経済学やビジネスの世界で登場する「サンクコスト・埋没費用」という言葉。
ビジネスの世界で重要な「サンクコスト・埋没費用」を分かりやすく簡単解説!
「もったいない」「頑張ってきたのに」という感情を捨てることの大切さが分かります。
サンクコスト・埋没費用とは?
サンクコスト・埋没費用
すでに使ってしまったお金・労力のこと。
回収不可能で、もう戻っては来ないコストを指す。
食べ放題の例
- 1人2,000円の食べ放題ディナー
家族4人で食べ放題にやって来ました。
お父さん
元を取れるようにたくさん食べよう!
お母さん
あのお肉、単価が高そうよ。
実はこの会話、全くの無意味です。
サンクコスト(埋没費用)は戻ってこない費用のことを言いました。
食べ放題に来た家族は、既に2,500円×4人=1万円の費用が確定しています。
つまり、このお金はもう戻ってこないのです。
戻ってこない費用に対して、勿体ないもくそもありません。
つまり、食べ放題に来た時点で1万円の出費が確定しているので、何を食べようが食べまいが、損得には関係ないのです。
しかし
家族や恋人とのあいだで「サンクコスト・埋没費用」を出すのは止めた方が良いですが、ビジネスではそうはいきません。
過去に、このサンクコスト(埋没費用)を無視した結果、大失敗した会社があるのですから。
有名な旅客機「コンコルド」の話
(Wikipediaより)
コンコルド
イギリスとフランスが共同開発していた超音速旅客機。1976年に導入が始まった。
この超音速旅客機「コンコルド」は、サンクコスト(埋没費用)の例として必ず登場します。
開発の初期段階
1950年代から高速で運航できる旅客機の開発が盛んに行われていました。
経営陣
250機売れれば、採算が取れる。
そんな考えのもとに、超音速をうたった「コンコルド」の開発がスタートしましたが、いざ開発を進めていると、多くの問題があることが分かってきました。
- メンテナンス費用が想像以上に高い
- 音速の衝撃波(ソニックブーム)がヤバい
- 速すぎて長い滑走路が必要になる
- 燃費が悪すぎて燃料費が高い
- 飛べる距離が短い
ここでプロジェクトの見直し
会社の人
今すぐにプロジェクトを中止して、違約金と賠償金を支払った方が遥かに安いことが分かりましたが・・
しかし
経営陣
数千億円も使って、いまさら止められるか!
こうして、コンコルドは赤字を垂れ流しつつ開発と運航が進んでいきました。
残念ながら・・
墜落事故やアメリカ同時多発テロの煽りを受けた結果、営業終了。
コンコルドを共同開発・運用していた「英・ブリティッシュ・エアウェイズ」「仏・エールフランス航空」は、1兆円以上の損失を出しました。
サンクコスト(埋没費用)の話で、必ずコンコルドが登場する理由が分かるかと思います。
ポイント
既に使ってしまった時間・お金・労力は戻ってきません。
それを「今さら止めることは出来ない」と感情のままに意思決定すると傷口が広がる結果に繋がります。
このように、サンクコスト(埋没費用)に釣られて、適切な意思決定が出来なくなることを、コンコルドの話から「コンコルド効果・コンコルドの誤謬」と呼びます。
※英語では「Concorde fallacy」なので誤謬の方が正しいです。
心理会計(メンタルアカウンティング)との関係
行動経済学では「心理会計(メンタルアカウンティング)」というものがあります。
心理会計
人はお金の獲得方法、周りの環境によって、お金の価値を心の中で変えている。
お金は心の勘定次第で価値が変わる。
(Wikipediaより・リチャード・セイラー教授)
「心理会計」を考えた行動経済学者リチャード・セイラー教授は、面白い事実を見つけました。
芝居のチケット
- 同じチケットを2回も購入する?
女性がお芝居を見るために劇場にやってきました。
前売り券(約1万9,000円)を買っていましたが、失くしていることに気づきました。
劇場では当日券が売っていますが、9割の女性がお芝居を見るのを諦めると回答しました。
状況を変えて似た質問をします。
別の日
当日券を買おうとしている時に、現金1万9,000円が無くなっていることに気づきました。
この場合、当日券を買いますか?
なんと9割の女性がクレジットカードで購入すると答えました。
どちらのケースでも、1万9,000円(の価値のモノ)が無くなっていることに変わりはありません。
このケースでは「チケットを2回購入する」という行為に心理的な抵抗を覚えると言われています。
一方で「現金がなくなっていた場合」は、何にお金を使ったのかが不明瞭です。そのため、余計な感情移入がしづらかったと考えられます。
さらに詳しく
つまり、「何かに対してお金を使った」と心が認識するとサンクコスト(埋没費用)が意識しづらくなります。単純に現金を失ったなどは割り切りやすいですが、自分が能動的にお金を使った場面ではコンコルド効果(誤謬)に陥らないか注意が必要というわけです。
コンコルド・埋没費用の例
「サンクコスト・埋没費用」に関する話を見てきましたが、最後に日常であるサンクコスト(埋没費用)の例を見ていきましょう!
例1
- 恋愛の傷
5年付き合っていた彼・彼女と別れることになりました。
その時に
男性
5年も付き合ったのに・・相手が忘れられない。
女性
結婚まで考えていたのに・・
気持ちを引きづる気持ちは分かります。
しかし、彼・彼女との5年間の時間と思い出は「サンクコスト(埋没費用)」です。
5年間の色々はすべて「サンクコスト・埋没費用」なので、出来れば気持ちを切り替えて、次の恋でも始めましょう。
例2
- 夢が諦められない
人生の大半を夢をかなえるために努力して来ました。
しかし、どうやら自分の実力・才能では夢は叶えられないことが分かり始めます。
夢見る男性
ここまでやってきたのに。。
夢を引きずる気持ちは分かります。
しかし、これまでの努力・労力は「サンクコスト(埋没費用)」です。
日本人は「夢に向かって努力する人」を美化しますが、可能性がないと分かった時点で辞めるべきです。(筆者の個人的な意見)
人生に直接関わることです、叶えることが出来ない夢にしがみつくのは分かります。しかし、叶えられない以上、その夢はサンクコスト・埋没費用です。
別の道を進むべきでしょう。
余談
多くの人は「(職業的に) 何になりたいか?」を夢だと勘違いします。
しかし、本当に大事なのは「(自分が) どうありたいか?・どう生きたいか?」ですよ。
サンクコスト・埋没費用を意識して、良い人生を送りましょう!