「効用(Utilitiy)」は、経済学で登場する考え方で、満足感や幸福度を表す単語です。
特に近代の経済学は「効用」という考え方をベースに話が進みます。
- 効用とは?
- 人は効用を最大化して行動する
- 経済学の効用・選好の定義
- 効用にまつわる経済学の話
効用を理解して、経済学の考え方を知ろう!
効用とは?
効用とは?
経済学で使われる用語で「財・サービスを消費した時に得られる満足度」のこと。
あくまで主観的な評価で、同じものを消費しても人それぞれ得られる効用は違う。
経済学の中で「効用(満足度)」という考え方が広まったのは1870年代です。それまでは、労働価値説という考え方が主流でした。
労働価値説
- モノの価値は、投入された労働量で決まる
時給1,000円の人が1時間かけて作った料理は、1,000円の価値がある。
※厳密な話をすると論点がたくさんあるので簡単に。
労働価値説は、経済学の主流だった「古典派経済学」の価値観です。
労働価値説の始祖「ウィリアム・ペティ」
(Wikipediaより・1623~1687年)
1662年に出版された『租税貢納論』に労働価値説に近い指摘がある。
労働価値説の確立「アダム・スミス」
(Wikipediaより・1723~1790年)
1776年の『国富論』で労働価値説について言及している。
効用価値説
- モノの価値は、満足度で決まる時代へ
料理の価値は、食べた人の満足度で決まる。
効用価値説は、経済学の主流だった「新古典派経済学」の価値観です。
ウィリアム・S・ジェヴォンズ
(Wikipediaより・1835~1882年)
『経済学理論(1871年)』で限界効用という概念を初めて説明した。
カール・メンガー
(Wikipediaより・1840~1921年)
『国民経済学原理(1871年)』で限界効用に関する経済学をまとめた。
レオン・ワルラス
(Wikipediaより・1834~1910年)
すべての経済学者の中で最も偉大と言われる人物。上の2人と同じく効用という考え方で経済学を変革した人物の1人。1874年に出版された『純粋経済学要論』で一般均衡理論がまとめられている。
経済学を変革した「一般均衡理論」で”効用”という考え方を用いた
消費者は自分の「効用 (満足度)」を最大化するために、生産者は「利益(=効用)」を最大化するために、すべての財・サービスの需要と供給が決まる。
その結果、すべての財・サービスの(均衡)価格が決まると主張したのがワルラスです。
さらに詳しく
ガソリンの価格が上がったら車で移動することが減ります。その結果、家族旅行が減ります。旅行に行かない分、家で映画を見るなど動画需要が増えます。こんな風に、すべての市場は関連していますが、そんな中でも全ての市場が均衡するポイント(均衡価格)がある、というのがワルラスの一般均衡理論です。
経済学では1870年代の一連の変革を「限界革命」と呼ばれます。※財を1単位消費した時に得られる効用(満足度)を「限界効用」と言うため、その”限界”から来ている。
こうして「効用」は今現在でも経済学の主流の考え方となっています。
人は効用の最大化を目指す
ポイント
ワルラスの一般均衡理論でも触れましたが、現在の経済学では「人は効用を最大化するように行動する」と考えています。
例えば
経済学では需要と供給の関係を分析することがあります。
その分析も「消費者が自分の満足度(効用)を最大化することを目指す」という前提があってこそ機能します。
昼飯に牛丼を食べると満足度が高まる人が、なぜか不味いラーメン屋へ行くことはありません。そんな人が居ると、需要と供給の関係性がおかしくなります。
効用と選好の関係
合理的な選好
- 完備性(Completeness)を満たす
- 推移性(Transitivity)を満たす
※「選好」はどちらを好んで選ぶか?という意味合いがある。
人は「効用が高まる方を好んで選ぶ」と経済学では考えている。
その時のルールが2つあります。
完備性
- AとBがあれば、必ずA≧B・B≧Aとなる。
推移性
- A>B, C>Aなら C>Bが成り立つ
例えば
ラーメン>蕎麦 >パスタ という選考を持つ人は、ラーメンを食べると1番効用が高まります。なので、特別な事情が無ければ3つの選択肢が出されたらラーメンを選びます。
ちなみに
ミクロ経済学で登場する「効用関数」は完備性・推移性の2つを満たすことを前提にしています。
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