教科書でも記載が少なくて分かりづらい「総収入曲線(TR)」
- 完全競争市場の場合
- 独占市場の場合
2つのケースでは総収入曲線の形状が異なるため、それぞれについて簡単にまとめています。
総収入曲線(TR)とは?
総収入曲線(TR)
企業の総収入(生産量と収入金額の関係)をグラフとして描いた曲線。
- 縦軸=収入額
- 横軸=生産量(Q)
として生産量と収入金額を対応させて描くのが一般的。
総収入曲線は「完全競争市場」と「独占市場」で形状が異なります。
完全競争市場の場合
ポイント
完全競争市場においては、総収入曲線(TR)は右上がりの直線となる。
基本を押さえる
完全競争市場では、生産販売量(Q)に影響なく常に「価格=収入」となる
「生産販売量(Q)×価格(P)」で企業の総収入(TR)が求められる。
例えば
1台300万円の車を販売したときの総収入は…
- 300万円(P)×1台(Q)=300万円(TR)
- 300万円(P)×2台(Q)=600万円(TR)
- 300万円(P)×3台(Q)=900万円(TR)
販売価格(P)300万円に生産販売量(Q)を掛けていけば総収入になります。
完全競争市場における総収入曲線は、右上がりの直線になります。
総費用との関係を知っておく
ポイント
総費用曲線を使えば利潤最大化するポイントが分かります。
総費用曲線についてはこちら
⇒【費用曲線の要点を分かりやすく】総費用・固定・可変・平均可変・限界
まずは思い出す
- 利潤(π)=総収入(TR)-総費用(TC)
グラフ上では、矢印の部分が利潤となる
ポイント
この矢印が一番長くなる時に利潤最大化が実現する。
この矢印が一番長くなるのは、総収入曲線(TR)と総費用曲線(TC)の接線の傾きの大きさが一致する瞬間です。
グラフで見ると‥
つまり「Q1」の生産量で利潤最大化する
知っておく
経済学で「接線の傾き」と出た場合は”限界●●”となる
- 総収入曲線(TR)の接線の傾き⇒限界収入(MR)
- 総費用曲線(TC)の接線の傾き⇒限界費用(MC)
それぞれ「接線の傾きの大きさ=限界収入(MR)・限界費用(MC)の大きさ」となる。計算のときは総収入曲線・総費用曲線をそれぞれ生産量(Q)で微分すれば接線の傾きが求められます。
限界費用(MC)と限界収入(MR)についてはこちら
更に
完全競争市場における利潤最大化の条件「P=MC=MR」
グラフでは「接線の傾きの大きさが同じ」になる瞬間に利潤最大化(矢印が1番長くなる)が実現します。「接線の傾きの大きさが同じ=限界収入(MR)・限界費用(MC)の大きさが同じ」と言えるため「MC=MR」となります。
独占市場の場合
ポイント
独占市場においては、総収入曲線(TR)は凸型(逆U字)の曲線となる。
基本を押さえる
独占市場では、生産販売量(Q)が多くなるほど収入の増加具合が減少するため「価格>収入」となる
重要
⇒独占市場の利潤最大化「限界費用=限界収入」と価格の決まり方
「価格>(限界)収入」が理解出来た人は次です。
独占市場では、生産販売量(Q)を増やし続けると(限界)収入が減少していきます。
ポイント
独占市場では、過剰生産を行うと価格の下落を招き、結果的に総収入が減少する。
例えば
空飛ぶ車を販売します(独占市場を想定)
- 100台・1400万円で販売(総収入=14億円)
- 200台・1000万円で販売(総収入=20億円)
- 300台・600万円で販売(総収入=18億円)
販売価格が下落しているのは独占市場だからです。独占市場では量産するほど市場価格が下落していきます。ただし、企業は市場価格を受け入れずに独占価格で販売を行います。意味が分からなければ確認する⇒独占市場の利潤最大化「限界費用=限界収入」と価格の決まり方
独占市場における総収入曲線は、凸型(逆U字)の曲線になります。
完全競争市場のときと同じく、総費用曲線との関係も押さえましょう。
総費用との関係を知っておく
ポイント
総費用曲線を使えば利潤最大化するポイントが分かります。
総費用曲線についてはこちら
⇒【費用曲線の要点を分かりやすく】総費用・固定・可変・平均可変・限界
まずは思い出す
- 利潤(π)=総収入(TR)-総費用(TC)
グラフ上では、矢印の部分が利潤となる
ポイント
この矢印が一番長くなる時に利潤最大化が実現する。
完全競争市場と同じです
この矢印が一番長くなるのは、総収入曲線(TR)と総費用曲線(TC)の接線の傾きの大きさが一致する瞬間です。
グラフで見ると‥
つまり「Q1」の生産量で利潤最大化する
知っておく①
経済学で「接線の傾き」と出た場合は”限界●●”となる
- 総収入曲線(TR)の接線の傾き⇒限界収入(MR)
- 総費用曲線(TC)の接線の傾き⇒限界費用(MC)
それぞれ「接線の傾きの大きさ=限界収入(MR)・限界費用(MC)の大きさ」となる。計算のときは総収入曲線・総費用曲線をそれぞれ生産量(Q)で微分すれば接線の傾きが求められます。
限界費用(MC)と限界収入(MR)についてはこちら
独占市場における利潤最大化の条件「MC=MR」
グラフでは「接線の傾きの大きさが同じ」になる瞬間に利潤最大化(矢印が1番長くなる)が実現します。「接線の傾きの大きさが同じ=限界収入(MR)・限界費用(MC)の大きさが同じ」と言えるため「MC=MR」となります。
知っておく②
独占市場の特徴である「価格>限界収入」をグラフで確認する
利潤最大化が実現する生産量で、完全競争市場だった場合の総収入曲線は、右上がりの直線になります。このとき、この右上がりの直線の傾きは価格(P)を表している。
例えば、完全競争市場における総収入を表す数式を考えます。価格=100円で生産量をQとするとき「総収入=100Q」となります。この100は、数学的には右上がりの直線の傾きになります。
独占市場で「価格>限界収入」となるのは重要なので意味が分からなければ知っておこう!⇒独占市場の利潤最大化「限界費用=限界収入」と価格の決まり方