「同じ効用水準を維持するための、消費の組合わせの変化」に焦点を当てて図示しています
予算制約線が動いて、まったく新しい予算額が出てきているように見えますが、あくまで代替効果を図るために、便宜上引いた線なので注意してください。
最終的には、所得効果が表れてから実際の最適消費点が決まります。
例では「横軸の財(X財)の価格が上昇した」というパターンを考えましたが、大きく4つのパターンがあります。
大きなパターンは4つ
財の価格変化 | Y財(縦軸)の代替効果 | X財(横軸)の代替効果 |
---|---|---|
縦軸の財(Y財)の価格が上昇 | 需要が減る | 需要が増える |
縦軸の財(Y財)の価格が下落 | 需要が増える | 需要が減る |
横軸の財(X財)の価格が上昇 | 需要が増える | 需要が減る |
横軸の財(X財)の価格が下落 | 需要が減る | 需要が増える |
さらに詳しく
ちなみに、代替効果では「価格が上がった財は必ず需要が減少」「(補完財を除いて)相対的に安くなった方の財の需要は増える」と考えます。
※上級財(正常財)や下級財(劣等財)という財の区分は所得効果で登場します。
一般的な問題では、代替効果を「価格が上(下)がった財は、需要が減る(増える)(=需要が価格と逆方向に動く=自己代替効果は負の動き)」「相対的に安(高)くなった財は需要が増える(減る)(自己代替効果とは逆=交差代替効果は正の動き)」と考えて問題ありません。
※自己代替効果=価格が変動した財の代替効果
※交差代替効果=価格が変動していない方の財の代替効果
所得効果のグラフ
先ほどの例と同じ状況を考えます。
例えば
2つの財があります。
- X財=価格(Px)100円
- Y財=価格(Py)100円
- 効用関数は「U=xy」とする
X財が200円に値上げします。この時の所得効果を考えてみましょう。
まずは
先ほど説明した代替効果を出します。
所得効果は、代替効果を図示した後のグラフに注目です。
ポイント
代替効果を図るために引いた予算線を、正しい位置に戻す。
次に
無差別曲線を移動させます。
その結果、本来あるべき最適消費点が分かります。
ポイント
「本来あるべき最適消費点の位置」と「代替効果を図るために記載した最適消費点」との差が所得効果です。
X財の価格が上昇したことで、消費者の使えるお金(実質的な所得)に影響を与えたため、2財の購入量に変化が表れた。(所得効果)
- X財の消費量が減少(’x→”x)
- Y財の消費量が減少(’y→”y)
ポイント
X財の価格が上昇すれば、Y財の方が相対的に安くなります。そのため、X財の消費量は減少して、Y財の消費量は増加します。(=代替効果)
一方で、価格が上がったので、お財布事情は厳しくなります。そのため、2財とも普通の財なら消費量が減少します。(=所得効果)
財の種類と所得効果
財の価格変化 | 上級財(正常財) | 中級財 | 下級財(劣等財) |
---|---|---|---|
価格上昇(所得減少) | 需要が減る | 需要の変化なし | 需要が増える |
価格下落(所得増加) | 需要が増える | 需要の変化なし | 需要が減る |
価格が上がると、実質的な所得の減少に繋がるので財の消費量が減ります。このような普通の財を上級財(正常財)と言います。逆に、実質的に所得が減ったのに、財の消費量が増える下級財(劣等財)というものがあります。
※実質所得が減ると、安いカップ麺で食費を節約する心理が働くため、カップ麺の需要が増える。
ポイント
「上級財(正常財)と下級財(劣等財)の違い」は、経済学の問題では頻出するので知っておきましょう。
全効果(全部効果)
全効果(全部効果)
代替効果と所得効果を足し合わせたもの。
代替効果・所得効果を別々に見てきましたが、2つをまとめた全部効果を見ていきます。
グラフで確認
ポイント
代替効果と所得効果を順番に確認していけば、自然と分かります。
※見ての通り、代替効果を飛ばして、予算制約線を動かせば全部効果が分かります。しかし、ふつうの問題では、代替効果と所得効果を分けて考えさせるので、代替効果と所得効果を求めてから全部効果を導き出せるようにするのが良いかと思います。
ちなみに
「全部効果」を代替効果と所得効果に分けることをスルツキー分解と言います。
ここでの説明では「代替効果→所得効果→全部効果」と進めてきましたが、全部効果の話から始めて「スルツキー分解をして、代替効果と所得効果を…」というパターンもあるのでスルツキー分解という言葉の意味を知っておくと良いです。
財の種類と全部効果
① 財の価格が上昇した場合(実質所得の減少)
財の種類 | 全部効果 | 代替効果 | 所得効果 |
---|---|---|---|
上級財(正常財) | -(負) | -(負) | -(負) |
中級財 | -(負) | -(負) | 変化なし |
下級財(劣等財) | -(負) | -(負) | +(正) |
ギッフェン財(超劣等財) | +(正) | -(負) | +(正) |
② 財の価格が下落した場合(実質所得の増加)
財の種類 | 全部効果 | 代替効果 | 所得効果 |
---|---|---|---|
上級財(正常財) | +(正) | +(正) | +(正) |
中級財 | +(正) | +(正) | 変化なし |
下級財(劣等財) | +(正) | +(正) | -(負) |
ギッフェン財(超劣等財) | -(負) | +(正) | -(負) |
ポイント
下級財とギッフェン財の部分に注目です。
通常の下級財は「代替効果>所得効果」を想定しています。しかし、ギッフェン財は「代替効果< 所得効果」となります。
この違いにより、全部効果の±(プラス・マイナス)が変わるため、よく問題として取り上げられます。