政府が課税したさいに、どの経済主体がどれくらい税を負担しているのかを考えます。
余剰分析から税負担(税の帰着)の割合を求めて、実際の計算も行います。
税負担(税の帰着)と余剰分析
税負担割合
政府が市場の取引に対して課税したとき、消費者・生産者の税負担(税の帰着)がどの程度の大きさなのかを比率で考えたもの。
知っておく
消費税なら消費者が負担して、会社への法人税なら生産者が負担する。現実ではこのように考えますが、余剰分析では、税金の負担が消費者・生産者それぞれへ転嫁されて、最終的には両者に影響を与えると考えます。
つまり、消費者・生産者のどちらに課税されたか?という観点ではなく、実質的に消費者・生産者がどの程度の税負担を強いられているか?を考える。
例えば
次の需要曲線と供給曲線が与えられているときを考える
市場均衡点Eで価格と生産量が決まっています。
- 均衡価格:P1
- 均衡取引量:Q1
政府が従量税を課した結果、価格と取引量が次のように変化しました。
課税により点E*で価格と生産量が決まります。
- 均衡価格:P*
- 均衡取引量:Q*
緑色の部分が政府余剰(税金収入)となります
次に
この政府余剰(税金収入)を誰が負担しているのか?を見ていきます。
政府余剰の部分に注目します
ポイント
税負担はそれぞれ、均衡価格(P1)を基準にしたとき
- 需要曲線との間に描かれる政府余剰分⇒「消費者負担(点P*・E*・A・P1)」
- 供給曲線との間に描かれる政府余剰分⇒「生産者負担(点P1・A・E**・P**)」
なぜこの部分で税負担を判断するのか簡単な説明を加えます
- 消費者の税負担(点P*・E*・A・P1)
- 生産者の税負担(点P1・A・E**・P**)
上記の四角部分は、市場均衡点(E)で取引されていれば、それぞれ消費者余剰(CS)・生産者余剰(PS)になるはずの部分でした。この余剰部分は政府の課税によって減少したので、この消費者余剰(CS)・生産者余剰(PS)の減少分を税金負担として捉えています。
また、(点E*・点E・点E**)部分は死荷重として消えた部分です。課税により市場が非効率的になったため死荷重が発生した。
次に具体的な計算問題を解いてみます。
計算方法
例えば
- 財Aの需要曲線が「D=-20P+500」
- 財Aの供給曲線が「S=30P-150」
政府が1単位当たり10の従量税を課すとき、消費者と生産者の税負担はどれくらいか?
はじめに市場均衡点を求めるために「D=S」として計算します。
- -20P+500=30P-150
次に均衡点における市場価格を計算します。
- 50P=650
- P=13
「S=30P-150」に市場価格のP=13を代入します。
- S=390-150=240
これで、市場均衡点における価格と供給量(生産量)が分かりました。それぞれの値を求めると次のようになります。
詳しい求め方はこちらの計算方法を確認してください⇒従量税・従価税・定額税と政府余剰(税収)・死荷重の分析
従量税を課税すると
10の従量税を課したので、供給曲線が上方向へシフトしています。
その他の値の詳しい求め方はこちらの計算方法を確認してください⇒従量税・従価税・定額税と政府余剰(税収)・死荷重の分析
ポイント
後は「消費者の税負担分」「生産者の税負担分」を求めるだけ。
- 消費者の税負担=P19・点A・点B・P13
- 生産者の税負担=P13・点B・点C・P9
消費者の税負担は四角形の面積を求めるだけ
- 縦=(19-13)=6
- 横=120
6×120=720
以上より、消費者の税負担=720
生産者の税負担も四角形の面積を求めるだけ
- 縦=(13-9)=4
- 横=120
4×120=480
以上より、生産者の税負担=480
割合は・・
「消費者=720:生産者=480」なので「3:2」